解説
楽曲の作詞者や作曲者が持つ著作権のひとつに「演奏権」という権利があり、著作権法で次のように規定されています。
著作権法第22条
「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」
このように、著作権者は著作物を無断で演奏されない権利を専有しています。著作権法上の「演奏」には、楽器を使用する演奏のほか、CDやiPod等に録音した音楽を再生して聞かせることも含まれていますので、公衆(「不特定の人」または「特定多数の人」)に直接聞かせる目的でiPodの音楽を再生する場合は、著作権者の許諾を得ることが必要になります。
ただし、すでに公表されている著作物については、営利を目的とせず(非営利)、かつ聴衆または観衆から料金を受け取らない場合(無料)で、出演者等に報酬が支払われないとき(無報酬)には、著作権者の許諾を得ずに演奏の方法で利用することができます。たとえば、ホームパーティでBGMとしてCDを再生する場合や、学校行事で生徒が歌ったりする場合がこれに該当します。
Aくんのカフェでは、お客さんがBGMを聴くための料金を直接支払っていませんが、BGMを流すことでカフェの雰囲気を良くして、それが売り上げにつながっているとも言えますので、Aくんのケースは営利目的での著作物の演奏利用に該当し、事前に著作権者の許諾を得ることが必要です。
楽曲の演奏権については、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理していることが多いので、店舗でBGMを流す場合にはJASRACへ問い合わせをしてみましょう。JASRACの使用料規定(包括契約)では、店舗面積によって著作権使用料が異なり、500m2までの店舗では年額6,000円で好きなだけBGMを流すことができます。
参考:JASRACのHP内「各種施設でのBGM」
なお、店舗用BGMとして、日本BGM協会に加盟する株式会社USEN等のBGM用音源提供事業者のサービスを利用する方法もあります。
店舗用BGMとしてiPodの音楽を利用することに関しては、iTunes Storeの利用規約では、サービスとコンテンツの利用範囲は「個人的、非商用に限る」としていますので、この範囲を超える利用は契約違反となります。
また、店舗用BGMに利用する目的でCDやPC内の音楽を複製することは、著作権法上の私的利用の範囲を超えていますので、権利者の許可なく音源ファイルを提供することは違法行為に該当し、また、提供を依頼した側も著作権法違反の幇助行為に該当することがあります。