「音楽著作権」バイブル

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第18回 印税計算の知識を見につける

 アーティストが活動することによって、その所属プロダクションに どのような対価・報酬がどの程度もたらされるのか、また、アーティストには どれくらい分配されるのかを把握することは、マネージャーにとってとても重要なことです。 イベントやCM等への出演の対価は、一定額を一括で受け取ることが普通なので、 契約の段階で正確に収入を把握することができますが、レコーディングでの実演や 作詞・作曲などを行った場合は、利用の対価を印税形式で受け取ることになるので、 金額をあらかじめ正確に把握することはできません。 しかし、販売見込みに応じて収入を予測することは可能です。 そこで今回は、印税形式で受け取る対価・報酬の計算方法を解説します。

text:秀間修一(リアルライツ)

原盤印税とアーティスト印税の計算方法

 アーティスト「A」と所属プロダクション「B社」との間でレコーディングに関する専属契約を締結し、これに基づきB社がAの実演を収録して制作した原盤(本件原盤)をレコード会社「C社」に独占的に提供するというビジネススキームがあったとして、B社とC社の間の原盤提供契約において定められた原盤印税に関する条件が以下のようなものであったとします。なお、本稿に出てくる契約条件は業界標準を示すものではありません。

第〇〇条(原盤印税)
C社はB社に対し、本件原盤の提供の対価として、以下に定める原盤印税(消費税抜)を支払います。
1)本件原盤を複製して録音物を発売した場合;
(消費税抜小売価格−容器代)×18%÷総収録楽曲数×本件原盤の楽曲数×計算対象数量
「容器代」は消費税抜小売価格の10%、「計算対象数量」は出荷数量の80%とします。
2)本件原盤の音源をネット配信してダウンロード形式で販売した場合;
消費税抜販売価格×50%×販売数量
(以下省略)

 また、AとB社との間の専属契約において定められたアーティスト印税に関する条件は以下のようなものであったとします。

第〇〇条(アーティスト印税)
B社はAに対し、レコーディングにおけるAの実演の対価として、以下に定めるアーティスト印税(消費税抜)を支払います。
1)本件原盤を複製して録音物を発売した場合;
(消費税抜小売価格−容器代)×2%÷総収録楽曲数×本件原盤の楽曲数×計算対象数量
「容器代」と「計算対象数量」の算出方法は、B社とレコード会社との契約に準じるものとします。
2)本件原盤の音源をネット配信してダウンロード形式で販売した場合;
B社が配信事業者より受領した消費税抜原盤印税の20%
(以下省略)

 このような条件のもとにC社が本件原盤を複製して次のようなCDを発売したとします。
 〇消費税抜小売価格…3,000円
 〇総収録楽曲数…10曲
 〇本件原盤の楽曲数…10曲

 このCDの出荷数量を100,000枚とした場合、B社がC社から受け取る原盤印税と、これを受けてB社がAに支払うアーティスト印税を計算してみます(いずれも消費税抜)。
〇原盤印税の計算
{3,000円−(3,000円×10%)}×18%÷10×10×100,000枚×80%=(3,000−300)×0.18×80,000 =2,700×0.18×80,000=486×80,000=38,880,000円
 486円がこのCD1枚あたりの原盤印税、つまり「印税単価」になります。印税単価に計算対象数量を乗じた額が原盤印税です。

 次に、アーティスト印税を計算します。契約では、容器代と計算対象数量の算出方法はB社とC社との契約に準じることになっているので、原盤印税の算出方法と同様の計算式が成り立ちます。原盤印税の印税率18%を2%に置き換えるだけです。
〇アーティスト印税の計算
2,700×0.02×80,000=54×80,000=4,320,000円
 印税単価は54円です。

 また、C社が本件原盤と本件原盤以外の原盤を使用して次のようなCDを発売したとします。
 〇消費税抜小売価格…2,500円
 〇総収録楽曲数…10曲
 〇本件原盤の楽曲数…3曲

 このCDが100,000枚出荷された場合の原盤印税とアーティスト印税は次のようになります。
〇原盤印税
{2,500−(2,500×0.1)}×0.18÷10×3×100,000×0.8=121.5×80,000=9,720,000円
 印税単価は121.5円になります。
〇アーティスト印税
{2,500−(2,500×0.1)}×0.02÷10×3×100,000×0.8=13.5×80,000=1,080,000円
 印税単価は13.5円になります。

1曲単位でダウンロード販売した場合
 次に、この原盤の音を1曲単位でネット配信によりダウンロード販売した場合の原盤印税とアーティスト印税を計算します。1曲あたりの消費税抜販売価格が200円で、100,000回有料ダウンロード(販売)された曲の印税は次の通りです。
〇原盤印税は、販売価格の50%に販売数量を乗じた額なので、次のようになります。
200×0.5×100,000=100×100,000=10,000,000円
 印税単価は100円です。
〇アーティスト印税は、B社が受領した原盤印税の20%なので、次のようになります。
10,000,000×0.2=2,000,000円

著作権使用料(著作権印税)の計算方法

 次に著作権使用料の計算方法を説明します。以下のようなCDが発売されたとします。
 〇消費税抜販売価格:3,000円
 〇収録曲数と収録時間(再生時間)
  (1)1曲目…3分30秒
  (2)2曲目…4分10秒
  (3)3曲目…4分30秒
  (4)4曲目…5分10秒
  (5)5曲目…3分50秒
  (6)6曲目…4分00秒
  (7)7曲目…5分20秒
  (8)8曲目…4分40秒
  (9)9曲目…3分50秒
  (10)10曲目…4分25秒

 このCDに収録されている楽曲がすべてJASRACに管理委託されている場合、1枚あたりの消費税抜著作権使用料は、3,000円の6%で180円になります。
 曲ごとの使用料単価は、収録時間が5分以上10分未満の曲は2曲扱い、10分以上15分未満の曲は3曲扱いというように5分単位で増えていくので、曲ごとの収録時間を勘案する必要があります、このCDの場合は、5分以上の曲が2曲(4曲目と7曲目)あるので、全体で12曲扱いとなり、そのうち4曲目と7曲目が2曲ぶんの単価になります。
 したがって、このCDの1曲ごとの使用料単価は以下のようになります。
・5分未満の8曲については、180円÷12=15円
・5分以上10分未満の2曲(4曲目と7曲目)については、180円÷12×2=30円

 次に計算対象数量の算出方法ですが、これには次のような規定があります。
(1)利用者(レコード会社等)がJASRACに対する利用申請および利用報告をJASRACが指定する様式に基づいて期日までに電子的方式により行った場合は、出荷数量の5%相当額が減額される。
(2)利用者がJASRACとオーディオ録音に関する包括契約(JASRAC管理楽曲の利用を包括的に許諾する契約)を締結した場合は、出荷数量の20%相当額が減額される。
(3)上記の2項目とも満たす場合は、出荷数量の25%相当額が減額される。
(出荷数量の報告は、3ヶ月ごとに行うことになっている。なお、JASRACと包括契約を締結していない利用者の場合は、出荷数量ではなく製造数量が適用され、追加製造を行うたびに利用報告を行う)

 このCDを発売しているレコード会社が上記の?に該当する場合、出荷数量が100,000枚とすると、レコード会社がJASRACに支払う消費税抜著作権使用料は、180円×100,000枚×0.75=13,500,000円となります。

著作権使用料(著作権印税)の分配方法

 次に、この著作権使用料がどのように音楽出版社や著作者などの権利者に分配されるのかを説明します。
 このCDに収録されている楽曲のうち1曲目から5曲目について、B社が著作者と著作権譲渡契約を締結し、その著作権を音楽出版社としてJASRACに管理委託したとすると、B社にはいくら著作権使用料が入ってくるのでしょうか。
 JASRACは、著作権使用料を権利者に分配する際に「管理手数料」を控除します。管理手数料収入がJASRACの運営資金になるのです。CDのような「オーディオ録音」のジャンルの管理手数料は使用料の6%です。つまり、利用者から徴収した金額の94%を権利者に分配することになります。
 したがって、B社に支払われる消費税抜の使用料は次のようになります。
・1曲目〜3曲目と5曲目…1曲につき15×100,000×0.75×0.94=1,057,500円
・4曲目…30×100,000×0.75×0.94=2,115,000円
・合計…6,345,000円

 今度は、このCDに収録されている楽曲のうちアーティストAが創作したものに関して、B社からAに分配される印税を計算します。
 Aが創作した楽曲に関するAとB社との著作権譲渡契約における著作権使用料のAの取分が「B社の入金額×Aの創作割合×50%」であるとします。そして、Aは収録曲(1)〜(5)のうち1曲目〜3曲目については作詞と作曲を行い、4曲目と5曲目については、作詞だけを行ったとします。この場合、Aに支払われる消費税抜著作権使用料は以下のようになります。なお、創作割合は、作詞・作曲を1人で行った場合は100%、作詞か作曲のいずれか一方のみを行った場合は50%とします。
・1曲目〜3曲目…1曲につき1,057,500×1×0.5=528,750円
・4曲目…2,115,000×0.5×0.5=528,750円
・5曲目…1,057,500円×0.5×0.5=264,375円
・合計…2,379,375円

ダウンロード販売した場合
 今度はネット配信によりダウンロード販売したときの著作権使用料を調べてみます。
 JASRACの「インタラクティブ配信」に関する規定では、包括契約を締結している利用者(配信事業者)がダウンロード形式で音楽データを配信した場合の月額の使用料は、「1曲1リクエストあたりの情報料(販売額)の7.7%または7円70銭のいずれか多い額に月間の総リクエスト回数を乗じて得た額」となっています。
 1リクエストの情報料を200円、ある月の月間の総リクエスト回数を100,000回とすると、使用料単価は200円×0.077=15.4円となり、7円70銭より高いので、15円40銭が適用され、これに総リクエスト回数の100,000回を乗じた1,540,000円がその曲のその月の著作権使用料になります。

次に、この著作権使用料の権利者への分配方法を説明します。
 インタラクティブ配信の使用料の分配方法はCDのようなオーディオ録音の使用料にくらべ、かなり複雑です。
 JASRACのインタラクティブ配信に関する分配規定では、まず、使用料の総額のうち0.5%を「分配補償資金」として控除します。分配補償資金は、インタラクティブ配信で利用された実績があるのに分配されていないという権利者からのクレームに対応するための資金です。
 次に、残った99.5%分を「複製分配資金」と「送信分配資金」に分割します。これは、インタラクティブ配信という利用形態が、音楽データを配信事業者のサーバーに蓄積(複製)するときの「複製権」と、蓄積された音楽データをユーザーのリクエストに基づいて配信するときの「公衆送信権」の2つの支分権が複合的に働くので、これに対応した分配方式にするための措置です。
 この2つの資金の割合は以下の通りです。
・ダウンロード形式の場合…複製分配資金:65%、送信分配資金:35%
・ストリーム形式の場合…複製分配資金:15%、送信分配資金:85%
 ダウンロード形式の場合は、配信された音楽データがユーザーの端末に複製されるので、複製分配資金の割合を多くしています。
 これに、徴収した使用料1,540,000円を当てはめると、次のようになります。
(1)分配補償資金…1,540,000×0.005=7,700円
(2)複製分配資金…(1,540,000−7,700)×0.65=995,995円
(3)送信分配資金…(1,540,000−7,700)×0.35=536,305円
 これらの金額のうち?と?の合計額1,532,300円をこの曲の権利者に分配するのですが、全額を音楽出版社に分配するわけではありません。?の複製分配資金については原則として全額を音楽出版社に分配しますが、?の送信分配資金については、規定により、音楽出版社取分と著作者取分に分割して分配することになっています(JASRACと信託契約を締結していない著作者については、送信分配資金の全額が音楽出版社に分配され、音楽出版社が著作者に再分配する)。分割の割合は、音楽出版社がJASRACに提出した「作品届」に記載されている演奏権の取分を当てはめます。
 また、インタラクティブ配信の管理手数料として10%が控除されます。
 この曲の音楽出版社がB社、著作者が作詞作曲ともAで、演奏権の取分が6/12(50%)とすると、B社とAが受け取るインタラクティブ配信の著作権使用料は次のようになります。
・B社…(995,995×0.9)+(536,305×0.5×0.9)=896,396+241,337=1,137,733円
・A…536,305×0.5×0.9=241,337円
 なお、Aは著作権譲渡契約の規定によりB社の入金額の50%つまりB社に分配された複製分配資金の50%(896,396×0.5=448,198円)を受け取れるので、Aが最終的に受領する著作権使用料は689,535円となります。

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