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2016.05.13

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special interview LiLiCoさん 映画コメンテーター/歌手

special interview LiLiCoさん
映画コメンテーター/歌手

映画コメンテーターとしてテレビや雑誌などで大活躍しているLiLiCoさん。実力派歌手でもあるLiLiCoさんだけに、“歌”の力が強い“音楽映画”をセレクトしてくださいました。

text:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

“感動する物語だから行ってみましょう!”
ではなく、“この歌!”っていう
存在感の強さを感じてほしいですね。

『グリース』のサントラは今でも聴いてます。音楽が本当素晴らしい

LiLiCoさんおすすめの“音楽映画”を教えてください。

もともと自分は歌手から始まったんです。なので、音楽は大好きなんですよ。このテーマをいただいて最初に思った作品は、1978年のミュージカル映画『グリース』ですね。

1979年、第51回アカデミー賞で「Hopelessly Devoted to You」が歌曲賞にノミネートされた作品ですね。

『グリース』のサントラは今でも聴いてますよ。衝撃的な音楽映画でした。当時、『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)派と『グリース』派で分かれていたんですよ。世間的には『サタデー・ナイト・フィーバー』のほうがカッコいいと言われてましたけどね。今考えると、『グリース』でジョン・トラボルタとオリビア・ニュートン・ジョンの2人が高校生を演じていたのは年齢的に無理があったかもしれないけど(笑)。でも、あの映画は音楽が本当素晴らしくて、音楽映画を語るなら『グリース』は絶対に欠かせません。最後の遊園地で歌うシーンなんて天才的な演出ですよね。ちなみに、意地悪でタフな女性が歌う「Look At Me,I'm Sandra Dee」っていう曲が私は一番好きなんです。よく歌っていましたね。

確かに『グリース』のサントラは名盤ですよね。ちなみに、ここ数年、良質なドキュメンタリー的な音楽映画が増えてきたと思いますが、いかがですか?

3年前くらいが一番良かったですね。日本で2013年に公開された『シュガーマン 奇跡に愛された男』とか、あの頃立て続けに良いドキュメンタリーが続いたんですよ。アメリカ合衆国の歌手“シュガーマン”ことロドリゲスが、知らないうちに遠く離れた南アフリカ共和国で反アパルトヘイト闘争のシンボルとして爆発的にヒットしていたという。たとえば彼が恵まれた生活をしていたらあんな歌は生まれなかったかもしれない。そんな生き様なんですよね。

1曲で人生のすべてが変わる『チョコレートドーナツ』

それこそLiLiCoさんが映画コメンテーターとして出演しているテレビ番組『王様のブランチ』で紹介されていた、映画『チョコレートドーナツ』(2012年)も音楽が重要な作品ですよね?

『チョコレートドーナツ』は今回紹介したかった作品ですね。主人公が歌手を夢見ながら、ショーパブで働いている設定なんです。劇中で、ボブ・ディランの「I Shall Be Released」を歌っているのですが、アラン・カミングが歌うとこうも違うのかと本当にしびれましたね。これはもはや歌というよりも魂の叫びに感じました。私も影響を受けていて、必ず自分のライブで歌っています。監督のトラヴィス・ファインに、私が歌ってる動画を観てもらえたんですよ。「すごく感動した!」と連絡をいただけてうれしかったですね。音楽を好きな方の心を揺さぶる映画だと思います。

『チョコレートドーナツ』は、最初は小規模のミニシアター系での単館スタートながら、『王様のブランチ』でLiLiCoさんが紹介されてから爆発的に広がりましたね。

最初に観たときは腰が抜けて立ち上がれなかったほど魂が震えました。単館から、140館を超える拡大公開となった映画なんです。1曲で人生のすべてが変わるという意味で、『チョコレートドーナツ』という映画はぜひ取り上げたかったんですよ。

映画は、人生に役立つヒントを運んでくれる
エンタテインメントだと思っています。

『歓びを歌にのせて』の劇中歌で人生が変わりました

『チョコレートドーナツ』は、1970年代のアメリカでの実話をもとに、育児放棄された子供と家族のように暮らすゲイカップルの愛情を描いたヒューマンドラマに泣きました。続いて、そんなLiLiCoさんの生涯ナンバー1作品を教えてください。

スウェーデンの映画『歓びを歌にのせて』(2004年)ですね。劇中で「ガブリエラの歌」という曲がありまして、これほど強いメッセージ性とメロディがある曲をほかに知りません。それをヘレン・ヒョホルムというスウェーデンの国民的歌手が歌っているんですね。この歌が素晴らしいんです。こんな曲はなかなか生まれないですね。

どんなシーンで流れるんですか?

旦那にDVで殴られて、でも子供が2人いるから、仕方なく一緒に暮らしている生活なんです。唯一コーラス隊で歌を練習しているときだけが幸せなんですよ。そこで“人生は自分だけのものなんだよ”“旦那さんに気を使わなくていいんだよ”というメッセージを指揮者が彼女のために書いてくれるんです。それを歌いながら強くなっていくという物語。あの歌で人生が変わりましたね。

音楽で救われたのですね。

本当に力強いバラードなんです。そして、歌の素晴らしさが天才的なんですよ。

映画『歓びを歌にのせて』との出会いのきっかけは?

ちょうど映画コメンテーターをやって8年目くらいの頃に、「ぜひ注目してください!」とか、どうしても同じような言葉ばかり使ってしまって、語彙がなくて悩んでいた時期があったんです。どうやって人様が生み出した作品を魅力的に紹介していけばいいんだろう?って。当時、いろんなことを考えていました。そんな、自分らしさを失っていた時期に出会えた映画なんです。

映画コメンテーターが、生涯ベスト1作品を断言するってリスキーですよね?

そうなんです。でも、この映画がベスト1だと断言したいんです。完璧な映画だと思っています。「映画ってLiLiCoさんにとってどんな存在ですか?」って、よく取材で聞かれるんですけど、私にとって映画は今は仕事なんですよ。映画っていうワードが出てこない日はないんです。もちろん、暇つぶしで映画を観ている方もいらっしゃると思います。でも、私にとっては仕事でありながら人生に役立つヒントを運んでくれるエンタテインメントだと思っています。でも、どうやって映画を好きになるかなんてどうでもいいんです。主役が好き、音楽が好きとか、きっかけなんて何でもいいと思っています。どんな映画を観ても、人生で成功するこだわり、そんなヒントが見つかると思っています。

『歓びを歌にのせて』という映画を観てみたくなりますね。

音楽映画を観ていて思うのは、日本は歌がうまい歌手がなかなか売れない国なんですよ。それこそ、映画『ドリームガールズ』(2006年)はミュージカル映画として音楽が完璧なので観てほしいですね。ジェニファー・ハドソンをキャスティングしたのもすごい。アメリカで人気のオーディション番組『アメリカンアイドル』では上位には入れなかったけど、人って成長するんだなって思いました。やっぱり本物を広めないとダメですよね。

やっぱり映画監督は音楽にこだわりがあるものなんです

映画でいうと『戦場のピアニスト』『シャイン』など、いわゆるアカデミー賞で人気の音楽映画作品をどう思っていますか?

私にとっての音楽映画は、“この素晴らしい音楽聴いてくださいよ!”ってものではないと思っているんです。何て言うか、“感動する物語だから行ってみましょう!”ではなく、“この歌!”っていう存在感の強さを感じてほしいんですね。

派手すぎず、押し売り感のない感動ってことですね。それをふまえて、最近のおすすめの音楽映画を教えてください。

最近はちょっとないかな…。やっぱり『シュガーマン 奇跡に愛された男』『チョコレートドーナツ』がおすすめです。すぐにサントラ買いに行きましたもん。

LiLiCoさんにとって音楽を感じられる映画というと『歓びを歌にのせて』が、やっぱり強そうですね。

それに限りますよ。ちなみに、映画でいうラブコメ作品って好き嫌いあるかもしれませんが、流行っているいろんな音楽が詰め込まれているんですよ。ハッピーなオープニングだと映画もハッピーってことなんです。観てもらうために“つかみ”が大事なんですよ。でも、せっかくならエンドロールにかかるだけじゃないってほうがいいかな。劇中でも意味を持って流れてほしいなと。

ちなみに、LiLiCoさんが歌手を目指すきっかけになった映画ってありますか?

私は『幻想のパリ』って映画の主題歌でデビューしました。映画音楽って、総合的なものだから一生残るんですよね。

そういえば、2012年にリリースされた映画音楽をコンピレーションしたCDアルバム『LiLiCo Loves MOVIE HIT SONGS』に映画『フラッシュダンス』の「ホワット・ア・フィーリング」が収録されていましたよね?

『フラッシュダンス』(1983年)は好きですよ。あの時代であのカッコ良さ。あの歌を恵比寿のバーで歌ったらタランティーノが水を投げてくれました(笑)。

(笑)。すごい経験ですね。ちなみに最近では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の爆音上映会も話題でした。

カッコいいよね。私だったら、アカデミー賞をあの車に乗っている派手なギタリストにあげたいです(笑)。音楽のつまらない映画ってなかなかないですよね。やっぱり映画監督は音楽にこだわりがあるものなんですよ。

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