空手がなかったら、10年以上も音楽活動を
続けてこられなかったと思いますね。
流派のトップに音楽をやりたいと話したら、やるなら本気でやれと
ご実家が空手道場なんですよね。
とある流派の宗家です。なので、物心がついたときには道場にいましたね。親によると空手は3歳から始めたそうです。
本気になったのはいつから?
人生と同じで区切りがないので、その感覚はないんですけど、親の期待を感じ始めたのは中学生の頃です。進学する高校が親に決められて、「ここしかダメだ。ここの先生から(空手を)教われ」って。
そして、世界チャンピオンに。
チャンピオンといってもただの結果で、それを人生に活かせなければ意味がない。空手道…道という字がつくものは全部哲学だと思っているんです。体を動かすというのは表向きのもので、実は深いところに思想がある。宗教と近いものがあると思います。
当時、音楽はどういうときに聴いていましたか?
試合前や、気持ちを高めたり鎮めたりするときに、R&Bとかヒップホップを聴いてました。そのときの気分によって、型をやる前はバラード、組み手の前はアップテンポなものを。モチベーションを高めるためというよりゲン担ぎみたいなもので、それを聴くことでより落ち着いた気分になれるというか、自分自身に対するマインドコントロールですね。「自分はこうなれるんだ!」って思い込む。
そこまで空手に打ち込んでから音楽の道に進むというのは、かなり勇気のいることだったでしょうね。
そうですね。ぶん殴られるのを覚悟しながら、流派のトップに「音楽をやりたい」って話したら、「俺もこの流派を開くときにいろんな人に迷惑をかけて好き勝手やったから、お前の気持ちはわかる。やるなら本気でやれ」って言ってくれて。その方は4年前に亡くなったんですけど、一度ライブを観に来てくれたことがあって、そのときは一言も話せずに、ただ泣きながらその方の手を握ってました。すごく器の大きな方です。
胸を打つ話です。
その方が末期癌になって、ライブも観に来られないような状態になってしまった頃に、福岡の海の中道で1万5千人を前にワンマンライブをやったんです。そこで「愛を浴びて、僕がいる」という曲を歌ったとき、いつもはじいちゃんばあちゃんの顔が浮かぶのに、その日だけはその方の顔が浮かんだんです。それでライブ後、控室に来た母親の顔を見た瞬間、彼が亡くなったことがわかって、泣きながら「なんで言ってくれなかったんだ!」って言ったら、「言ったら歌に影響が出るでしょ」って。でも、病室にいたら聴けなかった僕らの歌が、彼は“会場の上”で聴けたんだと思います。
空手は目で型をおぼえるのでダンスも見たらおぼえられる
空手を学んだことが音楽活動にも影響を与えていると思うのですが。
精神面では大きいですね。僕は本当に怒らないんですけど、それも空手のおかげだと思います。あと、空手とは関係なく、親に敷かれたレールの上を歩いてきたからこそ言えることもあるし、そこからはみ出して、違う道を選んだ結果が今の僕を支えているんだと思います。ダンスをするうえでも活きてますね。空手の型は左右対称に体を使うので、それがダンスでもうまく機能してると思うし、空手は目で型をおぼえるので、たいていのダンスも見たらおぼえられます。
アーティストにすすめたい運動は?
僕はやってないですけど(笑)、3キロから10キロぐらい走るのがいいと思います。走りながら歌えたらもっといいですね。空手は強くなるためじゃなく、生きるヒントを見つけたい人がやったらいいと思います。空手がなかったら、自分はもっとちゃらんぽらんだったと思うし、10年以上も音楽活動を続けてこられなかったと思いますね。
PROFILE
写真右。CLIEVYとともに、2人組シンガーソングライターユニット、C&Kで活動。2010年にメジャーデビュー。6thアルバム『TEN』、シングル「嗚呼、麗しき人生」が発売中。2月6日(木)よりバンドスタイルによる東名阪2DAYSツアーがスタート。また、4月10日(金)より25ヶ所33公演の全国ツアーも決定。