音楽にまつわる「ちょっといい話」

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第35回 半世紀以上レコードを売り続けているショップ[ディスクユニオン]

今回のゲスト

今回のゲスト

大島靖広さん

(ユニオンレコード新宿 店長)
1979年、栃木県生まれ。専門学校卒業後、2001年にアルバイトでディスクユニオンに入り、その後、社員に。中野店、新宿パンクマーケット、お茶の水駅前店のレコードフロア、池袋店のスタッフを歴任後、今年4月にオープンしたユニオンレコード新宿の店長に。

 世界的に実店舗がどんどん消滅していくなか、日本はがんばっているとよく言われるが、それを象徴するかのように、半世紀以上レコードを売り続け、確固たる地位を築いているショップがある。ディスクユニオンだ。ヒットチャートに頼る品揃えをしているわけでも、派手なショップ展開をしているわけでもないのに、入門者からマニアまで音楽ファンを魅了する同店は、地下1階から7階までフロアごとにテーマを分けたデパートのような大型店から、パンク、メタル、レアグルーヴ、テクノ、昭和歌謡、シネマといった趣味性の高いジャンルの専門店まで、都内を中心に幅広いニーズに応えるショップを展開しているのも特徴だ。
 今回はその「ディスクユニオン」を取り上げ、なぜ実店舗としてサバイブし続けているのか、スタートした51年前当時の店名を復活させ、今年4月に新オープンした「ユニオンレコード新宿」の店長に話を聞きながら、そこを紐解いていきたいと思う。

若い方、海外のお客様が多く女性のお客様も増えてきています

 4月20日、新宿に「ユニオンレコード新宿」「新宿中古館・ブックユニオン新宿」の2店が新たにオープンした。まずはそのうち、アナログ専門店「ユニオンレコード新宿」についての話をうかがった。

なぜこの時期にアナログレコード専門店をオープンしたんですか?

数年前から起こっている今回のレコードの盛り上がりは、今まで数年おきにあった再評価とは桁外れと言いますか。ディスクユニオンとしては、やっぱりこのタイミングでレコード文化をもっと広げていこうという趣旨のもとにオープンいたしました。それでこのお店の屋号になっている「ユニオンレコード」というディスクユニオンの原型の店舗名を51年振りに復活させたんですけど、ディスクユニオン自体はその頃からずっとレコードの販売を続けているんですよね。

ユニオンレコード新宿の特徴は?

まずはオールジャンルのお店ということですね。まわりにディスクユニオンの専門店があって濃い色が各店舗にあるんですけど、そこへ通うお客様にも楽しんでいただくのはもちろん、路面店というところで、若いお客様を面白い音楽の世界に引き込みたいなというのがありまして。あとは、昔レコードを聴いていたという方にフラッと入っていただいて、また聴いてみたいなと思っていただくとか。そうした入口的役割を果たしたいなと思っていますね。

現状、客層はどんな感じでしょう?

既存店で買い物されてたお客様ももちろんいらっしゃいますけど、若いお客様がほかのお店よりは多いですね。そこはまあ、ここをオープンした狙い通りと言いますか。あとは海外のお客様が多いです。旅行で来たカップルが来て買われることもあります。

外国人の来店者が多いのはなぜだと思いますか?

お店がひとつの街に集中してるのは、世界中でたぶん日本くらいで。新宿に行ったらディスクユニオンだけでも数店舗あって、電車でちょっと行ったら渋谷とかお茶の水にもあって。アメリカとかだとたぶん、車で何十キロも走って次のレコード屋さんに行ってという感じだと思うんですけど。

特に売れてるものというと?

新譜で最近多かったのは、秦基博さんのドラえもんの7インチですね(「ひまわりの約束」)。私たちの感覚だとレコードは男の趣味みたいなところがあると思うんですけど、女性の方が1人で来たりですとか、昔にくらべると女性のお客様が増えてきてるのは実感しています。

「ユニオン商い五訓」が根付いているのかなと

 そして、今回のテーマでもある、ディスクユニオンが半世紀以上もサバイブしている理由を探ってみた。結論から言うと、すべての商いの根本でもある、良心的な接客にその理由があることが浮き彫りになった。

1967年に原型となる「ユニオンレコード店」をオープンしたとこのことですが、どんな思いのもとで始まったのか聞いてはいらっしゃいますか?

ある程度は。最初は会長夫婦がオーディオのお店(ユニオン電気商会)をやられていたみたいで、その片隅にレコードを置き始めたのがディスクユニオンの始まりみたいなところだそうです。その家電売場からレコードを独立させ、レコード店を専門として立ち上げたという話は聞いてます。

そこから、このときは危機だったという時期もありますよね?

私が働いてからはまったくないですね。

素晴らしい。では、なぜディスクユニオンはサバイブしているのだと思います?

ひとつは、以前は全ジャンルを扱う総合店が多かった当社でしたが、平成になってからは、各スタッフの得意とする音楽ジャンルの専門知識を活かした専門特化店舗を新宿、お茶の水、渋谷など都心に展開する方針転換が音楽マニアの方々から支持されたこともあると思います。また、私が思うところは会社の経営理念にあって。「ユニオン商い五訓」というのがありまして。「店はお客様のためにあり」「損得より先に善悪を考えよう」「お客様に有利な商いを続けよう」「適正な利益は正しい商いの源泉である」「欠損は社会のためにも不善と悟れ」、その5つをたぶん会長の代から毎朝唱和してまして。それがやっぱり根付いているのかなと。だから、これで成功しました、これのおかげで今も成り立ってますというよりは、どっちかというと細かい積み重ねじゃないですかね。カッコ良く言うと(笑)、お客様優先の商いを続けてきたことの積み重ねだと思います。

なるほど、それこそが一番大事だと。

私が新宿のパンクマーケットにいたときに、よく来られるアメリカ人のお客様がいらっしゃって、趣味が合うので、買い物をしてお話しして帰られるというのをずっと繰り返していたんですね。その方が、アメリカに帰るから次に来るのが最後だよと。そのときに、ずっと欲しがってた日本のハードコアバンドのレコードがあることを知っていて、私が個人的に持っていたので差し上げたんです。元気でね、がんばってねって。で、アメリカに帰っていったんですけど、私はそこからお茶の水に移動になって、2年くらい経った頃に、その方が僕を探して店まで来てくれたんですね。「あのとき君が私の一番好きな日本のバンドのレコードをくれたから、私がアメリカで一番カッコいいと思うバンドのレコードを持ってきたよ」って。

わ、いい話です!

そこからまた仲良くなって、1〜2年に1回は日本に来るんですけど、そのときはいつも約束して待ち合わせをして、一緒にディスクユニオンをまわってますね。

それ、大島さんは仕事と変わらないじゃないですか(笑)。

ははは! やっぱり音楽が好きな店員が、音楽が好きなお客様と話してるから、話せば通じ合えるみたいな(笑)。

リピーターも多いですよね?

多いと思います。あと、あそこにもあるから、行ったことのないユニオンに行ってみよう、みたいな方も多いですね。

ディスクユニオンのブランディングができてるんでしょうね。

だから、お客様とスタッフを会社がつないでくれているところもありますよね。ここで働かなかったらこんなにディープなお客様と会えなかっただろうなという方がたくさんいらっしゃいますから(笑)。

聴くときに気合いが必要で手間がかかるのも逆に魅力

 22才のときにディスクユニオンにアルバイトで入り、そのまま社員となり、新宿や池袋、お茶の水等のショップスタッフとして働いてきたという大島さんに、最後に、アナログレコードの魅力についてもお聞きした。

大島さんが思うレコードの魅力とは?

やっぱりジャケットのインパクトですかね。あとは何と言っても音が良いというのと、手間がかかるというのが逆に魅力だと思います。レコードは聴くときに気合いと言いますか「よし! 今日はこれを聴くぞ!」という感じの意気込みが必要で、手間暇もかかるじゃないですか。保存するのも、湿気とかにも弱いですし、ていねいに扱わないと紙なので傷みますし。そのぶんやっぱり愛着が湧くというのはありますね。

レコードは音が良いとよく言われますけど、それはなぜだと思います?

レコードには人間の耳には入らない音まで入っているみたいなんですけど、そこにあたたかみがあったり、音では聴こえてないけど五感というか感覚でたぶん感じていて、普通のデジタルのCDとはまた違う聴こえ方をするんだと思います。

 心のこもった接客という、当たり前だが、つい忘れがちになってしまうことの大事さを、改めて知れた取材だった。音楽好きが安心して足を運べ、音楽好き同士のサロンのような機能も果たすショップであるということ。それがディスクユニオンが半世紀以上もサバイブしている秘密だった。

text:吉田幸司

ユニオンレコード新宿

ユニオンレコード新宿

1926年にお茶の水で輸入中古車販売業「ユニオン自動車」を開業し、1953年に家電販売店に業種変更、1960年代に店内にレコードを置き始め、1967年にレコード部門が支店化し「ユニオンレコード店」がオープン、1969年に店名を変更し「ディスクユニオン」となった。そして、今年の4月20日に、起源となったショップ名を冠した「ユニオンレコード新宿」がオープン。アナログレコード専門店として、ロック、J-POPものを中心に、オールジャンル取り扱っている。

東京都新宿区新宿3-34-1 ジュラクツインBビル 1F(JR新宿駅南口より徒歩約5分、地下鉄新宿3丁目駅より徒歩約5分)
tel:03-6380-6118
営業時間:11:00〜21:00(日・祝は20:00まで) /無休

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