ライブハウス店長インタビュー

vol.45 SELENE b2 大澤智和さん

vol.45 SELENE b2 大澤智和さん

高級住宅が建ち並ぶ都内有数の一等地に、リハーサルや収録もできるスタジオ併設で、映像担当のスタッフまでいるハイスペックなライブハウスを作った狙いとは? あえて“店長”という役職を立てていないというセレネの営業窓口、大澤さんに話をうかがった。

text:野中ミサキ(NaNo.Works) photo:青木早霞(PROGRESS-M)

エンタテインメントが根づいていない場所にあえて
作ったからこそ、面白がってもらえるのかなと。

いわゆるライブハウスとは一線を置いて運営したい想いがあった

高級住宅街である白金高輪という立地とあわせて、地下に広がる青と白2色のダンジョンめいた空間に驚いてしまいました。

よく言われます(笑)。もともとここはテレビスタジオで、現在ホールとして利用している場所はボルダリングジムだったんです。そこに居抜きでうちが入って、スタジオとライブスペースを始めたという形です。白金高輪という土地柄もありますし、内装も運営スタイルも、いわゆるライブハウスとは少し違った雰囲気で一線を置いて運営したいという想いがありました。

店名とエントランスの様子から、通常の貸しスタジオをイメージされる方が多いと思いますが、スタジオに加えて、地下2階に吹き抜けの開放的なホールがあることに驚かれる方も多いと思います。

立ち上げからホールとスタジオの併設を考えていたので、総称を「SELENE STUDIO」、地下2階のホールを「SELENE b2」という名称にしました。ただ、グランドオープンが昨年7月、スタジオが本格始動したのは今年の3月なので、運営としてはホールのb2のほうが先ですね。

大澤さんは、セレネ立ち上げ以前から系列店の運営に携わっていたそうですね。

恵比寿にあるライブスペース「クレアート」で営業・統括といった仕事をしていました。母体がイベント会社というのと、オーナーの意向もあって、“店長”という役職はあえて立てていません。キャパ700人のホールとスタジオを併設しているので、一般的なライブハウスの運営というよりも会社経営の感覚に近いかもしれないですね。あとは、この規模のハコが都内にも多くないということもあって、ライブスペースというよりは多目的に使える貸し小屋というほうが実際と近いかもしれません。

視覚的なところでも特化したく映像のスタッフもいるんです

確かに、スケジュールを拝見すると音楽ライブ以外にもトークイベントやファンミーティングなど、かなり多種多様なラインナップですね。キャパ以外に、セレネにはどんな特色があるのでしょう?

一番は、ステージバックがすべてLEDで、映像を映し出せることですね。一般的なライブハウスだと音響・照明のスタッフがいると思いますが、視覚的なところでも特化したいということで、うちには映像のスタッフもいるんです。もちろんスペックの高い音響機材も導入していますし、キャノン砲のような特効も用意しているので、よりゴージャスなパフォーマンスを楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。あとは、立地面でもエンタテインメントが根づいていない場所にあえてライブスペースを作ったというところで、何もないからこそ面白がってもらえているんじゃないかなと。

来場する側としてはアクセスが抜群にいいとは言えない反面、白金高輪まで足を運ぶということが非日常感を高めてくれているような気もします。出演者にとっても、いつもとは違ったパフォーマンスを発揮できる場所なのではないでしょうか。

そうですね。LEDを使った演出が可能ということで、アイドルやヴィジュアル系のアーティストなど視覚効果を取り入れたパフォーマンスを重視する方には特にご利用いただいています。たとえば、告知ひとつをするにしても文字で表示できるとより便利ですし、ステージバックに映像が映ることで音の世界観を広げていただけるのかなと。ステージ演出としてだけでなく、LED画面を使ってゲームイベントをやったり、花道を作ってミスコンをやったこともあります。今度サッカー日本戦のパブリックビューイングも予定しているんですけれど(取材は5月下旬)、せっかくだからフロアに人工芝を敷いたら面白いんじゃないか、なんて話もしていて(笑)。

4D的な臨場感が味わえそうですね!

いろんな使い方、楽しみ方ができる空間だとは思います。スタジオを併設しているので、配信やテレビ収録、MV作成、公演の配信でご利用いただくことも多いですし、ステージとあわせて提案できることはたくさんあるかなと。ほかだと空間をまるっと貸して終わりというところもあるかもしれませんけれど、セレネの場合は一緒に作っていきましょうという姿勢なので、できるできない以前にどんなことをやりたいのかを全部ヒアリングして、そこからできることを提案していくという形で1公演1公演、しっかりボリュームを持ってやっています。

SELENE b2 大澤智和さん

生粋のライブハウスからすると“ぽくない”ところもあると思う

パフォーマンスをする側としてもすごく心強いですね。そういったところで信頼度も上がっているのではないかと思います。

おかげさまで週末は年末まで予定が埋まっていますし、平日の公演も徐々に増えてきた実感はあります。ライブだけではなく、多目的にご利用いただけるというところで使っていただけているのも大きいんじゃないかなと。うちは老舗ライブハウスみたいに“音だけで勝負!”というハコでもないですし、もちろんそういうところはカッコいいし、僕も大好きなんですけれど、セレネとしてはそこにプラスアルファでできることを提案できればと思っています。

ちなみに、大澤さんご自身のライブハウス観って、どういうものなんでしょう?

今言ったのとは真逆で、この会社に入る前は、バンドで視覚とか関係ない音楽をやっていて(笑)。やっぱりライブハウスって、公演後に出演者とお客さんが会話したり、店長やバーカウンターのスタッフと仲良くなったり、人と会うことを目当てに行ったりもするじゃないですか。そういう人と人のつながりみたいなところがライブハウスのいいところだなって思うし、うちでも大事にしていきたいと思っているところです。

セレネには、大澤さんがバンドを経て得たライブハウスのマインドも反映されているんですね。

親会社が官公庁系のお堅い仕事をしていたこともあって、セレネはサービスに関して生真面目と言いますか(笑)、生粋のライブハウスからすると“ぽくない”ところもあると思うんです。とはいえ、僕としてはライブハウスのマインドとサービスをあわせ持ったハコにしていけたらなと思っていて。いいとこどりみたいですけれど(笑)。

(笑)生粋のライブハウスに出ているバンドにとってセレネは、ステップアップの過程と言えるような存在のハコになるかもしれませんね。

そうなれるとうれしいですね。ここで育ったと言ってくれるアーティストが出てくるのは夢でもあります。土地柄的にも、今後そういうことができれば面白いなと。バンドに限らず、あらゆる表現をする方にとってそうなれるといいなと思いますね。

エンタテインメントであれば、何でもできる空間でありたい

白金高輪の地下から新しいカルチャーが芽吹きそうですね。今後のビジョンは?

まずは、ブッキングではなくセレネならではの見せ方をできる、自主企画的なイベント性の強いコンテンツを増やしていきたいと考えていて、実際に取りかかり始めています。配信の番組を作ったり、アーカイブを作っ たり、出演してくれたアーティストにとってもその日だけのパッケージを作ることができるんじゃないのかなと。あとは、本当に分け隔てなく使える場所でありたいと思っているので、ゆくゆくはジャズやクラシックといった、演奏環境がデリケートな公演もできるといいなと考えています。極論を言えば、プロレスをやってもいいんです。エンタテインメントであれば、何でもできる空間でありたいなと思っています。

SELENE b2

SELENE b2

東京都港区三田5丁目2-30 SELENE STUDIO
03-6809-5923

2017年7月にオープン。地下1?2階が吹き抜けのライブハウス(キャパ700人)。同ビル地下1階にはリハ、録音、収録スタジオなども併設されており、その総称が「SELENE STUDIO」。

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