解説
音楽作品の作詞者、作曲者(著作者)が持つ著作権のひとつに「演奏権」があります。この「演奏権」は、著作権法第22条で次のように規定されています。
「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する。」
このように、著作権者は、著作物を無断で演奏されない権利を持っていますので、ライブハウスで演奏するためには、事前に楽曲の著作権者の許諾を得ることが必要です。
ただし、営利を目的とせず(非営利)、聴衆・観衆から料金を受け取らない場合(無料)で、出演者等に報酬が支払われないとき(無報酬)には、このかぎりではありません(著作権法第38条第1項)。
Aくんのケースでは、チケットを一般販売し、アーティストにもギャラが支払われますので、事前に著作権者の許諾が必要になります。
ライブハウスでの演奏に関する著作権は、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権者からの委託を受けて管理していることが多く、Aくんの担当アーティストが演奏する楽曲もJASRACが管理を行っていますので、JASRACに対して事前に楽曲の利用申請手続きを行うことが必要です。
原則として、ライブの主催者がこの利用申請手続きを行い、著作権使用料の支払い義務を負いますので、誰が主催者で(ライブハウス、イベンター、アーティストマネージメント等)、楽曲の利用申請手続きが正しく行われているかどうかを事前に確認しておくことも、Aくんの大事な仕事のひとつです。なお、ライブハウスが、楽曲の演奏利用についてJASRACと包括契約を締結し、利用楽曲の報告と使用料の支払いを行っているケースもありますので、この点も確認してみましょう。
また、利用申請手続きでポイントとなるのが、演奏する楽曲の明細書の提出です。JASRACでは、この明細書を参考にして管理楽曲を特定し、使用料の分配を行っています。
ライブの演出等の運営上の都合を考えてAくんが準備をしたセットリストは、JASRACへ提出する楽曲明細書を作成する際の基礎情報となり、著作権者への使用料分配のために大きな役割を果たしていますので、セットリストには、楽曲名、著作者名、演奏者名、演奏時間等の詳細の内容を記載するように心掛けましょう。