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2018.07.19

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竹内孝幸さん 株式会社エルプ 企画・営業 部長

名匠に聞く!
レーザーターンテーブル

竹内孝幸さん
株式会社エルプ 企画・営業 部長

レコードを針ではなく、レーザー(光)で再生するレーザーターンテーブル。マスターテープの原音にかぎりなく近い音が聴けると、音のプロにも絶賛されている同機のメーカーに話を聞いた。

text:吉田幸司

しっかり作られたレコードには
アーティストの想いがある意味念写されているというか。

ドン・ウォズが「クソみたいなレコードは作るな」と

前回本誌で取材したのが4年前、それ以降で何か進化したことはありますか?

まず、市販のMM式のカートリッジプレーヤーはだいたい4mVほどで出力しているんですね。レーザーターンテーブル(以下LT)のフォノ出力はもともと外付けのイコライザーに対応するように4mVに下げて出力していたんです。ただ、LT自体は400mVのフォノ出力能力を持っています。お酒でいうと原酒のまま出ているものを、周りに合わせるために4mVに薄めていたんですけど、それは非常にもったいないことだから400mVのままストレートにガンといこうよと、2016年に専用のイコライザー(写真)を開発しました。たとえばワーナーさんと一緒に作った『500アトランティックR&B/ソウル・シングルス』というアトランティックの70周年を記念したCDがあるんですが、マスターのテープなりデジタルデータを使わずに、オリジナルのシングル盤からLTを使ってマスター音源を作って、それをCDにしたんですよ。

LTの進化によって、レコードの音がCDのマスター音源として聴けるようになったわけですね。

それも、劣化してしまったマスターからではなくて、元気の良かったフレッシュなマスターで作られた子供(ファーストプレス)をもとに、親にまた返したみたいな。当時の音を知ってる方にはレコードのガッツのある音だという感想をいただいてますし、今までレコードの音を知らなかった人も手軽に当時のオリジナルのレコード盤の音が確認できるという。で、それを日本のアーティストでやったのが角松敏生さんで。1981年にリリースされたファーストアルバム『SEA BLEEZE』のデジタルリマスターの作品を出そうとしたんですけど、これも当時のアナログレコードをマスターにしてCDにしようって作ったんですね。

eLPE-1

レーザーターンテーブルの力を余すことなく発揮する専用フォノイコライザー、eLPE-1。

よりオリジナルの音に近づけた。

そうなんです。だから、よりアーティストの意向に近いパッケージが作れる。やっぱりアナログレコードのブームなわけですから、より良いものをリスナーに聴いてもらって、レコードに親しんでもらって、良いものを残していくのが我々の使命だと思うんです。その人がまるでそこで歌ってるような空気感を感じるような音であってほしい。ましてや今、音楽離れと言われているなかで若い人たちのハートをつかむためには、良いものを残していかないといけない。実際にレコードって50年とか100年もつわけじゃないですか。だからドン・ウォズ(ブルーノート社長)が言いましたけど、「クソみたいなレコードは作るな」と。

スピーカーから音が重さを持って出てくるんですよ

そこ大事ですよね。ブームになっている今だからこそ、音の悪いレコードではなく、音の良いレコードを聴いてほしい。

良い音の盤をちゃんと紹介すると、やっぱりわかるんですよ、みんな。普段CDとかに聴き慣れていればいるほど、その違いがわかってみんな引きつけられてしまう。よくイベント会場とかでレコードを聴いた人と話して感じるのは、しっかり作られたレコードはアーティストの想いが伝わってくる。たとえば喜びであるとか悲しみであるとか怒りであるとか、それをポジティブに変えようとする想いとかパワーが、ちゃんとある意味念写されているというか(笑)。

でも、それはなぜなんでしょうね。

それは結局、耳で聴こえる音以外のところに出ているんでしょうね。僕が思うに、圧縮するときに20Hzと2万Hzのところでスパッと捨ててしまうんじゃなくて、耳で聴こえない3万Hzのものも録っておいて、2万Hzの内側に入れちゃうみたいな。

アナログレコード(黒ヴァイナル盤)の溝の、針等で傷ついていない部分にレーザーを当てるので、フレッシュな音で再生される。

アナログレコード(黒ヴァイナル盤)の溝の、針等で傷ついていない部分にレーザーを当てるので、フレッシュな音で再生される。

耳には聴こえないんだけど、その想いを内側に封じ込めているという。

だから、良いレコードはスピーカーから音が重さを持って出てくるんですよ。手を出すとキャッチできるような。

やっぱり良い機器と環境で聴くのがいいと思うんですけど、それが現実的に難しい人もたくさんいると思うんですが。

だからそれこそ、うちに来るのもひとつの手だろうし(エルプでは予約制で試聴できる)、我々がやってるイベントやオーディオフェアなんかに足を運ぶのもOKだし。あとはそういうオーディオを持ってる人と知り合いになるのもいいでしょうし。

まず体感することが何より大事だと。

そう。美味しい味を子供のうちにおぼえると、それは一生のものになりますからね。

Laser Turntable

1989年に市販化された光学式アナログレコードプレーヤー。再現性の高い音はアーティストからも支持され、キース・ジャレットなどにも愛用されている。

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