ワールドワイドに成功する方法

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vol.36 プロモーション計画〜「どこ」から「誰」へ〜

私の親友、ブレイズは、自分のバンドの新しいEP盤リリースの準備をしています。
 ブレイズは私に手伝ってほしいと依頼してきました。主にプロモーション計画を立ててほしい、ということでした。
 ほとんどの人がプロモーション計画を練ろうとするとき、ある特定の質問から始めます。その質問とは、「Where(どこ)」です。

・「どこ」のソーシャルメディアに載せるのか?
・「どこ」がリリースライブを開催するのか?
・「どこ」にアルバムを売り込むのか?
・「どこ」のブログや雑誌で取り上げてもらうために、自分たちの音楽を送るのか?

これらすべてを考えるのはとても良いことで、確かに「どこ」とこれらをするかの決断は、リリースを成功させるためには非常に重要です。

「Where」から「Who(誰)」へ

しかし、ここでひとつ別の質問を思い浮かべるべきです。その質問は、「どこ」よりもむしろ重要でさえあります。正確に言うなら、「どこ」の質問すべてに当てはまります。その質問とは、「Who(誰)」です。

・「誰」が現在、ファンなのか?
・「誰」が新しいファンになってくれる可能性があるか?
・「誰」があなたのバンドのことを自然に好いてくれるのか?
・「誰」が情報拡散に協力してくれるくらい、あなたのバンドのことが好きなのか?

音楽は――少なくともブレイズがやっているようなロックバンドが作る音楽は、結局、人間によって生まれるものです。神経学者のオリバー・サックス医師は、彼のベストセラー本『音楽嗜好症:脳神経科医と音楽に憑かれた人々(Musicophilia:Tales of Music and the Brain』で「音楽は人間であることの一部だ(Music is part of being human.)」と記しています。
 ブレイズのEP盤が成功するかどうかのカギは、人間が握っています。「誰」の質問から始めることで、彼は「誰」を「どこ」で見つけるか、逆方向に考え出して進めていけるのです。

「誰」の難しいところ

しかしながら、この「誰」は見かけ以上に答えるのが難しい質問です。
 ひとつに、私が話をするほとんどのアーティストは、私が「あなたたちの音楽は誰に向けたものか?」と聞くと、「みんなに」と答えます。なぜアーティストがそう思うのかがわかるいっぽうで(そう思うことは何も悪いことではありません)、プロモーション計画の出発点としてターゲットを絞るうえでは役に立ちません。「ビリヤードのポケットにもっとも入りそうな球のショットを狙う」助けにはならないのです。
 2つめには、アーティストはうわべよりも、もっと深いレベルで物事を見ることを強いられます。たとえば、アーティストが彼らのライブショーのオーディエンスを思い浮かべ、「誰」とは「女子高生」だったり、あるいは彼らみたいな「30代なかばの男」と答えるかもしれません。
 しかし、彼らは「女子高生」のEメールリストを持っていなかったり、私が知るかぎりプロモーションが可能な「30代なかばの男性」を独占的に引きつけるような雑誌はなかったりもします。彼らは、もっと深くを見なければいけないのです。

「誰」を導き出す方法

「自分たちの特定のファンが、ファンになったきっかけは何だったのか?」を聞くところから始めるのもいいかもしれません。そして、ファンの感情には何か共通点があるのか(例:内気、賢い、パーティ好き、etc.)、共通してほかに好きなバンドがあるのか(例:自分たちのファンの多くはレッド・ホット・チリ・ペッパーズが大好き、etc.)、などを考察していきます。
 そうすると、そこから、「どこ」でより多くの「誰」を見つけられるか判断できるようになるし、先にあげたほかの「どこ」の質問すべてにも答えられます。いったん「誰」を決めたら、そこからプロモーション計画の詳細を詰めていくことができます。

突き詰めると、「どこ」や「誰」よりもさらに、「なぜ」も考慮すべき質問です。しかし音楽に関しては、作るのも楽しむのも、その答えはシンプルに「音楽は人間であることの一部だ」でいいのです。それ以上の深い分析は必要ないのかもしれません。

PROFILE

Benny Rubin

Benny Rubinベニー・ルービン

マーケティングおよびセールスの専門家。日本に断続的に10年近く住み仕事をしている。日本の主要なレーベル、映画会社、ブランド、広告代理店と豊富なマーケティングの仕事経験がある。連絡先は、b@bennyrubin.com

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