ワールドワイドに成功する方法

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vol.37 「犬笛」であれ

「犬笛」とは

 「犬笛」とは、たぶん読者もご存知かと思いますが、犬にしか聞き取れないくらい高い周波数の音を出す笛のことです。人間の耳にはまったく何も聞こえないので、音の出ない笛を吹いているようにしか見えません。しかし、犬は可聴範囲が人間よりずっと広いので、笛の音が大きく、はっきりと聞き取れるのです。
 「犬笛」は比喩としても使われます。「誰にでも見ることはできるけれども、ある特定のグループの人たちだけが聞き取る(感じる)ことのできる物事」を指します。
 わかりやすい例は、バンドTシャツです。道を歩いているとき、自分以外はほとんど誰も知らないか、聞いたこともないようなバンドのTシャツを着ている人とすれ違った経験はないでしょうか? 私は以前、新宿でAnimal CollectiveのバンドTシャツを着ている人を見たことがあります。そのTシャツにはあからさまにバンド名が書いてあったわけではないけれど、私には一目でそれとわかりました。1万人がすれ違ってそのTシャツを見ても、何ひとつ理解できないはずです。いっぽう、私はそれを見た瞬間に、大きくはっきりと聞き取る(感じ取る)ことができました。「この男には、私と何か共通点がある。私と同類だ!」と。
 犬笛の別な例として、見栄っ張りなお金持ちによる時計の選び方があります。普通の人にとっては、お金持ちが身につけている腕時計は「高そう」に見えるでしょう。キラキラしていて、興味を引く精緻な装飾にあふれています。ほかの高価な時計と似ているという単純な理由から、価格は100万円だと予想するかもしれません。いっぽう、腕時計の「目利き」である見栄っ張りなお金持ちは、即座にその時計が年代物で、希少品で、最高級品だと見抜くことができ、値段も1千万円以上だと知っています。何も言わなくとも、すべてお見通しです。門外漢にとっては「かなり裕福そうな人がつけている高級そうな腕時計」が、事情通にとっては「その人が極度の富、嗜好、権力を示している腕時計」になるのです。

「犬笛」であれ

 あなたのバンドは常に「犬笛」であるべきです。自分が提示する音楽的なアイデア、歌詞、イメージ、そして身につける服によって、「あなた(と同類の人々)」と有意義で特別なコミュニケーションを取ることが大事なのです。
 カウボーイは、カントリーミュージックのミュージシャンが身につける格子縞のシャツ、カウボーイハット、ブーツを見て「この人の音楽は私のためのものだ」と理解できます。プレッピー(お坊ちゃん的)なバンドのリードシンガーなら、年代物のラコステのシャツを着れば同類の人々に気づいてもらえるでしょう。ポップパンクバンドなら、筋金入りのファンだけが知っているNADA SURFのカバー曲から始めたらいいかもしれません。
 これらは形こそ違っても、すべて「犬笛」です。もちろん、誰でも同じようにそれを見聞きできるし、なかにはそのようにしてファンになってくれる人もいるかもしれません。しかし、真のメッセージを「とらえた」人たちにとっては、あなたたちはもっともお気に入りのバンドのひとつになるのです。

 リスナーとつながり、ファンの基盤を拡大し、「あなた(と同類の人々)」を見つけ出したいなら、いい曲を書いて大胆に自分たちを宣伝するという当たり前のことに加えて、「あなた」のファンと直接コミュニケーションを取るために「犬笛」をどう使えば良いか考えてみましょう。外の世界に向けて犬笛を吹いて、耳を澄ましてもらうのです。

PROFILE

Benny Rubin

Benny Rubinベニー・ルービン

マーケティングおよびセールスの専門家。日本に断続的に10年近く住み仕事をしている。日本の主要なレーベル、映画会社、ブランド、広告代理店と豊富なマーケティングの仕事経験がある。連絡先は、b@bennyrubin.com

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