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2018.10.19

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music zoo KOBE 太陽と虎

interview #3

music zoo KOBE 太陽と虎
松原 裕 代表

関西地区は、音楽プロデューサーであり、チャリティイベント“COMING KOBE”主宰者もある、神戸の太陽と虎の松原代表に取材。同店が、神戸の活性化や復興を目指した、地域に根付いたライブハウスであることがわかるはずだ。

text:永元 路夕(TRYOUT) photo:飯久保 忠志

“関西なめんなよ”って人が多い気がします。
今、関西が元気な理由はそこにあると思います。

親子2世代で来られる方も多いし 一緒に歳を重ねていく方も増えた

内装がとても特徴的ですが、動物園をコンセプトにされたとか?

いろいろコンセプトや流れを考えたときに、動物園が一番面白いかなと。ミュージシャンを動物に見立てて、スタッフは飼育員みたいな感じで(笑)。出演者しかわからない資料をはじめ、ドリンクチケットやWi-fiのパスワードなど、動物園をネタにした細かい部分にまでこだわってます。

小ボケがたくさんあるんですね。名前もインパクトありますし。

2010年にここを作るときに、英名のライブハウスがたくさんあって、ここも英語にしてしまうとツアースケジュールがずらっと並んだときにどうしても埋もれてしまうなって。それもあって名前は絶対日本語と決めていました。とにかくほかにないライブハウスを突き詰めていったらこうなりましたね。

そんな太陽と虎に来られる最近のお客さんの傾向はどうですか?

ここ数年で年齢の幅は広がったと思います。僕がここを始めた頃は若い方が多かったけど、今は親子2世代で来られる方も多くて、僕より年上の方もすごくいる。“ライブハウスシーン”というのが定着してきたように思いますね。そのシーンと一緒に年齢を重ねていく方も増えたというか。ライブハウスが娯楽のひとつとして文化に溶け込んできたように感じます。

では、お客さんのノリ方にも変化はありましたか?

モッシュ&ダイブのノリ方もひとつの過渡期になっていると思います。今年初めて“COMING KOBE”でモッシュ&ダイブを禁止したんです。そのおかげで来場者と一緒にイベントを作る感覚が強くなりましたね。初日は数名はいたんですけど、その日のTwitterであるアーティストがイベントの在り方やルールを熱くツイートしてくれて、それを見たお客さんが多かったのか、次の日はモッシュ&ダイブがいっさい起きなかったんです。その光景を見て、僕含めスタッフ全員が感動しました。

すごい。みんなTwitterを見たりされてたんでしょうね。

たぶんそうだと思います。イベントを守りたいと思ってくれている来場者、イベントを続けたいと思っているスタッフ、その橋渡しをしてくれているアーティストが三位一体となった感じですね。イベントを作る達成感は、14年間やってきたなかで正直一番感じました。禁止にすることで、今まで見たり感じたりしたことのない気づきや面白さがありましたね。

街を背負ったバンドがどんどん出てきて活性化につながればと

いろいろと変わりつつあるなか、最近の関西ライブハウスシーンの状況はどうですか?

うれしいことに音楽だけじゃなく地方からいろいろなものが発信される時代になってきて、上京することなく、関西在住のままデビューして活躍する、そんなアーティストがたくさん出てきたと思います。昔は売れるために東京へ、でも今は、行き来しながら活動できるからこそ、離れた土地同士でも曲作りができるすごくいい時代。街を背負ったバンドがどんどん出てきて、地元の活性化や地方創生につながればなと。そうなることで、行政ももっとアーティストを取り入れた活動ができると考えています。関西は元気だし、無味無臭な人間が少ないですよね(笑)。街中でも、味の濃い人間が多いから、そんなライブハウスオーナーや店長と触れ合うアーティストもそりゃ味付けも濃くなるし、個性も出ますよね。

たしかに(笑)。人間味が強いですよね。

そう。今、関西が元気な理由はそこにあると思います。“関西なめんなよ”って気持ちを持っている人が多い気がしますね。少なくとも僕は誇りを持ってますし、“神戸なめんなよ”って思って生きてます(笑)。

それは関西人、絶対あると思います(笑)。では、松原さんが思うライブハウスの魅力、役割って何でしょう?

ライブハウスは音楽ピラミッドのなかでも最末端で、アーティストが最初に出会う音楽業界の扉。僕が思うに、ずっとその街に根を張り続けないといけないと思います。アーティストも一生売れ続けるってなかなか難しいと思うんです。だいたいのアーティストは、最終的にライブハウスに帰ってくるんですよね。そのときに「お帰り」と言ってあげられる、そんな場所であり続けたいし、そうならないといけないと思います。

アーティストのホームだと。

ここ最近は、音楽業界全般がライブハウスを大事にしてくれるようになったと感じます。アーティストも自分たちが育った場所として大切にしてくれるし、プロダクションもみんなライブハウスをひとつの大事なポイントとして位置づけてくれるようになった感覚がありますし、すごくやりやすいなとは思います。

なるほど。アーティストも楽しめるためにしていることもあるとか?

出会ったら化学反応が起きるようなアーティスト同士の出会い(ブッキング)を心掛けています。うちは打ち上げを推奨してて、そこから人となりや人間性がわかってきて、こいつとこいつをくっつけたらすごく面白いことが生まれそう!みたいなことを思うので、ジャンルは違えどそういうブッキングをしたいですね。

music zoo KOBE 太陽と虎

これからのライブハウスの使命は、 “地域にどれだけ密着できるか”だと思うんです。

神戸で完結する活動の場にしたい。 遠くには行かせません(笑)。

先ほど地方創生の話が出ましたが、ライブハウスと地域の出合いで起こる化学反応も面白そうですよね。

僕、ロックって市民権を得たと思うんです(笑)。昔は金髪でギター抱えてたら、近所のおばさんから“あの子不良になった”って思われてた時代じゃないですか。今は別に思われないし。だからこそ、ライブハウスはいつまでも地下に潜って不良が溜まってる場所みたいなイメージから脱却しないといけない。これからのライブハウスの使命は、“地域にどれだけ密着できるか”だと思うんです。僕は、フェスとかって地元の夏祭りの発展型だと思ってて。ご近所さんや地域の人たちと密接に触れ合って、気軽に遊びに来られるハコを作ることが大事。もともとロックって非社会、反社会的なイメージじゃないですか。でも時代は変わったし、逆に行政をロックが動かしていくんだ!っていう目線に切り替えて、街と手を取り合って歩んでいくことが大切。そうすることでバンドマンのイメージも変わると思うんですよ。

太陽の虎が牽引し、行政を巻き込んで動かしていくという強い意志を感じますね。ちなみに今までに行った取り組みなどはあったりするんですか?

最近では、成人式のブッキングなどもさせてもらってるんですけど、“神戸にはこんなアーティストがいますよ”と提案しています。僕たちライブハウスが役に立てることはたくさんあると思っています。たとえば、駅前でイベントをしたいとなったときにママさん合唱団を呼んでイベントするのも素敵なことだと思うんですけど、それを観に来る人って同じような年齢層だと思うんです。でも若い人に観に来てもらいたいと思ったら、人気のロックバンドを呼んだらいいと思うんです。役所の人間がその発想になってくれれば、僕がブッキングしたらいいわけで。そのためにも太陽と虎、もしくは僕みたいなライブハウスの人間がもっと世の中に浸透していかないといけないんですがね。

いろいろとされているんですね。ほかに考えている試みはありますか?

ここを作る構想として、神戸で完結するアーティストの活動の場にしたいと思っていました。ライブハウスからレコーディングスタジオ、レーベル、プロダクション、グッズ製作会社を作って…って、神戸のミュージシャンが神戸にいるだけですべてまかなえるというシステムを作りたかったんです(笑)。それが組織化してきた今、神戸にいながらも精力的に音楽活動ができるようによりいっそうサポートしてやりたいですね。遠くには行かせません(笑)。やっぱり東京に行きたくないけど行くミュージシャンって多いんですよ。そんなミュージシャンに僕は「行かなくていい」と言ってます(笑)。

music zoo KOBE 太陽と虎

music zoo KOBE 太陽と虎

兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町2-1-253(最寄り駅:三宮駅)
078(231)5540(事務所)

2010年の寅年に三宮にオープンした、神戸の音楽シーンに欠かせない存在のライブハウス。コンセプトは“動物園”。JR三宮駅から「全力で走って3分」の場所にあり、キャパは約250人。なお、松原代表は現在、ステージ4の癌と闘病中でもある。

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