特集記事

2017.11.17

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ネット新時代の音楽スタイルの「今」

音楽シーンでは今、インターネットが当たり前の世代がどんどん増え活躍している。どんな経緯でどんなアーティストが誕生してきたのか、改めてネット新世代の「今」を解説する。

text:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

しがらみに縛られないフラットな存在であるがゆえに、
続々と新しい才能が誕生し続けている。

重要なのはアーティストの“セルフプロデュース能力”

 インターネットの普及によって音楽シーンには多くの変化が起きた。音楽の届け方や楽しみ方に多様性が生まれたのだ。アーティストが育成されるコミュニティに広がりが生まれたとも言えるだろう。具体的には、これまでライブハウスというコミュニティで叩き上げで勝ち上がってきたバンドがシーンを制覇していったように、ネット空間に誕生した様々なコミュニティメディアによって、ネット新世代の音楽スタイルを持つ新しいアーティストが続々と誕生していることに注目したい。

 CDショップが激減し、プレイヤーも生産されず、CDセールスだけでは売り上げを立てづらい現在の音楽シーン。YouTubeやニコニコ動画など動画共有サービスの普及、InstagramやSoundCloudの存在、Spotifyなど世界へ通じるサブスクリプション型音楽サービスの浸透。まだまだ過渡期ではあるがシーンをひっくり返すゲームチェンジャーの存在によって、アーティストにも変化が求められている時代だ。

 そこで重要なのはアーティストの“セルフプロデュース能力”の高さだ。マネージャーやスタッフとともに一丸となって、ベースとなるクリエイティブを重視したアーティストブランディングの構築。クチコミのきっかけとなるようなリスナーとのSNSコミュニケーションの重要性。楽曲制作とともに、バズる(伝わる)ことをゴールとしたミュージックビデオを制作し、どんなタイミングでどんなメディアで発表していくか? ストリーミングサービスの活用法、TwitterやFacebookなどSNSの活用法など、スマホ時代の音楽マーケティングはやるべきことがとても多い。そして、それらトータルイメージの提供の結果、マッチングのきっかけとなる接点=キーワードとなるタグがぶら下がっていくかのようにブランディングは形作られていく。そんな、新しい道筋を切り開いているアーティストに注目をしたい。

米津玄師

米津玄師

ネットシーンで様々な新しい才能が誕生し続けている

 2017年最大のヒットが見込まれるアーティストとして、この秋4枚目のアルバム『BOOTLEG』をリリースした米津玄師がいる。ご存知の通り彼はもともとボーカロイドクリエイター“ハチ”名義でニコニコ動画をきっかけに「マトリョシカ」「ワンダーランドと羊の歌」などのヒット曲を生み出し、ネットシーンを牽引してきた逸材だ。2012年には本名である米津玄師名義で本人歌唱によるアーティスト活動をスタート。独創的なイラストも手掛け、Twitterやツイキャスでオーディエンスと直でつながるコミュニケーションにも長けており、2018年1月には武道館公演も実現する。

 昨今、テレビ番組『フリースタイルダンジョン』のブレイクもあり、一般的にも人気なラップシーン。ニコニコ動画発で誕生した“ニコラップ”カルチャーに中学3年で投稿したことをきっかけに、アンダーグラウンドなシーンに躍り出たDAOKOの存在にも注目したい。現在では、ラップのみならず王道のポップミュージックを生み出すアーティストに成長している。米津玄師とコラボレーションしたDAOKO × 米津玄師「打上花火」は、ヒット不在と言われる邦楽シーンにおいて、ネット発2017年最大のヒット曲と言っても過言ではないだろう。なお、“ニコラップ”カルチャーからはメジャーデビューして活躍中のぼくのりりっくのぼうよみや、電波少女が誕生していることも見逃せない。

DAOKO

DAOKO

 今回の特集で取材したまふまふは、動画投稿などでその才能の認知を広め、2016年には、同じくマルチに活躍していたそらるとのユニットAfter the Rainを結成。ネット文化を超えて、瞬時のうちにメジャーシーンへ躍り出た。ボーカリストだけでなく作曲家、作詞家、エンジニアとしても活動する才能豊かなまふまふは、さいたまスーパーアリーナで主催イベント“ひきこもりたちでもフェスがしたい!”を開催。10月に発売したソロアルバム『明日色ワールドエンド』は初週で7万枚突破するなど影響力を強めている。来春には幕張メッセ2DAYSが決定。工藤静香や、 アニメ『おそ松さん』オープニングテーマへの楽曲提供など作家としての活動も勢いも止まらない。

 “歌ってみた”文化から誕生し、YouTubeで1千万再生を超える楽曲「No title」「drop pop candy」を有する才能あふれる歌姫、れをる率いる3人組ユニットREOL(この秋、発展的解散)の活躍など、新陳代謝し続けているネットシーンではあるが、様々な新しい才能が誕生し続けていることに注目してほしい。

マーケットが世界に通じていることを肌感覚で知っている

After the Rain

After the Rain

 そんななか、チップチューンというゲーム文化から誕生した音楽ジャンルを武器に、ゲームボーイを楽器として扱い人気を広げたTORIENAが、tofubeatsを世に送り出したことでも知られるネットレーベルの雄、Maltine Records主宰のtomad氏がA&Rを担当するトイズファクトリーからこの夏メジャーデビューしたことは事件だった。彼女が活用した音楽コミュニティは、ダンスミュージック系クリエイターが好んで活用するストリーミングサービスSoundCloudだった。ネット世代は、マーケットが世界に通じていることを肌感覚で知っている。実際、SoundCloudをきっかけに海外で活躍を広げるクリエイターは、現在L.A.に移住し活躍する女子トラックメーカーQrionなど枚挙にいとまがない。

 そして注目したいのがゲーム文化×音楽アーティストのヒット現象だ。台湾のベンチャーが生み出した世界的人気なリズムゲーム『Deemo』をきっかけに、YouTubeでの再生回数を数百万単位で広げ、2017年夏には“SUMMER SONIC 2017”のレインボーステージに出演した音楽ユニットMiliが面白い。いわばリズムゲームがライブハウスの代わりとなる音楽コミュニティとなり、所属事務所との出会いやファンの拡散へとつながった。ここで注目したいのがリズムゲームというインフラとなったコミュニティの存在だ。快楽度の高いゲーム性と優れた音楽によるマッチングの可能性。従来のテキスト型や動画メディアに変わる音楽との新しい出会いの可能性がここには存在する。

 動画メディアでいえば、Instagramに特化したメディア展開を広げるポストデジタル時代のカルチャーを届ける全方位型メディアレーベル「lute」も面白い。“日本初のInstagram Storiesメディア”として、Maika Loubt?、ZOMBIE-CHANG、あっこゴリラなど、カルチャー色の強いアーティストをいち早く紹介し続けている。

鍵は、いかに憧れられる人間的魅力を持つ存在であるのか

lute

lute

 2018年以降の傾向として興味深いのが、もはや“どんなコンテンツが刺さるのか?”“どんな楽曲がリスナーに届くのか?”こういった考え方はオールドタイプなのかもしれない。それよりも、音楽的才能はもちろんとして、いかに憧れられる人間的魅力を持つ存在であるのか、ファッションも音楽性も真似したくなる存在であるかが、ネット新世代の音楽スタイルを持つアーティストの成功の秘訣として重要性が高くなっている。YouTube革命以降、可視化され既得権益の存在しない新興ネットメディア&サービスは、しがらみに縛られないフラットな存在であるがゆえに、続々と新しい才能が誕生し続けているのだ。

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