
Lesson 2 MV監督インタビュー
バンドマンがなぜMV監督を?
寿司くんさん
岡崎体育「MUSIC VIDEO」のMV監督、寿司くんは、ヤバイTシャツ屋さんのメンバー。 なぜMVを撮るようになったのか、どんなこだわりを持って撮っているのかなどをお聞きした。
僕の場合は、バンドのアートワークやMVを
自分でコントロールしたいので。
大学のサークルの友人のバンドを撮ったのが最初の作品でした
こやまさんがMVを制作するようになったきっかけは?
大阪芸術大学の映像学科に通っていました。最初の頃は何をしていいかわからなくて、ダラダラ学生生活を送ってまして。1年生の終わりぐらいに“このままではヤバい、何者にもなれずに終わってしまう!”って不安になって。ジャンルこだわらず『寿司くん』というアニメを作ってみたり、自主制作のコント映画やドキュメンタリーを撮りました。それで、MVも撮るようになりました。
音楽は、10-FEETやマキシマム ザ ホルモンからの影響が大きかったそうですね。
そうですね。大学の音楽サークルに入ってたんですけど、友人のバンドを撮ったのが最初の作品でした。そこから口コミで大阪のインディーズシーンへ広がって。
MVってアーティストを知ってもらうためのツールとして重要な時代となっていますよね?
バンドとの共同作業であり作品ですよね。なので、映像にバンドの良さをなくしてしまうほど僕の自我が出すぎないように注意していました。
みるきーうぇいの「カセットテープとカッターナイフ」というMVが、バンドや楽曲の世界観を見事に表現されていて素晴らしかったです。
あれは3本目です。よくできてますよね。映画『カメラを止めるな!』みたいな、長まわしでハプニング起きつつの作品でした。
岡崎体育の「家族構成」を知ったのは、みるきーうぇいがきっかけでした。YouTubeの横でレコメンドされたんです。映像はハブになるんですよね。
ちょうど自分たちでシーンを作っていかなければと思ってイベントをやったりしていた頃です。ヤバTもですけど、何組かメジャーデビューも決まったりして。
そんななか、ターニングポイントとして岡崎体育「家族構成」の存在は大きかったんじゃないですか? まだ予算など全然ない頃ですよね? 年齢差が微妙なキャスティングは違和感あったりするんですけど。
ははは。なんなら、あれ僕がお金出してますからね。岡崎さんが「お金ない!」っていうから(笑)。もともと『寿司くん』のアニメを観てくれて、SNSで連絡してくれたんですよ。あとから知ったんですけど、同じ中学の先輩でもあって。むっちゃ面白い人ですよね。曲も素晴らしいですから。
音楽作品をヴィジュアル化した「家族構成」は手応えあったんじゃないですか?
あの頃はまだ岡崎さん、お客さん5人とかそんな時代でした。でも手応えありましたね。「MUSIC VIDEO」もそうですけど、歌詞が脚本になってるんですよ。

(C)SME Records
「MUSIC VIDEO」はいくらでも予算をかけられた
アーティストの意図を表現するために気をつけていることは?
「MUSIC VIDEO」の頃は、当時まだ忙しくなかったし時間だけはあるので4日かけて、僕がカメラをまわして岡崎さんが車を運転して関西中を飛びまわって作りました。今だったら、あの自主制作感はなかなか出ないでしょうね。撮影して、移動中に映像を取り込んで即編集してましたから。
「MUSIC VIDEO」が予算7万円だったというのはある種伝説と化していますね。
6万円くらいかな? あの作品は、やると思ったらいくらでも予算をかけられる内容だったんです。でも、キリがないから抑えようとした結果があれですね。
ヤバイTシャツ屋さんではメンバーとして映像も作られていますが、映像スキルってバンドマンは身につけていったほうがいいですか?
僕の場合は、バンドのアートワークやMVを自分でコントロールしたいので、アウトプットが統一できることはメリットでした。でも、ほかの方に頼んで化学反応が起きていい作品が生まれることもありますから、アーティストそれぞれですよね。
ヤバイTシャツ屋さんがすごいのは、誤解を恐れずに言えばMVではネタ的に“手を抜いて”、アイデア重視で攻めるというスキルを発揮されていたりして。
ほかのアーティストの作品はちゃんとしないといけないじゃないですか? 自分のバンドなんで、ウケなくとも自分の責任やしなって、わりきってチャレンジしてます。
新規ファンを獲得するニュース的な要素にもなりますよね? それは狙い通り?
そういうことにしておいてください(笑)。
PROFILE
ヤバイTシャツ屋さんのこやまたくや(g、vo)の映像作家としての活動名。岡崎体育「MUSIC VIDEO」で、第20回文化庁メディア芸術祭・エンターテインメント部門新人賞を受賞。
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