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特集

2020年01月16日 (木) 特集

PART 3

プロフィジカルトレーナーに聞く!

スポーツに音楽が重要な理由

解説 和田拓巳さん

スポーツをするときに音楽を聴くと、どんな効果があるのか、プロのフィジカルトレーナーに話をうかがった。スポーツはフィジカル面だけでなく、メンタル面も重要なため、そこで音楽が果たす役割はとても大きいということだ。

スポーツはメンタルの部分も大事で、
音楽はそこにとても影響を与えるもの。

人間はどんなにがんばっても実は8割の力しか使っていない

スポーツをしているときに音楽を聴くと、どういう効果があるんでしょうか。

スポーツをするうえで、フィジカル面はもちろん大事ですけど、メンタルの部分というのもすごく大事で、そこがかなりパフォーマンスに影響するんですね。その部分で音楽はすごく効果的だと思います。人間には“生理的限界”というのと“心理的限界”というのがあって、人間はどんなにがんばっても実は8割くらいの力しか使っていないんです。あとの2割は怪我をしないための防衛本能で、心理的なリミッターがかかるんです。ハードなトレーニングをしていくことで心理的限界が生理的限界に近づいていくんですけど、同じような効果が音楽を聴くことでも得られる可能性は高いと思います。そのほかには、集中力が高まったり、気分が上がってモチベーションが高まったり、逆にリラックスさせていったり。音楽はそういうメンタルの部分に大きな影響を与えるものだと思っています。

ジムとかでもみなさんよく音楽を聴きながらトレーニングしていますもんね。

特にランニング中って暇じゃないですか(笑)? 自分の気持ちを持続させるために、この曲を聴いている何分間はがんばろうとか、テンポのいい曲を聴いて、この曲がかかっている間はちょっと速く走ろうとか、その次はゆったりとした曲にして、ペースを落とそうとか、そういうふうに目安として使ったり。ずーっと同じ状態だとやっぱり飽きるんですよね。あとは音楽を聴くことで、つらさを感じにくくする効果もあります。気分が良くなることによってドーパミンが出て、それが体に対する負荷を減らしたり、運動することが快感になったりするんですよね。

高揚する音楽を聴くと気分が上がってドーパミンが出てくるとか、ゆったりとした音楽を聴くとリラックスするとか、音楽の種類も目的によって違うものがいいというのはありますか?

あると思います。一番いいのはやっぱり自分が好きな曲なんですけど、そのなかでもいろんなジャンルがあるので、気分を高めるときはこの音楽、リラックスしたいときはこの音楽、というように、アスリートは自分のプレイリストを持っていますよね。

普段聴いている音楽を試合前に聴くことで緊張を抑えられる

逆に、音楽をやっている人がスポーツをすると、どんなメリットがありますか?

実際に私もミュージシャンやアーティストの方を指導させていただいたことがありますけど、トレーニングによって体調管理ができたり、怪我が少なくなったり、声が出やすくなるなどの効果を実感していただいています。

ミュージシャンにおすすめのトレーニング方法って何かあります?

歌を歌うなど声を出す人はやっぱり腹筋周りは大事ですよね。腹筋が強くないと、姿勢が崩れて声が出にくくなったりすると思います。ただ、腹筋だけではダメで、トレーニングをするんだったら全身やらないと。やっぱりバランス良くやるのが大事なので。どこかよく使うからそこだけ筋トレすればいいというわけではなく、筋肉は前後、左右、上下と、体全体のバランスがあるので。全体のバランスを整えることによって怪我が少なくなったり、パフォーマンスが良くなったりするんです。

要は、体の状態がいいと音楽のパフォーマンス力も上がるということですね。

そうです。それに、体とメンタルは密接につながっていますので。体が元気でもメンタルがダメだったらダメですし、メンタルが元気でも体がダメだったらダメですし。両方が元気になることによって、いいパフォーマンスが発揮できるんです。

そして、そのメンタルを高めるのに音楽はすごく効果的だという。

だと思います。考えてみると、どんな競技でも必ず音楽がどこかしらにあると思うんです。それこそ応援歌だったり、入場曲もそうです。音楽は必ずどこかで聴こえている。選手も普段の実力を発揮するために、普段通りの状態で試合にのぞみたいんです。たとえば、普段聴いている音楽を試合前に聴くことで、緊張を抑えたりもできる。いつもと同じ行動をすることで、大事な試合のときでもいつも通りの実力を発揮できるようになるんです。ルーティーンのひとつとして聴く音楽を決めておけば、どの試合でもその曲を聴くことで普段通りにのぞめる。そういう効果もあるので、やっぱりスポーツに音楽は重要だと思います。

PROFILE

プロトレーナーとして、プロアスリートやアーティスト、五輪候補選手らのトレーニング指導やコンディション管理を担当。医療系やスポーツ系専門学校講師や、テレビや雑誌でのトレーニング監修も行っている。

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