名物プロデューサー列伝

2019.01.18

INTERVIEW

名物プロデューサー列伝

vol.78 株式会社MASH A&R代表取締役社長 株式会社スペースシャワーネットワーク上席執行役員 石田美佐緒さん

vol.78 株式会社MASH A&R代表取締役社長 株式会社スペースシャワーネットワーク上席執行役員 石田美佐緒さん

2012年に4社合同のオーディションプロジェクトとして始まり、現在はTHE ORAL CIGARETTES、フレデリックらを擁するプロダクションにもなっているMASH A&R。2018年4月にその代表取締役社長に就任した、スペースシャワーネットワークの石田上席執行役員が今回のゲストだ。

text:吉田幸司 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

良質なアーティストを発掘して、誠実にマネージ
メントして、アーティストとともに成長したい。

インディ少女が単身NYへ

1993年にスペースシャワーに入社されるまでの経緯からお聞かせください。

10代の頃はUKニューウェイブやドイツのインダストリアルからプログレまで、かなりマニアックな音楽が好きで。あと寺山修司の世界やインディ映画が好きだったり、ちょっと変わった子だったと思います(笑)。出身が大阪なんですけど、大阪を出て新しいライフスタイルにチャレンジしたいと思ったときに、世界で一番大きな街に行ってみよう!と思い立って、単身でNYに行きました。アルバイトしながら大学とアートスクールで学び、夜はクラブとライブハウスに通うというかなりワイルドな生活をしていて(笑)。そこでライブハウスからスタジアムまでライブをたくさん観たこと、あとアパートで視聴していたMTVの影響で、幅広く音楽を聴くようになったんです。大阪のインディ少女だったのが(笑)、NY生活で音楽の世界がパッと広がったんです。

今につながりますね。

3年間NYで生活して日本に帰ってきた当時、音楽の裏方の仕事に関わりたくて、コンサートプロデューサーになりたい夢があったんです。でも帰国子女で人脈もなく入り口がわからなくて、雑誌の『ぴあ』を買って、コンサートページの問い合わせ先一覧の上からアイウエオ順にコンサートプロモーターに電話しました。問い合わせの電話を取られる方はチケット担当のアルバイトさんがほとんどで(笑)。

それはそうですよね(笑)。

1社だけ社員の方が電話を取られて翌日面接してくださって。それがH.I.P.です。

そこが石田さんの最初のキャリアに。

当時は海外、特にイギリスのアーティストを中心に招へいしていて、社長秘書と国際部のアシスタントが最初の仕事でした。そこで様々なノウハウを学ばせてもらいました。とてもやりがいがあって楽しかったんですが、周りを見渡したら女性のプロデューサーがいなくて、当時、女性はアシスタントかデスク業務がほとんどで、プロデューサーになる夢が遠い気がしていました。また体力的にも昼夜問わずの肉体労働で、これは20代後半になったら体がもたないなと思い始め、実際体調を崩してしまい、悩みましたがプロモーターの夢をあきらめました。それからもずっと音楽の仕事に関わりたいと思っていたなか、スペースシャワーTVは視聴者としてずっと家で観ていて、センスある若いスタッフで創っている、海賊チャンネルのような音楽チャンネルで、アメリカのMTVとはまったく違うオリジナリティを感じていました。縁があって、当時の編成次長で現社長の近藤と知り会い、音楽と小説の趣味が合い、何でもやりますので働かせてください、とお願いして、アルバイトで潜り込んだんです(笑)。

スペシャ内で様々な開拓を

バイトから今の上席執行役員へ。ものすごく夢のあるドラマチックな話ですね。

最初は広報の仕事をしていました。当時ほとんど認知されていないスペシャを少しでも多くの人に知ってもらいたかったので、様々な媒体さんへプロモーションにまわりました。あと、スペシャブランドを作る目的で、スペシャのロゴを今のシンプルなSロゴに変えたりブランドキャンペーンをやったり。とにかくスペシャを知ってもらう宣伝活動を続けていました。しかし一番の転機はやはり“スペシャ列伝”を始めたことですね。

新人アーティスト発掘の主催イベント“スペースシャワー列伝”ですね。

2000年にその企画を立ち上げた経緯としては、スタッフと飲みながら話していたことがきっかけだったんです(笑)。“スペースシャワーってMVがないと応援しづらかったりするけど、いい音楽を作っているアーティストは世の中に多くいるのに、レーベルや事務所に所属しないとMVを作る資金がない。そういうアーティストを発掘して応援していくっていうことをスペースシャワーはやらなきゃいけないんじゃないか!”って、その飲みの場で熱く盛り上がって(笑)。

飲みの場での熱いトークが発信源になって(笑)。

そこから2001年にスタートして今18年目ですが、今までに139企画、250公演、600組以上のアーティストが出演しました。新しいアーティストと出会うのは楽しいですね。あとは日比谷野音で開催していた主催イベント“SWEET LOVE SHOWER”にもっと多くのオーディエンスに参加してほしくて、1年かけて移設会場候補地を探したなかで、2006年に富士山が望める山中湖畔の現在の会場にたどり着きました。“スペースシャワーで音楽の日本一を目指したい”。そういう思いが自分のなかで日本を象徴する富士山と合致して、開催地を決めるに至りました。

株式会社MASH A&R代表取締役社長 株式会社スペースシャワーネットワーク上席執行役員 石田美佐緒さん

信頼している方に“今までに ないプロジェクトで新しい ロックシーンを創ろう”と お声がけいただきました。

MASH A&Rを設立

2012年には「MUSICA」「A-Sketch」「SPACE SHOWER TV」「HIP LAND MUSIC」の4社合同オーディションプロジェクト“MASH A&R”が始まりました。

何か新しいことを始めたいという思いはずっと強くあって、マネージメントにも憧れがありました。“スペシャ列伝”でブッキングした当時は無名だったアーティストがスターダムに上がっていくのを近くで見て、自分の仕事は二次的、三次的なものだなということをずっと感じていたんです。そんななか、信頼しているヒップランドの野村さんから連絡をいただいて。“A-Sketchの相馬さんと、今までにないプロジェクトで新しいロックシーンを創ろうという話があって、参加しない?”とお声がけいただいて。“はい、ぜひ乗りたいです!”って、これが最初のきっかけですね。そこから4社合同で各社の機能とノウハウを持ち寄ってアーティスト発掘を目的としたオーディションが始まりました。

その1年後にはMASH A&Rを法人化し、オーディショングランプリアーティストの本格的なマネージメントが始まりました。マネージメントとしてどういうことを心掛けていこうと思っていました?

自分はマネージャー未経験だったので、トップマネージメントの野村さんと相馬さんのお2人から学びたい気持ちがありました。また、女性ならではの気づきや、アーティストの体調管理や精神面のケア、ホスピタリティについては心掛けていました。あともうひとつは、マネージャー視点とは違う自分の経験が活かせるかもしれない、と。

スペースシャワーならではの視点を。

そうですね。トップクラスのアーティストマネージメントから、インディでマネージャーさんと二人三脚で成功するアーティストまで、様々な方とともに仕事をしていたのは大きな経験です。ただ、スペースシャワーで得た経験と知見は活かしたいとは思いますが、スペースシャワーでは全方位でレーベル、マネージメントと仕事をしているので、フラットな立場でいるべきだと考えています。

マネージメントとは

憧れていた世界に入ってきて、やっぱりマネージメントは面白いと思ったりも?

はい、面白いです。面白いというか、やりがいがありますね。まだまだ途中段階ですけど、発掘したアーティストが武道館やアリーナといった大きなステージに上がっていくことには、喜びの度合いも熱情も強く感じます。たぶんマネージメントのみなさんもそこが冥利に尽きるところでは…。でも私はまだまだです。本当にもう毎日が勉強です。

そして2018年に代表取締役社長に。何か変えていこうと思っていることも?

11月に新オフィスができました。基本は4社からのスタッフが兼任で業務を担当しているのですが、今はMASH A&Rの社員も増えてきました。今後はMASH A&Rを軸にしながら4社の機能を活かして事業展開していけたらと考えています。

今後さらにどうしていきたいですか?

前回(2017年)はグランプリが出なかったのですが、アーティストと一緒にスターダムを目指すというのは、ある面人生をともに、というぐらいの覚悟がなければ選べないと思います。前回はもしかしたら見逃してしまったのかもしれないですが縁がなく、グランプリを出せなかったので、今回は精度を高めたく、オーディションの選考方法を変えようと新しいアイデアを取り入れました(取材後の2018年12月15日にファイナルマッチを開催。グランプリはユレニワが獲得)。MASH A&Rそのものの存在意義と価値を上げていくのは、良質なアーティストを発掘して、誠実にマネージメントしてヒットを導き出すことと考え、その気持ちは常に大切にしたい、アーティストとともに成長したいですね。

PROFILE

株式会社MASH A&R代表取締役社長 株式会社スペースシャワーネットワーク上席執行役員 石田美佐緒さん

石田美佐緒

コンサートプロモーターH.I.P.を経て、1993年にスペースシャワー(現スペースシャワーネットワーク)に入社。現在は上席執行役員/スペースシャワーTV事業本部本部長。2012年に始まったオーディションプロジェクト“MASH A&R”に立ち上げから参画し、2013年の法人化に伴い、アーティストマネージメントも本格的に手掛ける。2018年4月1日付けで同社代表取締役社長に就任。現在の所属アーティストは、THE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERREN、パノラマパナマタウン、Saucy Dog、YAJICO GIRL。

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