ワールドワイドに成功する方法

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vol.35 「今の仕事をやめるな」

「今の仕事をやめるな(Don't quit your day job)」というのは、アメリカ人が使う皮肉を込めた表現です。人が、特にアーティストやミュージシャンがものすごくへたくそなのを観たり聴いたりしたときに使います。基本的には「うわー、あんた、すごくへたくそだから、こっちでは食っていけないね」というような無礼な表現です。この冊子の読者には音楽でメシを食っている人も多いでしょうから、本当に今の仕事をやめろって意味ではないですからね!

音楽とほかの仕事を両立させる

つい先日、バンドでツアー中の友達、ベンが僕を訪ねてきました。ベンは昔、僕の生徒でした。僕が高校生のときベンは中学生で、僕はベンにベースを教えていました。彼は昔はベースと同じくらい背が低くて、ワイルドなヘアスタイルでした。今では立派に成長していて、ベースプレイヤーとしても僕よりずっと成功しています。彼のバンドはファンベースで人気が出て、名の知れたマネージメント会社と最近契約したばかりで、マスコミからも注目を浴びています。ベンはさらに、ほかのコンサートでもベースを弾いています。彼はプロのオーケストラで(もちろん縦型の)コントラバスを弾いていて、ほかのコンサートでも演奏しているのです。ただ、ここが肝心なのです。彼にとってはまだ“今の仕事”ではないのです。
ベンはセラピストになるため、勉強しながらフルタイムでクリニックで働いています。彼はプロのバンドを通じて、またはまっとうな職業を通して世界を見ています。この2種類の職業が真っ向から対立するときもあるでしょうけれども、とりあえず今は、どうやったら両立できるかを確かめています。“やめやすい”パートタイムの仕事と、音楽の仕事とのバランスを取るのではなく、彼は全力で両立させているのです。
また、エリックはベンのバンド仲間(キーボード)で、広告代理店で働いています。彼もマーケティングのプロとして、またプロのミュージシャンとして世界を見ています。もしバンドが盛り上がってきたら、1年か2年休みを取って、音楽に集中することも可能なのですが、彼はマーケティングの仕事をやめることはありません。もし、音楽以外の職業をがんばらなかったら、たくさんの人がそうであるように、彼は“ただの売れないバンドの人”におちいるとわかっているからです。なので、ベンのように彼も両方の仕事を全力でがんばっています。

今の仕事をやめないのが得策

両立のコツは、どんな職業を選んだかにもよると思います。ベンもエリックも“専門的”な職業を選びました。どちらも高収入でありながら、少しは自由がききます。ベンは自分の空いている時間に患者の予約を入れられるし、エリックはレコーディング、ツアー、マスコミのインタビューの期間を避けてプロジェクトができるよう心掛けています。また、高収入ゆえに“休暇”を少し増やしても破産することはありません。もちろん、上司や患者や同僚を納得させるためには一生懸命働かなくてはいけません。例外をリクエストするのは簡単ではないですが、もちろんできないことではありません。
基本的に、音楽を本業として全身全霊でそこに集中している間、生活のためにアルバイトをしても何の問題もありません。特に若いうちは月々の出費も少ないでしょうから。ただ、僕がひとつだけ警告するのは、“この仕事は、音楽で「売れる」までしかしない”という考え。この考え方はとても危険です。なぜなら、あなたの“経済的自由”と“人生の次の段階”を自分でコントロールすることがほぼできなくなるでしょうから。“安定した生き方”と並行して音楽のキャリアを続けたほうが、よほど合理的で、長い人生においてはストレスが少なくて済むと思います。
もちろん、音楽で本当に人気が出たら、いつでも“今の仕事をやめる”ことができるし、もっといいのは、“今の仕事をちょっと休む”こと。それなら、戻りたくなったらいつでもすぐに戻ることができるからです。

PROFILE

Benny Rubin

Benny Rubinベニー・ルービン

マーケティングおよびセールスの専門家。日本に断続的に10年近く住み仕事をしている。日本の主要なレーベル、映画会社、ブランド、広告代理店と豊富なマーケティングの仕事経験がある。連絡先は、b@bennyrubin.com

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