特集記事

2020.10.02

SPECIAL

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大阪のコンサート事情

今江元紀さんFM802 802編成部 副部長

8月に大阪城ホールでのイベント“Osaka Music DAYS!!!”を感染者ゼロで終え、9月3日にはライブハウスの大阪BIGCATでの藤井風とVaundyの2マンライブを、こちらも無事、感染者ゼロで終えた。10月には野外イベントも行うFM802のプロデューサーに、大阪のコンサートシーンの現状を聞いた。

取材・文:長谷川幸信

写真提供:FM802


この大阪の状況をぜひ、自分の目で見ていただいて、
コロナ禍のエンタテインメントの再開を改めて検証してほしい。

8月に在阪プロモーターとイベントを立ち上げ、みんなで音楽を鳴らす日にしようよと

FM802では9月3日に大阪BIGCATで“FM802 HEAVY ROTATION NIGHT”を実施しました。コロナ禍の状況下において開催に踏み切った経緯を教えてください。

大阪では3月中旬から在阪プロモーター8社のみなさんと2週間に一度ぐらいミーティングをやっていく中で、政府からのガイドラインに対してもきちんとした理解をして、守るべきことは守り、無駄に恐れることなく、やれることはやれる範囲でやるというスタンスで、ひとつひとつ実績を積み上げてきました。9月3日のBIGCATの公演に関して、“ライブハウスにお客さんを入れてここから再開するぞ!”みたいに、このタイミングで並々ならぬ思いでやったというよりは、いろいろな取り組みを積み上げる中で、ごく自然の流れで実施できたのが大きいです。
 私自身がFM802の名義公演という形も含めて、ライブハウスにお客さんを入れてご一緒させていただいたのは、7月下旬ぐらいからです。規定に則った動員数+配信という、いわゆる「ハイブリッド公演」と僕らはネタで呼んでいましたけど、そういう形でやり始めていたので。

すでにコロナ禍でのライブハウス公演の経験と実績もあったんですね。

はい、それがあったのも大きいです。特に大阪では、8月の第2週目に“Osaka Music DAYS!!!”という取り組みをしまして、大阪城ホール2デイズでのメインイベントと、大阪府下のライブハウスさんでも同じタイトルでイベントをやりましょうということで“Osaka Music DAYS!!!〜〇〇〜”というクレジットをライブハウスのみなさんにも使っていただきました。みんなで音楽を鳴らす日にしようよ、と。もともと8月から緩和されていくという話もありましたので、夏休みに入るタイミングでイベントをやろうということで、在阪プロモーターのみなさんと立ち上げたんです。そこが気持ちの意味でも大きなターニングポイントになりました。
 そこからの9月3日だったんです。結果的にBIGCATの営業が再開して、お客さんをしっかり入れて開催するライブという最初のキックオフイベントにもなりました。自分の中では様々な経験をしていったことで、メンタル的にもそれほど負荷もなく、9月3日のライブを実施できたと思っています。ひとつひとつの取り組みが繋がり、自分の中でも精神的に支えられました。

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2020年8月8・9日に大阪城ホールで行われた“Osaka Music DAYS!!! THE LIVE in 大阪城ホール”。

“Osaka Music DAYS!!!”に出演したいくつかのバンドから話をうかがう機会もあったんです。観客のみなさんは、マスクして、歓声も上げられない状況のライブではあったものの、うれしそうな表情をしているみんなとライブで直接出会えたことが、ものすごくうれしかったと話してくれました。

そのお話をうかがって、私もうれしいです。“Osaka Music DAYS!!!”は大阪城ホールを使用しましたが、ライブをすることだけが目的ではなく、それまでの過程も手段になったといいますか。そこに至るまで、しっかり対策をして、日々の健康管理をしましょうと、イベントの主催者側とお客さんと一緒に提唱し続けられたというのもあります。イベントを実現させるうえで、お客さんも含めて一緒に努力しましょうとシェアできたのは大きかったと思います。

この状況下でも大規模なライブができるんだってことを実証しましたからね。

そうですね。ライブはできるし、コロナ禍のスタイルでも充実を味わうことができたのも大きかったと思います。
 “Osaka Music DAYS!!!”は、普段はスタンディング会場でモッシュ&ダイブ前提でやっているアーティストたちがかなり出てくれたイベントでもあったので、アーティスト側にどんなふうに受け止められるかも、ひとつの実験みたいな感じでした。そして、お客さんは大声が出せないしマスクしているわけですから、リアクションをどう受け止めながらライブすることができるのか?という…。「これでもライブできるね」と思ってくれた方もいたし、客席ひとつ飛びで指定席のスタイルだったんですが、思っていた以上の満杯感を来阪マネジメントのみなさんに持っていただけたと思います。
 ただ、MCを苦労しているアーティストはいました(笑)。笑いを取ろうとしても、お客さんは声を出せないから間があいてしまって。小ウケしたかなと思って、さらに話をかぶせていくと、拍手がパラパラ…と。そのへんはちょっと苦しい思いをしたかと思います(笑)。でも、こうした大きな会場でイベントができたことも、9月3日にもつながっています。
 今、大阪ではコンサートプロモーター8社のみなさんと常にいろんな事例や情報を共有させていただいています。また、FM802主催事業だけでいうと、8月にも大阪Music Club JANUSというライブハウスで、“FM802 弾き語り部”を「ハイブリッド公演」でやらせていただきました。FM802の主催や名義公演を合わせても、7〜8月で5公演をライブハウスでやっています。そういう蓄積も大きいかなと思います。

それだけの積み重ねがあると、非常に心強いですね。

妙な特別感を持たずに、普通にできることとして捉えて発信をしていくことが必要かなと思います。弊社の年末イベントに関しても、実施の可否はいつぐらいに判断されますかというお問い合わせもよくいただくんですが、そもそも「実施可否の判断」というワードがあること自体、おかしいと思うぐらいの気持ちでやらないとなと思っています。行政機関からは「ライブをやるな」という話は一切出ていないわけですから。
 そもそもの感染ルートについても当初から確実に証明されたわけではないと認識しています。気をつけなければいけないことを理解したうえで、ガイドラインを遵守しながら、やれることをやるというのを徹底するしかないと思っています。

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“Osaka Music DAYS!!!”では、徹底した感染対策が施され( https://johall.osakamusicdays.net/assets/pdf/guideline.pdf?ver200805)、開催から2週間後を、感染報告ゼロで迎えられた。

9月3日のBIGCAT公演は最大動員数の約4分の1、椅子も特別に借りて実施

“FM802 HEAVY ROTATION NIGHT”の開催を各出演アーティストに伝えたとき、マネジメント側はどういった反応でした?

もともと8月の別の時期にやろうとしていて、それは早いかもという話が5〜6月ぐらいに出たんです。そこで9月に開催をスライドした形なので、そこでなにか大きな反応があったということはないですね。今は各社様、会社によっての方針などもある時期なので、実施できたことに感謝しております。
 開催に向けてガイドラインをお伝えしたり、当日のスタッフ人数をできる限り絞りたいです、ゲストはなしにさせてください、という話はさせていただきました。それ以上の過度な話はそんなにしなかったです。

ガイドラインの内容にも関わるんですが、開催にあたって、事前にとった措置について教えてください。

開催場所がBIGCATということでいうと、6月7日に無観客ライブを大阪府と一緒に行った実績のある会場だったんです。KANA-BOON、矢井田瞳さん、BURNOUT SYNDROMESに出ていただきました(“大阪府文化芸術活動(無観客ライブ配信)支援事業 PR LIVE -ACCESS CODE OSAKA!-”)。6月7日の時点では、楽屋をどれだけ分けるとか、スタッフをロビーに溜めないようにしたりとか、密を避ける対策を、ホテルと会場との移動行程を含め、気を使いながらやりました。
 9月3日に関しては、移動に関する規制がない状態だったので、移動行程の特別なお願いをすることはありませんでした。ガイドラインに関しては、BIGCATさんが作られているものを情報としてお渡ししました( http://bigcat-live.com/saikai)。それと、お手伝いで入っていただく専門学校の生徒さんたちがいたので、事前に体調管理や問診を受けてもらいました。FM802のほうでも、スタッフやDJ含めて、観覧する人数を事前に確認して、観覧場所も事前にシビアに決めました。ライブハウスは観覧場所の面積や人数が限られていて、何回も図面上に人数など書き込んで、ライブハウスの方と検証しました。

9月3日は、会場のキャパに対して何割ぐらいの動員にしたんですか?

BIGCATの最大動員数の4分の1ぐらいでした。椅子も特別に借りていただき、ディスタンスを常に保つような配置にもしました。

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2020年9月3日に大阪BIGCATで行われた藤井風とVaundyの2マンライブ“FM802 HEAVY ROTATION NIGHT”。

できるだけポジティブに、ネガティブな言葉で窮屈にしていかないような努力も

当日、お客さんに入場してもらう際、どういう措置をしましたか?

開場時間も早めに設定して、入場時には検温を全員させていただいて、必要な現場では大阪府のコロナ追跡システム登録確認といった作業もしています。あと、消毒や手洗いの推奨ですね。それからライブの転換時間も、なるべく自分の席でお待ちいただくようにしました。
 ただ、MCでは規制的な発言はあまりしていないかもしれないです。“Osaka Music DAYS!!!”でもそうでしたけど、歓声を出さないようにという注意事項アナウンスはしていなくて、今日は拍手や手拍子とジェスチャーで応援しましょうという形にしたり。できるだけポジティブに、ネガティブな言葉で窮屈にしていかないような努力もしました。

ライブが始まってからは、スタッフのみなさんはどういった点に気を使っていましたか?

ライブ中は、会場後方の出入口付近がどうしても密になりがちになるので、人の流れを作るようにしたぐらいです。あとは転換のとき、ドアの開け閉めを多めにして、換気のお手伝いもさせていただきました。それから、みなさんがよく触るような場所の消毒をまめに行うようにしました。

転換という話も出ましたが、ライブの持ち時間は何分以内といったガイドラインもあるんですか?

いや、今のところそういう要請は来ていないですね。でも長ければ長いほどリスクが高いとは思いますし、食事を伴ったり、ロビーでの休憩時間なども、感染リスクは増えると思いますので、できるだけ減らしながらということです。

ライブハウスや音楽のせいにならないような、ちゃんとした構えと対策が必要

お客さんにとってライブ会場でのグッズも楽しみのひとつですが、当日はそれらの販売もしましたか?

はい。開場前の先行販売と、開場後の販売もしました。ビニールシートで仕切って、消毒しながらであれば、問題があることでもないですし。並ぶ方にもできるだけ距離を取っていただきました。

主催側として、ライブに参加したお客さんの表情や反応も気になったと思います。どう感じましたか?

コロナ前のようにちゃんと楽しんでもらえることが一番大切なので、様々なリアクションは確認しました。不安な思いをして帰られた方がいらっしゃらなかったか、やっぱり気にしましたが、みなさま喜んでおられたと思っています。
 あと、たとえばコロナ感染者がもし出たとき、どれだけ最小限に食い止められる対策ができていたか、当たり前の対策をしっかりやっていたのか、まずそれをしなければ、また「ライブハウスのせい」みたいな言い方をされてしまうこともありますから。ライブに行って、最後の最後に自宅のマンションのエレベーターボタンで感染したとしても、結局、ライブのせいにされてしまうこともありますので。ライブハウスや音楽のせいにならないような、ちゃんとした構えと対策が必要だなと考えています。

9月3日のライブは、感染者もなく無事に成功を収めました。主催側としての今の正直な気持ちは?

終わったものは「終わった!」と言えるんですけど、その次がもう始まってますので。手放しで「終わった〜!」と喜べないです。
 それに、様々な医療従事者の方や、会社やご家族の状態や状況によって、まだ踏み出せていない方もいらっしゃると思います。たとえば身内でコロナに感染して、すごく大変な思いをされたのを間近で見て、非常にナーバスになっている方も多いと思います。そういう方たちとの歩幅は、そんなにすぐには揃わないと思いますし。そういう方たちを置いていくのではなく、とはいえ歩ける人間はとりあえず歩かないと、とは思いますし。
 現状のガイドラインでは「ライブは禁止」という話は出ていないので、それをちゃんと理解して、きちっと向き合い、きちっとビビるというようなことをやっていきたいですね。これだけ対策していても、感染者が出てしまったときのことを考えると怖いですし、どれだけ気をつけても起こってしまう可能性はあると思いますので。最小限に食い止められるようなスタンバイと、起こらない対策をして安心安全で楽しめる環境作りをしなければいけないと思っています。

大阪では一歩一歩、いろんなことが進んできているので、
実態に即した規制緩和をお願いしたい

現在、様々なアーティストが無観客配信ライブや動員数を規制したライブなどを始めています。それに対して今江さんの考えを聞かせてください。

各段階ごとにしっかりした細かい判断を、まず僕たち自身がして、それをガイドラインを出す側の人たちにちゃんとお伝えしていくことも大事だと思っています。
 大阪ではアリーナ会場公演がコロナ禍でも始まって実績を残してきていますし、野外大型イベントも実施されていますし、新たに10月にトライしようとしているイベントもあります。一歩一歩、いろんなことが進んできていますので、ガイドラインを出す国や行政側も、実態に即した規制緩和をお願いしたいと強く思いますね。

話に出た10月のイベントというのが、10月10〜11日に大阪万博記念公園で行われる“大阪文化芸術フェスpresents OSAKA GENKi PARK”です。音楽好きはもちろん、野外で楽しむための様々なイベントです。この開催を決めた経緯について教えてください。

大阪府さんが主催で、音楽フェスというよりは万博記念公園を丸ごと使って、大阪のいろいろな文化芸術やゆかりのあるものを楽しんでもらおうというものです。大道芸人さんのパフォーマンスなど、今、発表の場を失っている人たちに、発表の場を作ろうみたいな思いがあって始まったものなんです。
 音楽事業としては、今年はいろいろなイベントやライブができなくなったアーティストが多いので、野外できちんとした規制を守りながら行えば、再び有観客ライブができると思って、ご一緒させていただくことにしました。

そこに向けての新たな計画など、関係者としての考えもありますか?

今回、チケットと一緒にディスタンスが取れるレジャーシートをプレゼントさせていただく計画です。100×150cmのサイズに広がるレジャーシートです。折り畳んで持ち運べる仕様になっています。そうした試みもそうですし、出演者管理でも新たなアプリを導入します。前方エリアの入れ替えのための事前申込を行ったり、感染対策としてWEB問診も統括できるアプリをリリースしますので、それを使いながら運営をしっかりしたいと考えています。

一歩ずつ進まないと、すべてが停滞してしまうことだってありますからね。

そうですね。大阪は在阪プロモーター8社さんが連携を取り始めてくれたことが大きくて、そこにメディアである我々と各ライブハウスが合わさって、大阪府とライブハウスとメディアとイベンターという会議や打ち合わせもこれまであったんです。そういう連携を取りながら、みんなで動けたというのも大きいです。
 今では実際にお客さんが戻ってきているところもありますし、ライブ発表からチケット発売と開催まで、当初より短時間で成立するようにもなってきています。やはり音楽やライブは求められているので、そこに対してしっかりと運営していこうと思っています。すごくビビりながら、でもやれることは全部やろうと思っています。
 こういう機会なのでお伝えしたいんですが、多くの方にこの大阪の状況をぜひ、自分の目で見ていただいて、これはできるんだね、大丈夫だねって確認していただきたいですね。大きな括りで規制する状況が続いたので仕方ないとは思うんですけど、こういうやり方だったらできるんだって、コロナ禍のエンタテインメントの再開を、改めてひとつずつ検証していただきたい。実態を見て、いろんなものをご判断いただく機会が増えると、エンタメ業界がもっと早く再開するんじゃないかと思います。

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10月10〜11日には大阪万博記念公園で“大阪文化芸術フェス presents OSAKA GENKi PARK”も開催される。ディスタンスが取れるレジャーシートもプレゼントされる予定。

今江元紀さん
PROFILE

ぴあ株式会社 ぴあ編集部勤務を経て、2010年にFM802に入社。802編成部に所属し、番組『ROCK KIDS 802』とイベントのプロデューサー業務を行っている。イベントは、“FM802 RADIO CRAZY”など多数手掛けている。


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