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2018.04.20

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高橋由香里さん 株式会社アミューズ MD事業部 部長

海外でコンサートを行うなら必読!

マーチャン「海外事情」超入門
高橋由香里さん 株式会社アミューズ MD事業部 部長

「海外でコンサートを行う際の費用をマーチャンで少しでも補いたい」そう思っている人は 多いはず。とはいえ、そこには様々な注意点がある。実際に海外展開もし、他社のマネージメントや アーティストの相談も受けている、アミューズのMD事業部に話をうかがった。

text:吉田幸司

日本独自のコンサートグッズ文化も一緒に
輸出していけたらいいなと思っています。

日本のコンサートグッズの面白さも感じてほしい

海外でもマーチャンというか、コンサートグッズは浸透しているんでしょうか?

もちろん海外にもコンサートグッズはありますが、アイテムの幅は日本ほどなくて、とにかくコンサートグッズといえば“Tシャツ”という印象です。もちろんトートバッグやピンバッジなどほかのアイテムもありますが、比較的シンプルなラインナップです。それは日本が海外にくらべて“おみやげ”を好む文化であるとか、そういうことも影響していたりするのかなとも思います。日本ではマストとも言えるタオルも、コンサートグッズとして一般的でないことを知り驚きました。また、中国以外の現地のマーチャン会社で製造しようとすると、ひとつ例にとればTシャツのプリント範囲など、できることにいつもより制限を感じました。

なるほど。となると、海外では現地のスタイルに合わせて戦略を考えていくことが大事になるかと思うんですが。

もちろん現地のスタイルに合わせていくことも大事だと思いますが、私は、逆にせっかく日本人のアーティストに興味を持っていただいているなかで、日本のコンサートグッズの面白さみたいなものも感じていただきたいし、それも含めてライブを楽しんでいただきたいと思っています。日本独自のコンサートグッズ文化も一緒に輸出していけたらいいなと、強く思っていますね。

確かに。

ご存知の通り、日本のアーティストが海外で活動するにあたっては、正直な話、経費がとてもかかります。そこにMDの収入が少しでも役に立ってくれたらという思いもあるので、当然利益の確保という観点もありますが、そのもういっぽうで“コンサートグッズにはこんな可能性があるんだ”とか“こんな楽しいものなんだ”というところも一緒に楽しんでいただきたい。アミューズにおけるコンサートグッズの考え方のひとつは、お客様との架け橋というか、アーティストの世界観のようなものを形にしてファンのみなさんのもとへ届けていくことです。音楽だけでなく、グッズでもアーティストとお客様とがつながることができる。より一体感だったりアーティストの世界に誘導するためのツールのひとつだと思うので、そういう意味では海外のコンサートにおけるチャレンジアイテムも継続してやっていきたいと思っています。

必ずしも現地で作るのがいいとも言い切れません

とはいえ注意しなきゃいけないことはたくさんあると思うんです。たとえば関税の問題もありますよね? 日本から持っていく場合もあれば現地で作る場合もあると思いますけど、その見極めはどこでつけるんでしょうか?

まずひとつは、良い悪いではなくて、質感の違いとか仕様の自由度の違いがあると思っています。日本で売っているものとまったく同じものを届けたいとか、生地はこういう柔らかさでとか、そういうことにこだわると、やはり日本で販売する商品と同じルートで製造しないと実現できないんですね。しかしそうではなくて、やれることにはある程度の制約があるけどコストを下げたいとか、現地の方になるべく安く提供したいといったときは、まず日本から持っていくうえで輸送関税が絶対的にかかるので、そこの部分を考えると現地で作るというチョイスもあります。そういう点でマネージメントやアーティストがどういう価値観か、何を求めているかというところのすり合わせが、非常に大事だとも考えています。

なるほど。

ただ、現地で作るとなったときに、ツアーでまわる国のエリアによっては、結局ロットが細切れになってしまうことがあります。だったら中国でまとめて作って各地に輸出したほうがいいということもあります。なので、必ずしも現地で作ることでコストメリットを出せるとも言い切れません。たとえばアリーナクラスの公演で、かつベーシックなアイテムであれば、現地に協力会社が見つかれば成立することもありますが、はじめはライブハウス規模からスタートされるアーティストの方も多いはずです。

ですよね。先ほどの場合は、中国でまとめて作って、一度日本に?

日本に一度入れてしまうと二重に関税がかかってしまうので現地から直接納品しますが、発注者と荷受けする人が違うので3国間の貿易になってくるわけで、法令に順守した税金処理なども考えていかないといけません。“貿易”“経理”と専門的な知識が必要になってくるわけですが、そこはグッズ製造を手掛ける、アミューズのグループ会社である希船工房のスタッフと一緒にノウハウを蓄積してきました。希船工房はデータがやっとちょっとずつ蓄積されてきたので、他社さんのお仕事にもお役に立てるようになってきたかなと思いますが、コンサートグッズは特殊で、送るものの品目や量が一定ではないですよね。でも関税は、数量と素材とアイテムによっても、あと送る国によっても変わってきます。輸送費も梱包サイズと重量によって変わってきます。よく「関税と輸送費はいくらですか?」と聞かれるのですが、正直なところ、すぐに答えられない実情があります。

日本のアーティストが安心して海外で
活動していける環境を整えていかないと。

ルールが守られていないと通してもらえないことも

それだけ複雑なんですね。

それも、ある商品をたとえばポーチと判断するのかバッグと判断するのかとか、そのときの税関の担当者にどうジャッジされるかといったことでも状況が変わってくることがあると聞きます。大変稀なケースではありますが、自国の産業を守るために非常に高い関税がかけられていて、販売価格と関税がほぼイコールになってしまうようなケースも過去にはありました。そのようなこともあり、また、アイテムや国によっても異なるため、一概には言えませんが、ご参考までに関税の目安としては、通常、商品の原価に対して10%前後と言えると思います。

すごく大雑把にいうと。

平均したらそれくらいになるかと思います。ただ、法律は頻繁に変わるので、気づかない間に変わっていることもあります。なので、毎回確認が必要です。素材表記とか原産国表記とか、守るべきルールが守られていないと、そもそも税関を通してもらえないこともありますからね。

CDやステッカーが会場から販売規制をかけられることも

関税の話は奥が深すぎて書ききれないですけど、それ以外で何かアドバイスできる基本的な注意点はありますか?

輸出する国によって、素材によっては、輸出・販売に特別な申請や検査が必要なこともあります。そのため希船工房で輸出を受託するときには、実際の商品をお預かりして、複数の視点から注意点を洗い出しています。また、販売にあたっても日本とのギャップがいくつかあります。たとえば、Tシャツがビニール袋に入っておらず、裸の状態でお客様に手渡されている国もありました。列の考え方についても同様で、委託販売の際に、お客様がたくさん並んでいても、販売員が急ぐそぶりがなかったり、そもそもコンサートのグッズ販売にそんなに人が並ぶという感覚がない国もあり、列整の人員を用意してもらえなかったりということもあります。実際にできた列を見て「過去にこんなことはなかった!」と、現地スタッフに驚かれることも多々ありました。

それがお国柄というか。

あと、ライブ中に投げてケガをする恐れがあるという理由でCDや、壁などに貼って会場を汚す可能性があるということでステッカーなど、会場からアイテムの販売規制をかけられ困ったこともあります。特に欧米でそういうケースがあるようです。結局そのときは、終演後だけ販売していいと言われたのですが…。販売事情も結構違うんです。

そう考えると日本ってすごいですよね。

とても整った環境だと思います。しかし、現地の人はこうだからそれでいいということではなくて、やはり日本流のサービスも含めて、ちょうど良いバランスを考えていかなくてはと思います。Tシャツひとつにしろ、ディスプレイの仕方とか、サイズサンプルがあったほうがいいよねとか。BGMを流そうよとか、こういう備品を用意してとか。日本のアーティストの方が安心して海外で活動していける環境を整えていかないといけないと思っています。

郷に入って郷に従う部分もあっていいけど、日本流の細やかなサービスを文化として世界中に根付かせることで、マーチャン市場がもっと世界規模で広がるかもしれませんからね。

やはり海外で日本人アーティストのライブに来てくださる方は、その人たちのことが好きだし日本に興味があって来てくださる方が多いかと思います。むしろ日本流のライブの楽しみ方も含めてライブを楽しんでいただければと私は思っていますね。

海外のコンサートにグッズをどう用意するか

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