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2016.05.13

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special interview 直井卓俊さん 株式会社スポッテッドプロダクションズ代表 MOOSIC LAB主宰

special interview 直井卓俊さん株式会社スポッテッドプロダクションズ代表 MOOSIC LAB主宰

新進気鋭の映画監督とアーティストを掛け合わせた映画祭「MOOSIC LAB」。これまで大森靖子やBiS、ふぇのたすなどを輩出した同プロジェクトを主宰する、直井さんを直撃した。

text:吉田幸司 pic:高橋優也

100年後に誰かの心を動かす。
歌ってすごいなって、映画で思わせてくれました。

監督が音楽を意識することで何かが変わるっていうのがあった

MOOSIC LABは気鋭の映画監督とアーティストがコラボする映画祭ですよね。

企画コンセプト自体が監督×アーティストっていう。造語そのままでMUSICとMO VIE、あとラボ=実験室ってことで、普段の映画作りではできないことをやってみようってやりだしたのがきっかけですね。

今までで特に思い出深い作品は?

何個かありますけど、『いいにおいのする映画』(2015年)は感慨深いですね。酒井麻衣監督が持ってきた照明技師を目指すヒロインのダークファンタジーっていう企画が面白かったのでVampilliaを紹介したところ、監督が惚れ込んで構想ができて、映画を作るために脱サラして上京してきちゃって。なにもそこまで! 責任重大だ…と思ってたんですけど、結果は予想を超える優秀なMOOSIC作品になって。『おんなのこきらい』(2014年)の監督の加藤綾佳さんも、この企画があったから“ふぇのたす”を使って物語を考えて、それまでと毛色が違う映画ができたり――つまり2人とも音楽を意識することで何かが変わる化学反応があったんです。2人とも今商業映画の企画を進めていたり、メジャーからMV監督のオファーが来たり、MOOSIC LABで何かをつかんでくれたのがうれしかったです。

まさにケミストリーですね。

あとBiSの『アイドル・イズ・デッド』(2012年)。“確かに私たち可愛くないかもしれないけど、アイドルですって胸張ってやらなきゃ始まらないでしょ”っていうパンク精神は、今のアイドルのスタンダードになってる気がします。『ダンスナンバー 時をかける少女』(2013年)も思い出深いですね。ロロっていう劇団の三浦(直之)くんが撮った映画で。演劇の人が映画を撮る難しさってあるんですけど、設定が音楽映画の究極だなと思ったんですよ。好きな人に向かってずっとラブソングを歌ってる男がいて、だけど全然響かない。それがある日時空を超えて、100年後の女子高生のイヤホンに入ってきて「これは私のことだ、運命の人だ!」って。それは音楽に限らないかもしれないけど、100年後に誰かの心を動かすってすごいことだなって思わせてくれました。

AKB48に興味なかったのに映画を観てすごいなと思った

では、直井さんの個人的なおすすめを。

『ラスト・ワルツ』(1978年)、ザ・バンドの。僕、あれすごい好きなんですよね。

コンサート映画の元祖みたいな。

そうそう。単なるコンサート記録映像に 演出がすごく入ってるんですよね。時代への愛を感じる。何回も観ました。『あの頃ペニー・レインと』(2000年)も好きですね。若さ、ほろ苦さ、そこには必ず音楽があって…という青春映画の決定版。サントラでは『ライフ・アクアティック』(2004年)のサントラが僕、一番好きなんですよ。シガー・ロスとかセウ・ジョルジとかいろいろ使ってて。あとエンディングでデヴィッド・ボウイの「QUEEN BITCH」がかかるところがたまんないんですよね。それと、これは音楽映画じゃないですけど、逆に音楽を排してるのがすごいなっていうのが『家族ゲーム』(1983年)。森田芳光監督の。一回も音楽を鳴らさない。音楽を聴いてるシーンも無音なんですよ。逆に音への意識がすごい研ぎ澄まされるっていう。

逆にそれこそ“音楽映画”と言えるかも。

そうですね。あとDOCUMENTARY of AK B48の2作目『少女たちは傷つきながら、夢を見る』(2011年)。傑作ですね。一番すごいのが西武ドームの伝説のライブの舞台裏。バタバタ倒れていくんですよ、過呼吸と脱水症状で。「誰々が倒れちゃいました! 酸素ボンベ!」って、もう野戦病院のようで。そして震災後で世界は大変なことになってる。焼け野原のような場所を、アイドルたちを乗せたバスが進む感じが、今の時代を象徴してる気がしました。世界がどうなろうとも客の前では絶対完璧なものを見せるっていうプロフェッショナルさとか…なんかひとつの国家を追ったドキュメンタリーみたいなスケールを感じたんですよね。それまで僕、AKB48に興味なかったのに、映画を観てすごいなと思ってしまって。総選挙とかも気にするようになっちゃいましたからね(笑)。

映画の魅力とは何でしょう?

劇映画って音楽もしかり、演劇というかお芝居も入ってるし、絵でも何でも取り込める。一番やっかいな芸術だと思うんです。そういった総合芸術感、そしてそれが半永久的に残って、受け継がれていくというのが魅力ですかね。

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