ワールドワイドに成功する方法

ワールドワイドに成功する方法

vol.41 「ミュージシャン」or「ロックスター」

 ミュージシャンになりたいのか、それともロックスターになりたいだけなのか――。
 集中して練習を積めばミュージシャンにはなれると、私は自信をもって言えます。金儲けができるか、コンスタントに仕事があるか、有名人とステージで共演できるか、あるいは音楽シーンを決定的に変えるような勢力となれるか。こういったことについては保証できませんが、誰でもミュージシャンにはなれるはずです。
 いっぽう、ロックスターになりたいだけなら、アドバイスできることは特にありません。適切な場所と時機に居合わせ、容姿、バンド、楽曲が適切で、かつ適切なオーディエンスに共感してもらえる適切なプロモーションをする。ただそれだけのことです。もちろん、音楽に興味を持ったそもそものひらめきはロックスターになりたいという夢だったかもしれません。しかし、そんな夢は瞬く間に燃えつきる燃料のようなもので、すぐに消耗してしまいます。

ミュージシャンでいるということ

 ミュージシャンでいることは困難で、屈辱的でもあります。力仕事でもあり、電車を4回乗り換え、階段を何百段も昇り降りし、エレベーターを使うこともできず、ようやくたどり着けるような場所でのステージはきついものです。新しい楽曲のアレンジが難しいうえに、自分なりのグルーヴ感を出すためにリハーサルの時間を十分に取れるとはかぎりません。調子が乗らない夜にかぎって、客はまばらで、いまいちノリもよくありません。
 また、ミュージシャンが時代と同調することはめったにありません。あまりに斬新なためファンがほとんどいないか、あるいは時代の違うジャンルに入れ込んでファンがほとんどいないか、そのどちらかが相場です。そして、“そろそろうまくいきそうだ”と思ったそのタイミングで、バンドが解散になったり、リードシンガーが別の道に進んだり、あるいはすべての楽曲を作ってきたキーボード奏者が田舎に戻ったりするものです。
 しかし、ミュージシャンでいることでコミュニティに恵まれます。ミュージシャン仲間、コアなファン、そして偶然のリスナーとオーディエンスたち。ミュージシャンでいることによって、ミュージシャンのコミュニティ、住んでいる地域、街、市、そして国をも含めた、より大きなコミュニティの大切な一員となるのです。

ミュージシャンになるということ

 ミュージシャンになるということは、人間の偉大な創造のひとつに参与することです。人間が“どうやって”あるいは“何のために”音楽を奏でるのかは明らかでありませんが、音楽を作る行為が人間独自のものであることは誰もが知っています。音楽を作るということは、単なる聴き手としてではなく、創造者として人間だけが作れる音楽を自発的に作るということです。
 ミュージシャンが理解されることは稀です。傾倒している楽器は70年代以降あまりカッコ良くもなく、作り出そうと専念している音はといえば、消えるまでほんの数秒空気を振動させるようなものだし、その間ずっと近所に迷惑をかけ続けている可能性も高く、時間をどうやって過ごすかといえば、身をかがめ、たった1人で、同じフレーズを何度も繰り返し弾き、そのたびに、もし疲労が重なって退行していくのでなければ、顕微鏡でしかわからないほど微小な手直しに精を出します。
 ミュージシャンになることで“声”を与えられ、そしてそれを共有するオーディエンスに恵まれます。ミュージシャンはステージに立って大声を出し、叫び、そして考えを分かち合うことができます。マイク(文字通りでも、そして比喩的な意味でも)を与えられ、それを使えと後押しされます。ミュージシャンになるということは、素晴らしい伝統を息づかせることです。フォーク、ジャズ、メタル、ダンス、そしてそれ以外の様々な音楽はどれも、単独で成立するということはありません。音楽を作るということは、奏でる音のひとつひとつをもって音楽の進歩に積極的に貢献することなのです。
 ミュージシャンになりたいのであれば、その良し悪しを含めて、“なりたい”と思わなければならないのです。ロックスターになるまでの過程でミュージシャンになることもあるかもしれません。しかし、“おいしい”ところだけが欲しいのならミュージシャンになりたいのではないだろうし、ロックスターになる前に燃えつきてやめてしまうでしょう。
 ミュージシャンになるというのは、富と名声をもたらしてくれることは稀だがそれでも満足感を与えてくれる、そういった一生続くプロセスなのです。

PROFILE

Benny Rubin

Benny Rubinベニー・ルービン

マーケティングおよびセールスの専門家。日本に断続的に10年近く住み仕事をしている。日本の主要なレーベル、映画会社、ブランド、広告代理店と豊富なマーケティングの仕事経験がある。連絡先は、b@bennyrubin.com

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