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2016.03.09

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INTERVIEW 04 J-WAVE(81・3FM)松尾健司さん

INTERVIEW 04 J-WAVE(81・3FM)松尾健司さん [株式会社J-WAVE 編成局次長兼制作部長]

「J-POP」という言葉の生みの親でもあるJ-WAVE。1988年の開局以来、時代をリードしてきたFM局だが、現在は会員向けサービス「J-me」に力を入れながら、「J-WAVEファン」との絆をよりいっそう深めている。

text:吉田幸司 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

ナビゲーターが「あなた」って呼びかけて、
そこで生まれる絆がラジオのストロングポイント。

「みんなに届くもの」。そういうことはいったん忘れるべき

最近、ラジオに若者が戻ってきたという話をよく耳にします。

ラジコが普及してきました。スマホでラジオを聴けるようになったことが大きいと思いますし、局の垣根を超えた広報キャンペーンも少しずつ成果を上げていると思います。何もしなかったら死ぬだけなので、受け身じゃいけないと思いますね。攻めていかないと。ただ聴いてくださいって宣伝しても聴いてくれないので、価値あるラジオを作っていかなきゃいけないと思います。最近思う意識改革としては、みんなに届くものを考えることはいったん忘れるべきじゃないかなと思っているんです。もともとラジオってすごくパーソナルなメディアです。みんなで聴くっていうよりは1人で聴かれる方が多い。ということは、10代から60代まで老若男女問わずウケるコンテンツみたいなものは、ラジオには向いてないんじゃないかなって思っていて。たとえば、自分の知ってる1人の若い女の子に向けて番組を作るとしたらどうするかとか、そんな感覚のほうが正しい気がするんですよね。たとえばMr.Childrenの歌詞って、ディテールにすごい共感することがあるじゃないですか。

自分のためだけに歌っているような。

そう。「ミクロを撃ってマスを制す」って誰かが言ってたんですけど、ラジオの可能性って、小さな共感の積み重ねにあると思います。

J-WAVEの最新サービスというと?

J-meという会員組織を作っていて、これがつい最近10万人を突破したんです。いっぽうで、ラジオの価値がどういうところにあるかというと、リスナーとの絆みたいなことかなと思っていて。10万人、100万人に聴かれることも大事なんだけど、ナビゲーターが「あなた」って呼びかけて、それをパーソナルに聴いている。そこで生まれる絆みたいなものがラジオのストロングポイントなんじゃないかなと。絆の“数”より“太さ”が大切で、この10万人に対していろんなサービスをやってるんです。それも、イベントが多いんですけど、だいたい少人数でやってるんですね。たとえば15人とか。

え!?

「J-WAVE BAR」っていう企画があるんですよ。J-WAVEのロビーにお酒を用意して、僕とかがホストになって、いろいろお話をしたり、リスナー同士も交流してもらったり。で、サプライズでビッグアーティストがその15人のためだけに生演奏する。小さなことの積み重ねこそが今やるべきことだと思っていて。それがメディアパワーになるし、その信頼感がブランドになっていくと思うんです。だから、いきなりマスに向かってボールを投げないっていうのが大事な気がするんですよね。

でも、15人というのは驚きです。

秦基博さんとかMr.BIGとかが、すぐ目の前で生演奏をするんですよ。先日も上原ひろみさんのライブを50人のためだけにやったんです。それも観客が円形にピアノを囲む形で、だから誰もが本当に目の前なんですよ。そういう普段ではあり得ないようなことを体験してもらうのが大事だと思うんです。体験こそが今一番求められているじゃないですか。物より体験。そういう体験を通じてメディアの価値を届けていくことに力を入れていかなきゃいけないなって。

「リスナー」のことを僕らは「ファン」って言ってるんです

J-meに入るにはどうすれば?

登録するだけです。お金も取ってないし。これでお金もうけしようってことじゃないので。「リスナー」って言い方を最近、僕らもあんまりしてないんですよ。「ファン」って言ってるんです。だから、J-meはファンクラブですよね。で、今、J-meのなかでもさらにサークルを作ってるんですよ。映画が好きな人集まれとか。僕らが知らないところでまた絆が生まれていって、会員で良かったなって思ってもらう。J-WAVEのサービスとしては一番力を入れています。

ただ、すごく大変そうです(笑)。

クリエイティブの一番近道って、誰もが思いつくけど面倒くさくてやらないことだと思ってるんですよ。途方もない愚直さみたいなことが圧倒的なコンテンツを作ると思ってます。この前、ポール・マッカートニーにインタビューできたんですけど、ポールが言ってくれたすごくいい言葉があって。あなたの成功の秘訣は何ですか?って聞いたら、「Love is the key」って言ったんです。だから僕もこの仕事が好きだ!って思えるように、大変なことも楽しもうと思ってるんです(笑)。

説得力のある言葉ですね。

短い言葉だけど、すごく財産になりました。僕の宝物です。ラジオも今、簡単な時代じゃないけど、大好きなラジオのためだったら愚直にがんばれます。

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