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2018.01.18

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2017年は何がヒットしたのか、2018年以降は何がヒットしそうか

2017年のヒット曲総括

2017年は、2016年のヒット曲が引き続きたくさん聴かれた1年でもあった。 ここでは、その2017年のヒット状況と、今後のヒット曲の在り方について、 『ヒットの崩壊』の著者でもある柴那典さんに寄稿していただいた。

text:柴 那典

今の時代にヒット曲を生み出すキーポイントは
“物語”と“踊り”にある。

2017年は星野源「恋」(2016年リリース)の年だった

 2017年は「恋」の年だった。様々な年間チャートからわかるのは、2016年10月にリリースされた星野源「恋」が異例のロングヒットを記録し、1年以上にわたって旋風を巻き起こし続けた姿だ。

「前前前世」RADWIMPS

「前前前世」RADWIMPS
※アルバム『君の名は。』収録/ユニバーサルミュージックジャパン/UPCH-20423(通常盤)/2016年8月24日発売

 ビルボードが発表した年間総合ソングチャート「Billboard JAPAN HOT 100 of the Year 2017」では、同曲がラジオ、ダウンロード、ルックアップ、Twitter、動画再生の5冠を達成。他曲を寄せつけない圧倒的なポイント数で1位となった。レコチョク発表の「dヒッツ年間ランキング2017」(ストリーミング)、「レコチョク年間ランキング2017」(ダウンロード)でも同曲はともに1位で2冠。JOYSOUND、DAMが発表したカラオケ年間ランキングでも、ともに1位。さらにTSUTAYAが発表したシングルCDのレンタル年間ランキング、USEN発表の「2017 年間 USEN HIT J-POPランキング」でも同曲が1位となっている。オリコンの年間シングルCDランキングでは唯一「恋」が入らずAKB48が上位に並ぶが、拙著『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)でも書いた通り、もはや今はCDの売上枚数が「曲がヒットしたのかどうか」という基準に関連がなくなった時代である。そういう意味でも、あらゆるチャートを総なめにした「恋」が、昨年に続いて2017年最大のヒット曲であったことに異論をはさむ人はいないだろう。また、星野源は2017年に新曲「Family Song」を発表している。この曲も年間チャート上位となっているが、「恋」がそれを上回ったということは、アーティストの人気もさることながら、曲自体がそれを上回る巨大な伝播力を持ってヒットした結果と言える。

 では、今の時代にヒット曲を生み出すキーは何か。ポイントは“物語”と“踊り”にある。その2つの要素が音楽と結びつくことでヒットは一過性のものではなく、長く愛され続ける楽曲となる。それを象徴するのが、「恋」と同じくビルボードの年間総合ソングチャートのTOP10にランクインしたRADWIMPS「前前前世」、ピコ太郎「PPAP」という2016年発表の2曲だ。

「PPAP」ピコ太郎

「PPAP」ピコ太郎
エイベックス/AVCD-93574/B(DVD付)/2016年12月7日発売

映画『君の名は。』の主題歌「前前前世」は、記録的なヒットとなった映画とともに一世を風靡し、公開終了後にも話題は継続した。映画は2018年1月3日に地上波で初放送された。秦基博「ひまわりの約束」が『STAND BY ME ドラえもん』の地上波初放送をきっかけにロングヒットした前例に照らし合わせても、「前前前世」は2018年に長く愛され続ける国民的ヒットになるはずだ。いっぽう、ピコ太郎も来日したトランプ大統領の晩餐会に招待されるなど話題を振りまき続けた。

「前前前世」は『君の名は。』の物語と、「PPAP」はみなが真似しやすいダンスと深く結びつくことでロングヒットとなった。そう考えれば、自身主演のテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌であり、エンディングで流れた「恋ダンス」も話題を呼び多くの人が真似した「恋」は、物語と踊りという2つのポイントをあわせ持つ「最強のヒット曲」だったと言えるだろう。

今の時代にヒット曲を生み出すキーワードとは?

 では、2017年に発表された楽曲でもっともヒットしたと言えるのはどんな曲か。ビルボードの年間総合ソングチャートで2位となったのはエド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」。3位はDAOKO×米津玄師「打上花火」で、4位と5位は欅坂46「不協和音」「二人セゾン」だった。

「シェイプ・オブ・ユー」エド・シーラン

「シェイプ・オブ・ユー」エド・シーラン
ワーナーミュージック・ジャパン/2017年1月6日発売(配信限定)

 エド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」は、アメリカのビルボード年間チャートでも1位となり、ヨーロッパやアジア各国でも軒並みヒットを記録。CDからデジタルへの移行が進み主要ストリーミングサービスが普及しつつある今、数年前にくらべてグローバルなヒットが日本でも同時代的にチャートで結果を残す例が増えてきた。良くも悪くも“ガラパゴス”と言われ独自な音楽性が発展してきた2010年代の日本の音楽シーンだが、この先は少しずつ風向きが変わっていきそうだ。

 映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌となった「打上花火」は、映画の興行収入が振るわないなかロングヒットを記録。米津玄師はアルバム『BOOTLEG』も20万枚を超えるセールスを達成し、シンガーソングライターとして時代を象徴する存在になったと言えるだろう。また、欅坂46は楽曲だけでなくファーストアルバム『真っ白なものは汚したくなる』もヒット。女性アイドルグループの世代交代を印象づけた。

「打上花火」DAOKO

「打上花火」DAOKO
トイズファクトリー/TFCC-89632(通常盤)/2017年8月16日発売

2018年はどんなヒットがあり得るのか?

 では、これらの結果を踏まえて2018 年はどんなヒットがあり得るだろうか? 予測は難しいが、やはり“物語”と“踊り”がキーになるのではないだろうか。「前前前世」や「恋」が象徴しているのは、単なるタイアップではなく、物語のテーマと深い部分で結びついた文字通りの“主題”歌として作られた曲がヒットする、ということ。アニメやドラマ、映画の主題歌を手掛けるアーティストは、ストーリーに深く関わりつつ自分たちらしさもアピールする楽曲を制作することが求められる。いっぽう、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」やファレル・ウィリアムス「ハッピー」などみんなが踊ることで楽曲に参加する形のヒット曲も生まれそうだ。

「不協和音」欅坂46

「不協和音」欅坂46
ソニーミュージック/SRCL-9402(通常盤)/2017年4月5日発売

 もうひとつ言えるのは、ヒットの基準が変わっていくだろうということ。特にストリーミングが中心となり音楽市場全体がV字回復となっているアメリカにおいては、ヒットチャート上位の曲はストリーミングにおける再生回数が数億から十数億となっている。SpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスは平均して1再生回数あたり0.5円程度を支払っていると言われるので、これらの楽曲は概算してレーベルやアーティスト側に数億円単位の収益をもたらすことになる。

 つまりCDが主流だった時代は“売れた枚数”だったヒットの基準が、ストリーミング主流の時代では“聴かれた回数”に変わっていくわけである。海外にくらべて停滞期が続いてきた日本の音楽業界も少しずつ変わり続けている。そうなると、特典商法のような1枚のCDをたくさん売るための施策は意味を失い、曲が多くの人に繰り返し聴かれること、つまり音楽それ自体の持つ力がヒットを成立させるために重要な要素となっていくはずだ。

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