「音楽著作権」バイブル

「音楽著作権」バイブル

第11回 著作権・著作隣接権の存続期間

実演やレコードなどを保護する「著作隣接権」と著作物を保護する「著作権」に関する権利の 中身の解説は一通り終わったので、今回はそれらの権利の存続期間について解説します。 著作権の存続期間は、その著作物の著作者名の表示方法によって大きく変わるので、 そのルールをよく理解することが肝要です。

text:秀間修一(リアルライツ)

今回のポイント

(1)著作権存続期間は著作者名をどう表示するかで変わってくる。
(2)著作物は実名を著作者名として表示して公表すれば、死後50年まで保護される。
(3)実演は実演後50年まで、レコードは発行後50年まで保護される。

 著作権も著作隣接権も永遠に存続するわけではありません。ある時点で権利は消滅します。著作権が消滅した著作物や著作隣接権が消滅した実演やレコードは誰でも自由に利用することができます。

著作物の保護期間の原則

 著作物の保護期間(著作権の存続期間)は、著作物の創作の時に始まります。そして、著作権は著作者の死後(共同著作物の場合は最終に死亡した著作者の死後)50年を経過するまで存続します。これが原則ですが、以下の著作物については、これと異なる保護期間が設定されています。
 なお、共同著作物とは、「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないものをいう。」(2条1項12号)と規定されています。ちなみに、歌詞付きの音楽著作物の場合、歌詞と楽曲は分離して個別的に利用することができるので、共同著作物には該当しません。つまり、歌詞と楽曲は別個の著作物であり、その保護期間も別々に計算されます。

(1)無名・変名の著作物
 無名または変名の著作物は、その著作物の公表後50年で保護期間が満了します。ただし、「周知の変名」については、実名の著作物と同様、死後50年まで保護されます。また、公表されて50年が経過する前に、その著作者の死後50年を経過していると認められる場合は、その著作者の死後50年を経過したと認められる時点で著作権が消滅します。
 ところで、「無名」の著作物とは、有名でない人が創作した著作物とか、価値のない著作物ということではなく、著作者名が表示されていない著作物のことです。
 また、「変名」とは、雅号、筆名、略称その他実名(本名)に代えて用いられるものを言います。「周知の変名」とは、単に有名な変名ということではなく、「変名が著作者本人の呼称であることが一般人に明らかであり、その実在人が社会的に認識できるようなものであることを必要」とします(加戸守行著・著作権情報センター刊『著作権法逐条講義 六訂新版』143ページ)。
(2)団体名義の著作物
 法人その他の団体が著作の名義を有する著作物の著作権は、その著作物の公表後50年(その著作物が創作後50年以内に公表されなかったときは、創作後50年)までしか存続しません。
 音楽の場合、作詞者や作曲者にバンド名を付して公表すると、団体名義の著作物として扱われ、公表後50年で著作権が消滅します。
(3)映画の著作物
 映画の著作物の著作権は、公表後70年(その著作物が創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年)まで存続します。
 また、映画の著作物の著作権がその存続期間の満了によって消滅したときは、当該映画の著作物の利用に関するその原著作物の著作権は、当該映画の著作物の著作権とともに消滅します。したがって、保護期間満了により著作権が消滅した映画を利用するときは、その映画の原著作物の著作権についても権利処理が不要となります。なお、映画に使われている音楽著作物は映画の著作物の原著作物ではないので、その音楽著作物自体の著作権が消滅していないかぎり、権利処理が必要です。

保護期間の計算方法
 著作物の保護期間の終期を計算するときは、著作者が死亡した日または著作物が公表されもしくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算することになります。たとえば、2017年9月15日に死亡した著作者の著作権は、その翌年である2018年1月1日から50年後の2067年12月31日で満了することになります。

実演の保護期間

 実演の保護期間(著作隣接権の存続期間)は、実演を行った時に始まり、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時に満了します。したがって、たとえば2017年1月1日から同年12月31日の間に行われた実演は、その翌年の2018年1月1日から50年後の2067年12月31日に保護期間が満了します。

レコードの保護期間

 レコードの保護期間(著作隣接権の存続期間)は、その音を最初に固定した時、つまり原盤を制作した時に始まり、そのレコードが発行された日の属する年の翌年から起算して50年経過した時に満了します。ただし、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して50年を経過するまでの間に発行されなかったときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して50年で満了します。
 たとえば2017年1月1日から同年12月31日の間に原盤が制作され、そのレコードが2018年1月1日から同年12月31日の間に発行された場合は、原盤の制作時に保護が開始され、レコードの発行日の翌年の2019年1月1日から50年が経過するまで、つまり2068年12月31日まで保護が継続します。

レコードの発行とは
 では、レコードの発行とはどういう状態を言うのでしょうか。これについては、著作権法4条の2の「レコードの発行」という条文で規定しています。

第4条の2 レコードの発行
レコードは、その性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が、第96条に規定する権利(筆者注:レコード製作者の複製権のこと。)を有する者又はその許諾(第103条において準用する第63条第1項の規定による利用の許諾をいう。第4章第2節及び第3節において同じ。)を得た者によつて作成され、頒布された場合(第97条の2第1項又は第97条の3第1項に規定する権利(筆者注:レコード製作者の譲渡権と貸与権のこと。)を有する者の権利を害しない場合に限る。)において、発行されたものとする。

 この定義規定によれば、レコードを複製した有体物が著作権法上合法的に相当程度作成され、頒布された場合に発行されたことになるので、一般的には、レコード会社によってCD等の複製物として発売されることにより発行されたことになります。したがって、レコード製作者に無断で発売されたケースや、レコードをネット配信(音楽配信)しただけのケースでは発行されたことになりません。
 この規定を活用すれば、レコードの保護期間を大幅に延ばすことができます。すなわち、原盤を制作した年にCD等を発売すれば、制作時からほぼ50年で保護期間が満了しますが、原盤を制作して50年経過する直前までは音楽配信だけを行い、その後にCD等を発売すれば、その翌年から50年後まで保護されるので、原盤制作時から数えると、ほぼ100年保護されるわけです。

旧著作権法時代の歌唱・演奏の保護期間

 現在の著作権法(以下「新法」と言う)は1971年1月1日に施行されたものですが、施行日前に行われた実演や施行日前にその音が最初に固定されたレコードの保護期間については、明治32年に制定された著作権法(以下「旧法」と言う)の適用を受けます。そこで、旧法との関係について説明します。
 旧法では、実演のうち演奏と歌唱を著作物として扱い、その著作者である実演家に著作権を与え、実演家の死後30年まで保護していました(無名・変名・団体名義・死後公表の実演は発行または興行の時から30年間)。
 また、著作物を録音物に適法に録音した者(新法に言う「レコード製作者」に相当。なお、新法では、違法に音を固定した者でもレコード製作者になり得る)を著作者とし、その録音物を著作権で保護していました(保護期間は実演と同様)。
 その後、新法を施行するにあたって、旧法時代に行われた実演と旧法時代にその音が最初に固定されたレコードで新法の施行時(1971年1月1日)に権利が存続しているものについては、新法の規定にもとづく保護期間と旧法の規定にもとづく保護期間を比較し、新法の規定にもとづく保護期間の満了日より旧法の規定にもとづく保護期間の満了日のほうが後になるときは、旧法の規定にもとづく満了日まで保護するという経過措置がとられました。ただし、旧法の規定にもとづく満了日が新法の施行日から50年を経過した日の後になるときは、新法の施行日から50年を経過する日、つまり2020年12月31日で保護は打ち切られます。
 旧法時代、レコード製作者の大半はレコード会社などの法人(つまり団体名義の著作物)であったと考えられるため、レコードの保護期間が発行後50年となっている現在では、この経過措置は、レコード製作者にとってはほとんど意味がないのですが(新法の施行時のレコードの保護期間は固定後20年だったので意味があった)、実演家にとっては現在でも大きな意味を持つことになります。なぜなら、新法の施行日より前に行われた実演は、原則として実演家の死後30年まで保護されるため、実演家によっては、保護期間が実演後50年より長くなるケースが生じるからです。ただし、新法の施行日から50年を経過する日をもって保護が打ち切られるので、どんなに長生きした実演家の実演であっても、2020年12月31日を越えて保護されることはありません。

著作物の保護期間を最長化するウラ知識

 以上見てきたように、著作物の保護期間は、映画の著作物を除くと、著作物を公表する際、著作者名をどう表示するかで大きく変わってきます。場合によっては、著作者が生きているのに著作権が切れてしまうこともあり得るのです。その著作物が著作権消滅後も多く利用されているとしたら、著作者としては大きな損失です。そこで、音楽著作物を例にとって、どういう著作者名表示で公表したら保護期間をもっとも長くできるか考えてみます。

1. 著作者名は実名で公表しよう
 とにかく、著作物に実名を著作者名として表示して公表することがベストです。そうすれば、著作者の死後50年まで保護されるので、その著作物が利用されるかぎり孫の代まで印税を発生させることができます。どうしても変名を用いたいのであれば、その変名が周知なものとして認められるよう、たとえばJASRACと信託契約をするなどの対応を考えましょう。

2. バンド仲間で作った曲は、バンド名ではなく、各メンバーの実名を表示して公表しよう
 特にインディーズのバンドでは、自分たちが作った曲の著作者名をバンド名と同じにしているケースが多く見受けられますが、これは筆者から見れば、もったいないかぎりです。
 著作者名をバンド名にしてしまうと、「団体名義の著作物」として扱われ、どんなに大ヒットしても公表後50年で著作権が切れてしまいます。
 バンドの仲間で作った曲であれば、創作にかかわったバンドメンバー全員の実名または周知の変名を著作者名として羅列して表示しましょう。そうすれば、「共同著作物」の扱いとなり、最後に亡くなったバンドメンバーの死後50年まで、ほかのメンバーの分を含めて著作権が存続することになります。

3. いったん無名または変名で公表した著作物を実名扱いにする方法
 では、すでに無名でまたは周知性に乏しい変名を著作者名として表示して公表した著作物を、実名の著作物並みに著作者の死後50年まで保護してもらう方法はないのでしょうか。その方法は、著作権法上2通りあります。
(1)公表後50年以内に、文化庁に対し実名の登録を行う。
(2)公表後50年以内に、実名または周知の変名を著作者名として表示して公表し直す。
 変名の場合は、これらのほかに、前述したようにJASRACなどの著作権等管理事業者と管理委託契約を締結して変名を届け出ることも有効だと思います。

4. いったんバンド名を著作者名として表示して公表した曲を共同著作物にする方法
 これは、公表後50年以内に、そのバンドのメンバーである著作者がその実名または周知の変名を著作者名として表示してその著作物を公表し直すことで可能となります。

著作者名表示変更時の注意点
 無名・変名の著作物や団体名義の著作物を実名または周知の変名の著作物として公表し直す場合、実務的には、単に公表し直すだけでなく、その著作権をJASRACなどに管理委託しているときは、そこに必要書類を提出する必要があります。また、放送局・レコード会社・音楽配信事業者など音楽の利用者に対し、著作者名表示を変更した旨の通知を出し、今後の利用時に著作者のクレジットを変更してもらう必要もあるでしょう。

タグ: