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2018.04.20

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舟橋雅人さん 株式会社インハイ代表取締役

80年代初頭からコンサートグッズを製作

マーチャンの“先人”に聞け!
舟橋雅人さん 株式会社インハイ代表取締役

舟橋さんが大江千里の担当時代にアーティストグッズを何種類も作って、 それをコンサートで販売したことが、マーチャンダイジングの始まりとも言われている。 マーチャンダイジングとは何か、舟橋さんの考え方をお聞きした。

text:吉田幸司

コンサートを見る楽しみと同じレベルで、
今日何買おうかなと思って来てるんです。

お弁当箱を開けるときに心に音楽が聴こえてきたら…と作ったんです

舟橋さんは80年代初頭からマーチャンダイジングを始められていたそうですね。

昔はそんなカッコいい名前なかったですけどね(笑)。僕はそもそもの始まりがアーティストのプロデュースとかマネージメントで。今はアーティストの表現や伝達手段ってSNSとかいろいろありますけど、その当時って、基本的にはCDと音楽雑誌ぐらいしかなかったじゃないですか。

コンサートグッズというと、パンフレットとタオルと、せいぜいTシャツくらいだったと記憶しています。

ですよね。で、それよりも前の話ですけど、僕が新卒で入ったのが子供服の会社で、そこでもの作りの考え方を叩き込まれたんですよ。たとえば赤ちゃんの肌着って裏返しに縫ってある。疑問に思って聞いたら、肌に刺激を与えて赤ちゃんに悪いからだと。すべて、赤ちゃん側の笑顔が見たいっていう感覚でものを作ってるんですよ。

何より、まずは赤ちゃんのために。

そう。で、今はグッズ1個のものにメディアとしての機能が内在してるんじゃないかなと思っていて。たとえばスマホのカバーが忘れ物であったら、“これ誰々さんっぽいから誰々さんのじゃない?”ってなるじゃないですか。そういうのをアーティストグッズで発信できないかなと思って。たとえば僕は当時、大江千里が一番大江千里らしいときってどういうときだろう…大江千里の部屋にありそうなもの…、大江千里って部屋で何を飲んでるときが一番大江千里らしいんだろう…やっぱりミルクティかな?と。そう思ってティカップを作った。だから僕はグッズを全部、アーティストの表現物として作ってたんですよ。お客さんはコンサートを見る楽しみと同じくらいのレベルで、今日何買おうかなと思って来てるんですよね。僕はそれを含めて全部がコンサートの演出だと思うんです。

グッズは今やコンサートには欠かせないものになっています。

最初に僕がお弁当箱を作ったときは、みんなに何作ってるんだ?って言われましたから(苦笑)。でも、毎日お弁当箱を学校に持っていってる子がコンサートに来てるんですもん。お弁当箱を開けるときに心に音楽が聴こえてきたら楽しくなるだろうなと思って作ったんですよ。

最初の子供服のときの発想と同じで、まさにお客さんを笑顔にさせるためのものということですね。

そう。それが30年くらい前。最初は大江千里のツアーで10何アイテム作ったと思うんですよ。それが始まりだと思いま す。それこそお弁当箱だ目覚まし時計だ、ちょうどそのマーケットにいる人たちの生活環境のなかに普通に存在しているものっていうのを作ったんですよね。

グッズは最後のアンコール。とても大事な演出の一部だと思う

売り方の面で何かこだわっていることはありますか?

僕は単に古い人間のこだわりなんですけど、アナログなところを大事にしたいというか。だから売り場も手売りでやるし、バイトさんにはちゃんと商品の特徴の説明をして、「ここに買い物に来てくれたお客さんをどれだけ笑顔で帰すかが今日のきみの仕事だから」っていう話は一生懸命します。

またコンサートに行きたいと、グッズからも思ってもらえるように。

そうなんです。グッズは最後のアンコールなんですよ。やっぱり家に帰って、買って良かったと思ってもらいたいし。何年か経って「そのTシャツカッコいいな、どこで買ったの?」って言われて、2年前って。そこに行ったっていう自慢もできるし。

勲章みたいなものですね。

俺の好きなアーティストがこんなカッコいいもの作ってくれたんだよっていうのもうれしいし。それをピッピッピってやられたらね、スーパーで買い物するのと同じ気持ちにお客さんをさせちゃいけないと思って。で、そのとき売り子が、「これかわいいでしょ、私もかわいいと思うんです」っていう言葉をひとつかければ、そのやり取りって、お客さんにとってはものすごいエンタテインメントだと思うんですよね。

確かに。マーチャンとは何かというと、マーチャンもエンタテインメントだと。

コンサートということでいえば、とても大事な演出の一部だと思います。同時に、アーティストから発信できる、TwitterやInstagramと同じくらい有効なメディアだと思います。だからコンサートグッズとは何かと言われたら、表現物です、販売物ではないですって言いたいですね。

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