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2018.07.19

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本根 誠さん レコードストアデイジャパン事務局運営担当 東洋化成株式会社 営業本部長

名匠に聞く!
レコードストアデイ

本根 誠さん
レコードストアデイジャパン事務局運営担当 東洋化成株式会社 営業本部長

レコードブームの再燃に間違いなく一役かっているレコードストアの祭典“レコードストアデイ”。その日本事務局の運営担当に、全世界的なレコード市場の現状についてお聞きした。

text:阿刀“DA”大志

業界主導の“ブーム”ではなく、お店とアーティスト主導の
世界的な“ムーブメント”だと思っています。

現在はもはや“ブーム”ではなく“ムーブメント”になっている

最近のアナログレコードを取り巻く状況はどうなっているんでしょうか?

良い形で盛り上がっていると思います。現在はもはや“ブーム”ではなく、“ムーブメント”になっている。そして、これはレコードショップとアーティスト主導の世界的な出来事なんだと僕は思っています。“せっかく自分たちが命を張って作った音なんだから、より良い形で届けたいよね”っていう想いがこもってる。それが心あるお店さんを通してお客さんに伝播していく。そんなふうに、レコード会社や業界主導ではなく、アーティストの想いをかなえるメディアとしてアナログは売れている気がします。

近年のレコード生産枚数はどう推移しているんでしょうか?

弊社(東洋化成)でいうと、毎年1.5倍の感覚で増えてますね。昨年、久々のリニューアルをして、工場の生産ラインを拡充しました。アナログを作るためにみんなが列をなしてる状態から脱却するべく、拡充を図ってます。

2009年に約10万枚まで生産が落ち込みましたが、昨年はその約10倍になっています。今、レコードが盛り上がっている要因は何だと思いますか?

面倒くさくて楽しいからじゃないですかね。みなさんのパートナー、奥さん、旦那、彼氏、彼女と似てるかもしれない。面倒くさいからこそ一緒にいたいっていうね(笑)。

わかりやすいですね(笑)。イギリスにおいて、アナログセールスの約3分の2は、レコードにお金を年間6万円弱も費やすようなヘビーリスナーによって買われているそうです。

日本よりもヨーロッパのムーブメントのほうが先んじている気がしますね。ヨーロッパ圏ではライフスタイルとして、お小遣いをレコードに費やす方向にシフトしてる人がたくさんいる感じがします。ヨーロッパって何をやって食ってるのかわからないような、でも楽しく生きている大人がいっぱいいて(笑)、そうやって好きに生きてる人間が好きなものを選ぶときに極端な形でアナログに振れるのはわからない話ではない。

なるほど。

日本では昨年、堀込泰行さん(元キリンジ)が配信&アナログ限定販売という試みをしたところ、弊社も配給でお手伝いしたのですが、とても良い結果が出ました。つまり、サブスクリプションで聴くか、モノとしてややこしい環境でアナログを聴くかという2択になったとき、堀込さんのファンはアナログに動いた。でも、やっぱり月額980円のサブスクは検索エンジンとしても便利だと思うんですよね。たとえば、サブスクで堀込さんの関連アーティストの楽曲に触れて、そこでいいなと思ったら、堀込さんの作品でアナログの熱さを知っていれば“これもアナログで聴いてみよう”とお客さんがデジタルとアナログの世界を回遊するんだと思うんですよ。

レコードストアデイ

毎年4月の第3土曜日に行われる“レコードストアデイ”。なお、11月3日には東洋化成主催による“レコードの日”も開催される。

手に取りやすい価格のレコードを作ることも大事

“レコードストアデイ”も昨今のアナログ人気に一役かっていますが、リスナーの熱は今も高まってますか?

日本においてはある一定の評価を得ているイベントだと思っています。タイトル数でいうと、ここ2〜3年、日本では100を超えないぐらい。アメリカは500、イギリスは今熱い国なので600もあります。人口比で考えるとすごいですよね。

アメリカよりもイギリスのほうが音楽に対して熱心という印象はありますよね。アメリカの状況はどうですか?

アメリカは中古盤店が力をつけているみたいですね。“レコードストアデイ”のアイテムは4月の第3土曜日に販売されることが決まってるので、アメリカの中古盤店では、中古テイストを持った新譜が回転が早い商品として重宝されている。中古盤店さんから見ても客寄せパンダになり得てるんです。

なるほど。

アメリカの中古盤店のもうひとつの傾向は、たとえばヴェルヴェット・アンダーグラウンドの“バナナ”(ファーストアルバム)だけでも、数万円のオリジナル盤や格安の復刻盤と、リイシュー盤が、すべて同じ棚に並んでる。お客さんの懐具合に合わせて選べるようになっていて、それがシーンを活性化しているんです。

今後もこのムーブメントはしっかり定着しそうですね。

ただ、リーズナブルなプレーヤーのおかげもあってアナログを聴く人が増えるのはいいことだと思いますが、僕らも企業努力をして、手に取りやすい価格のレコードを作るようにすることが大事だと思います。物作りをしていくうえでのテーマですね。

RECORD STORE DAY

アメリカで起こったレコードストアの文化を祝う祭典。2008年にスタートし、毎年4月の第3土曜日に、現在は日本を含む全世界23ヶ国で数千を超えるストアが参加している。

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