特集記事

2017.01.19

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対談!徹底追求第4弾!!

「チケット転売問題」について考える-これまでの総括と今後の対策-

野村達矢さん(一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事、株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション常務取締役執行役員)× 中西健夫さん(一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会会長、株式会社ディスクガレージ代表取締役社長)

2016年、これまで本誌ではチケット転売問題を徹底追及してきたが、今回はその総括と今後の対策について、音制連野村理事とACPC中西会長にお聞きした。8月に全国紙に打った「転売NO」の意見広告が大きな反響を呼んだが、今は第2フェーズに入り、より良いチケット販売環境作りについて業界全体で話し合っているという。そして、その具体的な対応として、まずは「どうしても行けなくなってしまった」方を対象に定価リセールのためのオフィシャルプラットフォームを用意、近くにスタートする目処が立ったという報告も。2017年にはさらなる進展が期待できそうだ。

text:阿刀“DA”大志 photo:内海裕之

野村達矢さん、中西健夫さん

定価リセールのためのオフィシャルプラットフォームを、近い将来用意します。

「転売NO」を訴えた全国紙意見広告の反響

チケット転売問題に関してはこの1年で様々な進展がありました。まず、8月と9月に新聞へ意見広告を打ったのはどういう思惑があったんでしょうか?

中西2015年の年末ぐらいからチケットキャンプのCMが大量に流れ始め、アーティストの名前を検索するとトップにチケットキャンプが出てくるぐらいポピュラーな存在になりました。そんななか、NHKの紅白歌合戦の観覧偽造ハガキが出品されたり、あるコンサートではチケットの3分の1が転売サイトに出品されたりということが立て続けに起こって、我々としてもどうしたらいいのかということを話し合ったんです。まず、転売屋がやっている高額転売は認めるべきではないということを再確認し、我々の反省点についてもアーティスト、マネージメント、音制連といった関係各所と意見を交換しました。その結果、我々は転売サイトを認めていないし、非常にネガティブな存在としてとらえているという憤りを、意見広告という形で世の中に伝えるべきではないかという話になったんです。

それが結果としてすごい反響を呼ぶことになりました。

中西想像以上の反響で、ポジティブ、ネガティブ両方の意見がありました。ただ、音楽に何も関係のない人が転売目的でチケットを買い占めて、それを高額で転売サイトに出品するのはまかりならぬという部分に関しては、多くの人は理解してくれたと思います。その後に出てきた反省点としては、全席指定というシステムや、本当にライブへ行けなくなったときでもキャンセルができないのは今の時代に合っているのかなど、一般ユーザーの方々の声に対して何が正しいのかという検討をしています。次に、今はアーティストごとに顔認証システムなどを採用していると思うんですけど、アーティストごとに転売対策がカスタマイズされている今の形が果たしていいことなのかという問題にぶち当たりました。売れているアーティストは資金を投下して規制することができますが、そうではない場合にみなさんの意識をある程度共通化していく必要があるのではないかということで、今、コンピュータ・チケッティング協議会(イープラス、コミュニティネットワーク、ぴあ、ローソンHMVエンタテイメントで運営)の方々を含め、EMTG、Live Styles、テイパーズ、ボードウォークなど、みんなが集まって話をするという第2フェーズに入っています。

ひどい人だと転売で月5,000万円売り上げている

チケット転売問題については、音楽業界団体を中心に毎月30名近いメンバーが集まり討議を重ねている。

チケット転売問題については、音楽業界団体を中心に毎月30名近いメンバーが集まり討議を重ねている。

顔認証システムのためにわざわざ自分の写真を撮ってアップロードするという手間をかけたのに、結果として抽選に外れたとなると、もう顔認証チケットのコンサートに応募する気がなくなるという意見を見て、その気持ちも理解できるなと思いました。

野村入場時のセキュリティを強化するというのも、僕らはやりたくてやってるわけではなくて、やらざるを得ないんですよ。転売を防止するために個人認証を強化するしかない。自己防衛ですね。今、法律が整ってないから転売に対する規制ができない。となるとそういう形で自己防衛するしかないというむなしさはありますね。

中西そこが一番苦しいところですね。ひとつ衝撃的な話があって。某転売サービスの売上ランキングのサイトがあるんですけど、ひどい人だと個人で月5,000万円も売り上げているんですよ。こんなことがまかり通っていいのかと。一部とはいえ、こういう事実があることをもっと広く知ってもらいたいですね。

電子チケットを採用するライブも増えましたね。

中西そうですね。みなさんの意識レベルが上がったと思います。かたや、ユーザーに不便をかけていることと、開発費がかなりかかっていることに関しては今後議論していかないといけない部分だと思います。今はそれぞれの会社が対応を迫られているんですけど、そこで100通りのパターンが生まれてしまうと、問い合わせを受けるオペレーターが対応しきれないという問題も出てきているんです。こういうことも含めて、今後はある程度の統一感を持たせないとなかなか厳しいんじゃないかと思います。

新しい時代に合わせた著作権の運用についても話し合っていきたい

野村達矢さん

ユーザーとアーティストサイドの声を聞きながら、新しい時代へ向けて柔軟に考えていく姿勢を取りたいですね。
-野村-

先日、嵐が公式にチケットキャンプに対してNOを突き付けましたが、これも大きな出来事ですね。

中西そうやってどんどんアーティストが発言してくれることで、“これ、公式じゃないの?”という認識がユーザーに浸透していくので、こういった運動はどんどんやっていかないといけないと思いますね。

JASRACを含めたルール改正に関してはいかがですか?

中西これまでは一番高い値段と安い値段の平均値を基準としてライブにおける著作権使用料を算定していたんですけど、はじめから高額チケットが設定されている場合は加重平均を採用しています。たとえば、10万円の席が1,000席あったらそれはひとつの公演とみなして、それ以外の普通の席もひとつの公演とみなすという徴収をしています。ライブのチケット代の決め方に対して様々な考え方が出てきたので、JASRACとしても急な対応は難しい状況でしたが、今は話し合いをしながら同じ方向に進めていると思います。

それはかなり大きな進歩ですね。

中西チケットにグッズが付いていたりとか、今までになかったようなチケット形態が出てきているので、新しい時代に合わせた著作権の運用について話し合っていきたいと常に考えています。

定価リセールのプラットフォームの設立と、金額変動へのリサーチ

中西健夫さん

音楽に何も関係のない人が転売目的でチケットを買い占めて出品するのはまかりならぬという部分に、多くの人は理解してくれたと思います。
-中西-

この1年の成果は?

野村共同声明を出したりすることで、徐々に啓蒙活動の成果を得られていると思います。「転売しちゃいけないんだ。チケットキャンプで扱われているチケットをなるべくみんなで買わないようにしよう」というポジティブな意見も増えているので、どんどん味方が増えている感じはしますね。

中西今もうひとつ問題なのは、本当は2枚だけ欲しいんだけど4枚買って、いい席2枚はゲットして、残りを転売にまわすというパターン。これがなかなか難しいところなんですね。いい席を欲しいという気持ちは理解できるので、この問題をどう解決していくかは今後の大きなテーマだと思ってます。

チケットのリセールですね。

野村意見広告を出したあとにユーザーの方から、ヤフオクやチケットキャンプに代わるリセールサイトを用意すべきではないかという意見が多数寄せられたんですね。僕らもそういった意見に対応すべく、関係各所で様々な案を検討してきて、その結果、近々に定価リセールのためのオフィシャルプラットフォームを作る目処が経ちました。これは近い将来用意します。アメリカのTicketmasterだとチケットの値段が多少上下した状態で売られていますけど、次のフェーズではそういったことも加味して運営していく可能性はあります。

中西限度はともかく、闇サイトの増加は阻止したいので、ある程度の価格の変動は認めざるを得ないのかなと。定価リセールにこだわり続けると厳しくなる部分はあるかもしれないですね。

野村だからまずは定価リセールから始めて、ユーザーの方々の声を聞きながら運営していくことになると思います。

中西あくまでもユーザーファーストで。

ユーザーを啓蒙するだけでなく、自分たちも努力していくと。

野村そうですね。アーティストサイドはこれまでの経験から、一律のチケット料金に対するこだわりが強い人もたくさんいるんですね。それはそれで尊重するべきだと思うの で、それを加味しながら、新しい時代へ向けて柔軟に考えていく姿勢を取りたいですね。

中西あと、今後やろうと思っているのは、全席指定・統一料金から金額が変動した場合の、ユーザーの反応のリサーチです。みなさんからどういったリアクションがあるのか見ていきたいと思います。

それはどういうことですか?

中西コンサート会場の使用料は、月曜日と土曜日で倍ぐらい違う料金設定の会場も出てきているのに、チケット代は一緒なんですよ。これは昔から続いていることですけど、これまでの慣習にとらわれないで、曜日ごとに価格を変える時代になってきたんじゃないかと考えています。いきなりは難しいですけど、トライアルを通してユーザーの方がどういう反応をするのか、データ化していきたいと思います。2017年ぐらいからやってみたいですね。

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