特集記事

2016.09.13

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対談!徹底追求第2弾!!

「チケット転売問題」について考える
TAKUMAさん(10-FEET)× 野村達矢さん(一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事、株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション常務取締役執行役員)

本誌75号に続いて、「チケット転売問題」について考える特集第2弾。今回は、主宰フェス“京都大作戦”での勇気ある転売チケット対策が話題になった10-FEETのTAKUMAさんをお迎えし、音制連の野村理事と、この問題についての対談をしていただいた。

text:柴 那典 photo:外林健太(Rim)

野村達矢さん、TAKUMAさん

チケット転売は、公式なものではなく、不正なものであるということを知ってもらいたい。

“京都大作戦”の転売対策

今、チケット転売サイトの存在が大きく問題視されています。チケットキャンプのような大手企業が運営するサイトが認知度を高めたことで転売目的の購入が増えるなどの弊害が出てきていますが、現在はどのような状況なのでしょうか。

野村チケットの転売問題が急激に大きくなってきたのは、チケットキャンプが大量にテレビCMを打った去年の夏くらいからのことです。転売目的で購入した高額なチケットが出品され、取り引きされるようになり、目にあまるような状況になってきた。この問題に取り組まなきゃいけないということで、サイトを運営している人たちとも個別に会って話してもいます。ただ、残念ながら、日本の法律でいうと、チケット転売、ダフ屋行為に関して、ネット上では取り締まれないんですね。罰則にはならないし違法でもない。条例や法律が追いついていないので、それを改正することもしていかなければならない。そんななかで世論を盛り上げて、ユーザーの意識も高めたいと思っています。チケット転売自体が、僕らが認めている公式なものではなく、不正なものであるということを知ってもらいたい。8月23日にはそういうことを訴える新聞広告も打ちました(下のコラム記事参照)。そういうことを、音楽業界全体の運動として取り組んでいる最中です。

“京都大作戦”は10-FEETが主宰し運営にもかかわってきたフェスですが、今回、どんな形で転売対策をとったんでしょうか?

松川マネージャーその件については、サウンドクリエーター(“京都大作戦”を制作しているイベントプロモーター)の方とメンバーと話して決めました。まず、大量のチケットの写真がツイッターにアップされて、「これはどういうことですか?」ってお客さんから問い合わせが来たんです。調べたら、詳細はすべてお伝えすることはできないんですが、営利目的の転売業者と判断できました。去年から“京都大作戦”はICチケットというシステムを取っているので、営利目的の転売のものと特定できるチケットは入場のときに入れなくするようにすることができる。そうしようと思うんですけどどうですか?と話しました。

結果として、転売サイトで購入されたそのチケットは無効となったわけですね。た だ、それを持って来場したお客さんは、その場で当日券を購入すれば入場できるという対応になった。これはどういう決断だったんでしょう?

松川イベンターさんと話したときに、単に突っぱねることもできます、と言われて。でも、通常のイベントと違って、“京都大作戦”はアーティストが旗を振ってるイベントなんで、そのイメージは10-FEETに対して跳ね返ってくるわけです。それに、メンバーも突っぱねるだけがいいとは思わないと話していたので、どうするかを考えました。で、その入場列とは別に専用の受付を設けて、1人1人に「あなたのやったことはこういうことです」と、なぜダメなことだったのかを説明して、ご理解いただいた方には、このチケットは無効なんで、新たにチケットを当日券で買い直せば入れますという説明をしました。

野村なるほど。今回、実は非常に的確な対応だったんですね。というのは、チケットキャンプで買ったチケットって、そのライブに入場できなかったら取り引きが成立しないはずなんです。つまり、転売した側にはお金が入らないし、買った側も、その日に当日券を買った料金だけを負担しているはずなんですね。そういうことも含めて素晴らしい対応だったと思います。それでも、ファンが入れなくなるという決断に勇気は必要だったと思いますし、ここで起きた現実を、もっといろんな人に知ってもらいたいなって。だから今日お話させてもらおうと思ったんです。

TAKUMAそうですね………。でも、難しいところがあるのもわかっているんです。というのは、チケット転売サイトについて、みんなが「それはおかしいだろう」って矢面に立って声にするわけでもなく、「ダメなんだけど使っちゃうよね」みたいな雰囲気もある。その理由もわかるんです。1人1人と話ができればいいんですけど、メディアに載った時点で、いろんな人たちのいろんな意見が返ってきますから。そのへんは難しい時代になったと思います。情報の広がるスピードは速くなったんですけど、比例して誤解も多くなったと感じるので。お客さんの気持ちを想像したうえでどういう対応がいいのかを考えて、みんなにも納得してもらえて、外から見ている人にも「いいじゃないか」と思ってもらえるような方法をとっていくためには、1文字1文字に過敏になるくらい考えていかなきゃいけないし、と勇気と覚悟がないとできなかったと思うことはあります。

ICチケットについて

TAKUMAさん

お客さんの気持ちを想像したうえで、みんなにも納得してもらえるような方法を。-TAKUMA-

“京都大作戦”は、去年からICチケットを導入しています。そのことで対応はどう変わったんでしょうか?

TAKUMA単純に会場での利便性は増えたと思います。チケットのなかに個人情報が入っていて、希望する人はそこにクレジットカードに情報をひもづけて、会場でグッズやフードを買えたりする。それに、明らかな営利目的の転売をチェックすることができて、それ以外の人には今までのチケットにくらべてもスムーズに入ってもらうことができた。そういう意味では、一歩進んだ感じはします。入口で厳重にチェックするのって、渋滞が発生してスムーズに会場に入れないということもあったりして、早い話が、あんまりいい気持ちはしないですよね。そういうところに不快な思いをする人もいるので。

野村この先、基本的にはスマホを使った電子チケットに進化していくはずだと思います。そうすれば、スマホには個人情報が蓄えられているので、正式なトレードと不正なトレードとの見分けがつけやすくなる。インフラの整備が至っていない現状では紙チケットと並行せざるを得ないけれど、電子チケット化によってセキュリティはしっかりするし、転売も防げると思うので、それを促進させたいです。

TAKUMAそこに対して、こういう問題提起そのものが結びついていくと思いますし、僕らの“京都大作戦”のひとつひとつの判断も結びついていくと思います。

コンサートの値付けもメッセージ

野村達矢さん

コンサートの値付けって、メッセージだと思うんですね。自分たちに、その金額はどんなに大事なのか。-野村達矢-

野村あと、もうひとつ聞きたいのは、コンサートの値付けについて。

“京都大作戦”は前売りで1日券が5,980円、2日券が11,500円でした(ともに税別)。8月の“アンテナラスト”ワンマンツアーでは前売り3,200円(税別)に設定されています。

野村僕はコンサートの値付けって、メッセージだと思うんですね。僕たちのコンサートはこの値段で観てほしいという。自分たちのコンサートの値段をどう設定していて、その金額はどんなに大事なのか、そこに自分たちなりの思いはありますか?

TAKUMAそのへんは、評価されないくらいアホやと思います。バンドを結成したときから、なるべく安い値段で若い子たちが来れるようにってところから発展してないです。

野村でも、それがメッセージじゃないですか。それが意図的ではない値段に設定されたときに憤りを感じるんじゃないかなって。

TAKUMAまさに今おっしゃった通りです。若い中高生や、子供がいて生活費があってライブになかなか来れない人が、なんとかお金を貯めて大事な休みにライブに来ている。そういう人たちのことを完全に無視した行為には憤りを感じるということは、SNSでも日々発信してます。やっぱりチケット代にはこだわっているんです。値段を上げれば上げるほど収入が増えるわけで、やろうと思ったらやれることをやらずに削ってるということですから。でも、そうやって売っているものを転売するというのは、そのアーティスト自身を売り物にしてるということになるので。

野村そうですね。そういうことをもっと知ってほしいと思うし、『音楽主義』でもフィーチュアしていきたいと思っています。

意見広告

100組を超えるアーティストらが署名!

日本音楽制作者連盟、日本音楽事業者協会、コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会は、8月23日、100組を超える国内アーティスト、24の国内音楽イベントのみなさまに名を連ねていただき、「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」とうたった意見広告を、全国紙(読売新聞・朝日新聞の関東圏・関西圏・中京圏)に打ちました。また、合わせてオフィシャルサイト「http://www.tenbai-no.jp」を立ち上げました。『音楽主義』も、高額転売に対しては今後も問題提起をしていきたいと思っています。

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