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2016.05.13

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special interview マキタスポーツさん お笑い芸人/ミュージシャン/俳優

special interview マキタスポーツさん
お笑い芸人/ミュージシャン/俳優

マルチに活躍するマキタスポーツさんがおすすめするのは、ロックンロールの神様のやんちゃなドキュメンタリーや、あの名作など。ご自身の主演映画もぜひチェックを!

text:イノマー

浮かばれない自分が元気づけられた。
音楽の力で何か面白いこと
やってやろうぜ、みたいな。

ミュージシャンより圧倒的に目が恐いのは芸人なんですよね

取材前におすすめの“音楽映画”をあげていただいてるんで、そのへんの話を。

何をあげてましたっけ(笑)? その日の気分で変わるんで。何からいきます?

じゃあ、チャック・ベリーの『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』(1987年)。

伝説のおじさんの映画ですけど。ドキュメンタリーなんで。

チャック・ベリーの60才の誕生日を記念した豪華ゲスト出演のイベント模様。

つかみどころのないじじいだな、って。トリックスターというところなんですかね? ただもんじゃねーというか、ややこしい。ま、とんでもない目をしてるというか。人を信用してないというか。

あ、それわかります、わかります!

目に光が宿ってないというか。地獄を知っているといえば知っているのかもしれないし。いろいろ辛酸をなめてきたんだと思うんですが。僕、ミュージシャンも芸人もつきあいがあるじゃないですか?

幅広いですもんね。

ミュージシャンより圧倒的に目が恐いのは芸人なんですよね。僕はそういう目を“石目”って呼んでるんですよ。ミュージシャンで愛を切々と歌える人は“星目”だと思うんです。目が輝いててね。芸人とかって、ニコニコしながらみなさんを楽しませるっていう道化の役の人ほど実は目の奥底には光がないというか、恐い目つきをしている。人斬りみたいな。

目は口ほどに、って言いますからね。

で、“石目”と“星目”は同等なんですけど、それを超えると“神目”になるんですよ。チャック・ベリーのことでいうと、“石目”も“星目”も超えた“神目”だと思うんですよね。

映画のなかで好きなシーンって?

キース・リチャーズにいきなりキーを変えろ、って言うんですよ。チャック・ベリーはわざと言ってるんですよね。困らせて楽しんでる。

でも、キースは拒否する名シーン。

ロックとかっていう言葉でくくれない生き物たちがフィルムに収められてるのが『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』じゃないかなって思う。

音楽って、角度が変わると全然変化して伝わってる

はい。で、お次は『ザ・コミットメンツ』(1991年)。

アラン・パーカー監督作で。アイルランドが舞台になってる映画って、たいてい暗いんですよね。映画のなかで印象的な台詞で、「アイルランド人はヨーロッパのなかの黒人だ」みたいなフレーズがあって。だから、ソウルを歌うんですよ。それがグッときましたね。この映画を観た当時、僕は大学生で20か21才くらいだったと思うんですけど、東京に出てきて。バブルの時期だったんですけど、時代に乗れてなくて。引きこもり生活をしてたりして。そんな浮かばれない自分と『ザ・コミットメンツ』が…。

シンクロしたと?

そう。コミットしなきゃ!と一瞬、元気づけられた思い出がある。歴史的な背景とか時代的なこととかわからなかったけど、暗い映像のなかにある音楽の力で何か面白いことやってやろうぜ、みたいな感じがすごい良かったですね。

わかりました。そして、『シュガーマン 奇跡に愛された男』(2012年)。

ロドリゲスっていう歌手がいたんですけど、アメリカでデビューしたヒスパニック系の吟遊詩人なんです。ボブ・ディランの二番煎じ、三番煎じみたいな。で、アメリカでまったく売れなかった。レコードは廃盤となり、ロドリゲスは行方不明になり、どこかでのたれ死んだんじゃないかと。

ドキュメンタリー映画なんですね。

そう。ところが、当時南アフリカでアパルトヘイトがあったから、アパルトヘイトのシンボル的な曲になるんですよ。自由を象徴するような歌だと解釈されて。これってすごい興味深いな〜と思って。

というのは?

音楽って必ず意味が乗っかってるし、角度や国や言語が変わったりすると全然変化して伝わってるはずですよね。アメリカでは売れなかったけれど、南アフリカでは絶大なる支持を受けた…ロックの歴史やパンクの歴史も日本の音楽界のなかでも次々に意味が更新されていくわけだし。

サウンドやメロディだけではない、と。

音楽の背景にある意味論というのをすごく感じた映画でしたね。

チャック・ベリーでいうと、“石目”も“星目”も
超えた“神目”だと思うんですよね。。

『モテキ』はすごく優秀な音楽映画だと思います

そして邦画の『モテキ』(2011年)。

『モテキ』はね、言ってみればちょっとしたミュージカルじゃないですか? 日本人がちゃんとしたミュージカルをやるのってきついですよね。テレビとかで劇場のミュージカル中継を観せられる説得力のなさってすごいじゃないですか。それは映画でも難しいですよね。

温度差がハンパない感じ。でも、『モテキ』の挿入歌にはそれがない。

大根仁さん(監督)という日本のポップカルチャーをちゃんと咀嚼した人がJ-POP を、物語の邪魔をせずにまとめてくれたんじゃないかなって思うんですよね。しかも、ポップに。

リズム感がありますよね。

全編ミュージッククリップ的だし、音楽的な設計が施されたすごく優秀な音楽映画だと思いますけどね。

で、最後に『ブルース・ブラザース』(1980年)。

音楽映画の金字塔みたいなものじゃないですか? 日本でやるのは難しい。あのファンタジー。『ブルース・ブラザース』的な映画を作ろうよ、ってのは何度もあったと思うんですけど、絶対に失敗するんですよ。

刑務所を出所してバンドをやる物語。

日本だったら、『トラック野郎』のほうがいいんですよ。『トラック野郎』の質感のなかでミュージカル性があるものだったらわかるんですけど。

刑務所から出てきて演歌歌手みたいな。

そうなっちゃいますよね。だから、そういった意味で『モテキ』っていうのは良い映画だと思うんですよ。モテない、イケてない、ネットに頼って生活してるようなどうしょうもないヤツが主人公のほうが今の日本ではリアリティがあるし。

わかりやすくて身近ですよね。

不良で悪童でどうしようもないヤツが出所してムチャクチャやりつしていくって、日本では到底、あり得ないわけじゃないですか。

映画『ブルース・ブラザース』の最大の魅力はどこにあると思います?

痛快というか、とにかく、ブルース・ブラザースっていうユニットがカッコいいですよね。初めて観たのは中学に入ったばかりの頃で、レイ・チャールズもアレサ・フランクリンも知らなかったし。レジェンド的なミュージシャンが役者として登場してることにありがたい、なんて思って観てはいなかったんですよ。やれやれ! やっちまえ!的な感じが良かったんでしょうね。

夢みたいなことばかりしてちゃいけないんじゃないか?って

ハチャメチャな音楽映画ですもんね。

音楽映画…『ラスト・ワルツ』(1978年)もあげようと思ったんですけどね。

1976年に行われた、ザ・バンドの解散ライブドキュメント。

友達に教えてもらってザ・バンドがカッコいいな、って思ったんですよ。ジャケットを見ていつの時代の人なんだろう?って思いましたけど。

ザ・バンドのアルバムジャケットって渋すぎますもんね。

全員がアメリカ人だと思ったら1人以外はカナダ人だったりして。ボブ・ディランはよくわからなかったんですけど。

不思議な関係ですよね。ボブ・ディランはザ・バンドをバックに歌ってるときが一番輝いてる。いきなりですけど、マキタさんが音楽映画を撮るとしたら?

そうですねえ…ドキュメンタリーってことなのかな? あの、『マキタスポーツの上京物語』(2009年)っていうDVDを出してるんですけど、全然売れてないんで、それを宣伝させてください(笑)。音楽映画として。

どうぞ、どうぞ。

生まれ故郷を19才で飛び出して東京に着いたのが28才っていう。何してたんだよ?っていう話なんです。

面白そうですね〜〜。

嘘ばっかりついてる映画なんですけど。でも、合間合間で僕の実人生とシンクロしてて。実際に僕と自分の妻がガチのケンカしてる映像とか出てくるんですよ。それを僕が妻には黙って撮ってるんです。僕が生きていくなかで子供ができたりして、夢みたいなことばかりしてちゃいけないんじゃないか?って思うようになって…みたいな。

ドキュメンタリーチックな映画。

虚実が混ざってる映画なんです。あるDVDコレクターの方が寸評で言ってたらしいんですけど、「これは何とも言えない作品だ」って。どこからどこまでが嘘なのか。

でも、ジャンルでいうと。

音楽映画っちゃ、音楽映画なんです!

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