「音楽著作権」バイブル

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第14回 コンテンツの集中管理と著作権等管理事業者

今回はコンテンツの集中管理の意義と、 集中管理を行っている著作権等管理事業者について、 「音楽著作物」「実演」「レコード」に関する管理を中心に解説します。

text:秀間修一(リアルライツ)

今回のポイント

(1)コンテンツの集中管理は権利者にとっても利用者にとっても大きな利点があり、特に音楽著作物の分野で集中管理が普及している。
(2)集中管理を行う事業者は、原則として著作権等管理事業法の規制を受ける。

コンテンツの集中管理とは

 ほとんどのコンテンツは誰にでも簡単にコピーすることができ、そのコピーを配信することができます。特に音楽著作物に関しては、このような複製や公衆送信行為を音としてだけでなく楽譜や歌詞カードとしても行うことができ、さらに、歌ったり演奏したりして利用することもできるので、非常に利用形態の多いコンテンツと言えます。
 コンテンツのこのような利用行為は、いつどこで誰によって行われるかわかりません。無断利用を阻止したいと思う権利者は、自分が権利を持つコンテンツの利用実態について常に目を光らせる必要があります。しかし、これを権利者自らが行うことは困難でしょう。そのようなことを毎日行っていたら新たなコンテンツを創作する時間が取れません。
 いっぽう、コンテンツを権利者の許諾を得、使用料を支払って適法に利用したいと考えている人もたくさんいます。しか し、そのコンテンツの権利者が誰で、どこに許諾を求めて良いのかわからない場合も多々あります。また、権利者はわかっていても、コンテンツごとに個別の権利者と利用の交渉をするには大きな労力を必要とします。しかも、許諾の条件がコンテンツごとに異なっていたりすると、利用者側の事務処理も複雑になります。
 そこで、多くの権利者からコンテンツの管理業務の委託を受け、権利者に代わって管理する手法が取られるようになりました。これがコンテンツの集中管理です。特に音楽著作物の分野では、多くの国で古くから集中管理が行われてきました。

集中管理のメリット

 コンテンツの集中管理には大きな利点があります。
 権利者側から見ると、低コストで高レベルの管理が期待できることが大きなメリットです。集中管理を行う事業者は著作権や著作隣接権の管理のプロなので、個々の権利者よりはるかに高度の管理ノウハウや管理システムを有しています。権利者は分配を受ける使用料のなかから一定の管理手数料を事業者に支払うだけでこのサービスを受けることができます(入会金や年会費等の固定費が必要となる事業者もある)。これにより権利者は、安心して新たな創作活動や実演活動に専念することができるのです。
 また、利用者から見ても、1回の申請で希望する多くのコンテンツを、あらかじめ公開されている料金で利用することができるというメリットがあります。これは、事業者は後述する「著作権等管理事業法」の規制により、あらかじめ使用料規程を文化庁長官に届け出、そこに定められている金額を超えて使用料を徴収することができないからです。また、事業者には、正当な利用がないかぎりどの利用申請者に対しても利用を許諾しなければならないという応諾義務があるので、過去に債務不履行等の問題を起こしていないかぎり許諾を拒否されないからです。

著作権等管理事業法の概要

 「著作権等管理事業法」は、科学技術の発展、デジタル化・ネットワーク化の急速な進展等によるコンテンツの利用実態の変化への対応や当時の一連の規制緩和の流れを受けて、著作権や著作隣接権の管理委託者を保護し、著作物やレコード、実演等の利用を円滑にし、もって文化の発展に寄与することを目的として、2000年11月に成立した法律です(2001年10月1日施行)。そして、これにより、これまで存在していた規制色の強い「仲介業務法」(1939年制定)は廃止されました。
 仲介業務法において対象となっていたコンテンツは、著作物のうち小説、脚本、楽曲(歌詞を含む)であったのに対し、著作権等管理事業法では、すべての著作物に加え、実演、レコード、放送、有線放送という著作隣接権の客体もすべて対象となっています。対象物の範囲は広がったものの、参入規制は許可制から登録制に緩和されており、同じ種類のコンテンツを管理する事業者が複数参入できるようになっています(仲介業務法時代は、同じ種類の著作物については1つの事業者しか許可されていなかった)。
 また、管理委託契約約款(意味は後述)や使用料規程についても、仲介業務法では許可制を採用していたが、著作権等管理事業法では届け出制に緩和されています。
 このように、著作権等管理事業法は仲介業務法にくらべてゆるやかな規制を基本とし、著作権や著作隣接権の管理業務の健全な発展を促すための必要最小限度の規制を行うものとなっています。

〇著作権等管理事業
 「管理委託契約」にもとづき著作物・実演・レコード・放送または有線放送の利用の許諾その他の著作権または著作隣接権の管理を行う行為を業として行うことを「著作権等管理事業」と言い、これを行う者を「著作権等管理事業者」(以下「事業者」と省略)と言います。ただし、委託者(権利者)が人的関係、資本関係等において受託者(事業者)と密接な関係を有する者として文部科学省令で定めるもの(委託者が受託者の親族、受託者の親会社・子会社・関連会社、役員などが該当)は、著作権等管理事業から除かれます。

〇管理委託契約
 管理委託契約とは、委託者が受託者に著作物等の利用の許諾や著作権等の管理を行わせることを目的とする契約で、委託者が使用料の額を決定することとされているもの(これを「非一任型管理」と言う)以外のもの、換言すれば、受託者が使用料の額を決定するもの(これを「一任型管理」と言う)を言います。したがって、非一任型管理による管理事業は著作権等管理事業法による規制を受けないことになります。
 管理委託契約には、委託者が受託者に著作権または著作隣接権を移転し、著作物等の利用の許諾その他の当該著作権等の管理を行わせることを目的とする「信託契約」と、委託者が受託者に著作物等の利用の許諾の「取次ぎ」または「代理」をさせ、あわせて当該取次ぎまたは代理に伴う著作権等の管理を行わせることを目的とする「委任契約」の2種類があります。
 「信託」とは、財産権を譲渡等により移転し、受託者に契約等に定めた一定の目的に従ってその財産権を管理・処分等をさせることです。
 信託による著作権等管理事業の大きな特徴は、著作権や著作隣接権が受託者に移転するので、著作権等の侵害者に対し、受託者が著作権者または著作隣接権者として利用差し止めや損害賠償請求等の法的対応をとることができることです。JASRACの管理委託契約は信託契約なので、これが可能です。
 委任契約のなかの「取次ぎ」とは、自己の名をもって他人の計算において法律行為をすることを引き受けること、また、「代 理」とは、代理人が本人に代わって行った法律行為の効果を本人に帰属させることです。いずれの場合も、著作権等は受託者に移転しないので、著作権等の侵害者に対し利用差し止めや損害賠償請求等の法的対応をとることは困難とされています。

〇著作権等管理事業者が文化庁長官に届け出る書類
 事業者は以下の書類を文化庁長官に届け出る必要があります。
(1)管理委託契約約款…管理委託契約の種別(委任契約の場合は取次ぎまたは代理の別を含む)・契約期間・使用料分配方法・管理手数料・その他政令で定める事項を記載したもの
(2)使用料規程…利用区分ごとの著作物等の使用料の額を定めたもの

〇著作権等管理事業者の義務
 事業者には以下の義務があります。
(1)使用料規程に関する意見聴取努力義務…使用料規程を定めるときまたは変更しようとするときは、利用者または利用者団体からあらかじめ意見を聴取するように努めなければならない。
(2)使用料規程概要の公開義務
(3)使用料規程上の額を超えて請求しない義務(減額することは可能)
(4)応諾義務(利用許諾の拒否の制限)…事業者は正当な理由がなければ利用の許諾を拒むことはできない。許諾を拒むことのできる正当な理由としては、利用申請者が著作者人格権を侵害するような利用を行おうとしている場合や、過去に許諾した利用について使用料を支払おうとしない場合などがあげられる。
(5)その他(利用者への情報提供義務、財務諸表の備付義務等)

〇指定著作権等管理事業者について
 その利用区分におけるシェアが大きい事業者や、使用料規程がその利用区分における使用料の額の基準として広く用いられている事業者に対しては、文化庁長官が「指定著作権等管理事業者」として指定することができます。
 現在、音楽著作物・レコード・実演の分野でいえば、JASRACが「映画への録音」の区分を除くすべての利用区分で、また、日本レコード協会と日本芸能実演家団体協議会が一部の利用区分で指定著作権等管理事業者の指定を受けています。
 指定著作権等管理事業者になると以下の義務が追加されます。
・利用者団体から、文化庁長官に届け出た使用料規程に関する協議を求められたときは、これに応じなければならない。
・協議が成立したとき(当該使用料規程を変更する必要がないこととされたときを除く)は、その結果にもとづき、当該使用料規程を変更しなければならない。

 JASRACは仲介業務法時代から存在する事業者で、音楽著作物に関するすべての利用形態を管理範囲としてカバーし、音楽著作物に関する管理事業で圧倒的なシュアを保持しています。
 NexToneは、イーライセンスとジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)が合併して誕生した事業者で、管理委託契約上は音楽著作物に関するすべての利用形態を管理範囲としていますが、演奏に関しては、まだ実質的な管理は行っていないようです。
 日本芸能実演家団体協議会は、実演家が有する商業用レコードの二次使用料や貸与報酬の請求権を行使する団体として文化庁長官の指定を受けていますが、著作隣接権の管理事業も行っています。

 日本レコード協会は、レコード製作者が有する商業用レコードの二次使用料や貸与報酬の請求権を行使する団体として文化庁長官の指定を受けていますが、著作隣接権の管理事業も行っています。

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