特集記事

2017.11.17

SPECIAL

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徹底追及第9弾!!

「チケット高額転売問題」について考える

転売目的でのチケット購入は「詐欺」地裁が有罪判決

これまで本誌でも取り上げ続けてきた「チケット高額転売問題」について、9月、神戸地裁で画期的な判決が下された。コンサートの電子チケットを転売目的で取得し詐欺罪に問われた男に対し、懲役2年6月、執行猶予4年という重い有罪判決が出たのだ。この件についての見解を、弁護士と音楽ジャーナリストに寄稿していただいた。

今回の事件の流れ

今回の事件の流れ

犯人の男は、転売目的であることを隠してチケットエージェンシーに対してチケットの購入を申し込み、転売目的の購入ではないとチケットエージェンシーを誤信させ、チケットエージェンシーにチケットを送付させたという行為をもって、詐欺罪(刑法246条)に該当すると評価された。

特別寄稿その1

神戸地裁での有罪判決が画期的な2つのポイント

text:東條 岳弁護士(Field-R 法律事務所)

転売目的のチケット購入行為は詐欺罪に該当すると、有罪判決

 2017年9月22日、「電子チケット スマホ貸出不正転売 神戸地裁有罪判決」(『毎日新聞』)という見出しで、「サカナクション」のコンサートの電子チケットを転売目的で取得したなどとして詐欺罪に問われた男に対し、神戸地裁が懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)を言い渡したとの報道がなされました(判決確定済み)。
 この事件の判決は、2つの点で非常に画期的なものと言えます。
 まず1点目は、従来犯罪行為としてとらえられていなかった行為を犯罪行為としてとらえ、有罪とすることができたという点です。これまでの高額転売による逮捕事例は、各都道府県の迷惑行為防止条例によって、会場付近でダフ屋行為を行う者を摘発するというものがほとんどでした。迷惑行為防止条例は、あくまで「生活の平穏」を保持することが目的となっていますので、ダフ屋行為が「公共の場所」で行われる必要があり、「公共の場所」ではないと解されているインターネット上での高額転売は、摘発の対象外となっていました。その結果、インターネット上のチケット転売において、月に2,000万円以上を売り上げる者もおり、事実上の野放しとなっていました。
 また、コンビニ等におけるチケットの転売目的購入について、「公共の場所」における行為であるとして迷惑行為防止条例違反で摘発した例もありました。しかし、ダフ屋行為が迷惑行為防止条例違反で摘発されたとしても、東京都の条例でいえば、その罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされており、ダフ屋行為によって得られる多額の利益にくらべれば比較的軽微な罰則であるという点で、高額転売を抑止するには不十分と言わざるを得ませんでした。
 本件では、転売目的でチケットを購入しようとする者が、その目的を隠してぴあやEMTGなどのチケットエージェンシーに対してチケットの購入を申し込み、その結果、転売目的の購入ではないとチケットエージェンシーを誤信させ、チケットエージェンシーにチケットを送付させたという行為をもって、詐欺罪(刑法246条)に該当すると評価されました。本件においては、実際に転売行為を行ったことが確認されることで転売目的であることが立証されましたが、インターネット上のチケット転売サイトにおいて見られるように、チケットの当選発表直後から券面価格の数倍もの値段で転売されているような場合には、これらのチケットの入手を転売目的の購入によるものと判断することもそれほど困難ではないと考えられます。
 このように、本件は、転売行為そのものを違法行為ととらえるのではなく、転売行為の前段階において必然的に存在する転売目的のチケットの購入行為を詐欺行為ととらえた点で、画期的なものと言えます。また、詐欺罪の法定刑は懲役10年以下であり、罰金がないという点で、迷惑行為防止条例違反などにくらべて非常に刑が重い犯罪であることに加え、犯罪によって得たチケットは没収の対象となります。
 したがって、この判決の確定を受けて、転売目的でのチケット購入に詐欺罪を適用する事例が、全国各地で複数出てくることが予想されます。これにより、従来、法律の網目をかいくぐり行われていた高額転売の抑止に高い効果を上げることが期待されます。

ファンも詐欺行為の実質的な被害者に含まれる

 2点目は、2年6月の求刑に対して、求刑通りの懲役2年6月、執行猶予4年という比較的重い判決が下されたことです。前述の通り、詐欺罪は法定刑としては懲役10年以下という重い犯罪ではありますが、本件は初犯であるにもかかわらず、比較的重い判決が下されました。また、報道によれば、本件を担当した裁判官は、判決で「一般客の参加機会が奪われる上、適正価格を超過した額の支払いを余儀なくされ、音楽業界に大きな不利益が生じる」と指摘しています。本件の量刑を判断するにあたっては、チケットエージェンシーが詐欺罪の直接の被害者となることのみならず、正規にチケットを購入してライブ等に参加しようとしているファン、高額なチケットを購入せざるを得ないファンも詐欺行為の実質的な被害者に含まれるとされていること、そして、それらのファンが実質的な被害者に含まれることにより、ひいては音楽業界に大きな不利益が生じることの3点が考慮されたものと言えます。
 この判決は、転売目的でチケットを購入し、それを高額で転売する行為が社会的に許容されるものではないことを示したという点においても、画期的なものであると言えるでしょう。
 以上のように、この判決がもたらす影響は少なくないものと思われます。転売目的で購入されたチケットが詐欺行為によって得られたチケットであるということになれば、それを購入したファンにも盗品等に関する罪(刑法256条)が成立する可能性があるため、音楽業界としては、買う側、売る側のいずれの面でも、転売行為に関与しないようファンに呼びかけていく必要があるでしょう。

特別寄稿その2

チケット不正転売が「犯罪行為」であると示された判決、その持つ意味とは

text:柴 那典(音楽ジャーナリスト)

「販売会社の防止策をかいくぐる巧妙な犯行」

 大きな社会問題となっているチケット高額転売問題。そのターニングポイントとなる判決が言い渡された。
 2017年9月22日、神戸地裁は人気アーティストのライブの電子チケットを転売目的で取得し詐欺罪に問われた男に対し、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。神戸新聞や毎日新聞の報道によると、男はサカナクションやback numberの電子チケットを購入し、計18枚を専門サイトで転売。約12万7千円の利益を得たという。
 神原裁判官は判決で「電子チケットを表示するスマートフォンを貸し出す形で転売し、販売会社の防止策をかいくぐる巧妙な犯行」と指摘。チケットの高額転売についても「一般客の参加機会が奪われる上、適正価格を超過した額の支払いを余儀なくされ、音楽業界に大きな不利益が生じる」と言及した。
 つまり、端的に言うと、今回の判決で「転売目的の電子チケット購入」が詐欺罪にあたることが示されたわけである。
 昨年以来、音楽業界が「転売NO」を訴えてきた背景には、転売サイトの普及に法規制が追いついていなかったことがあった。イベント会場周辺などのダフ屋行為は都道府県の迷惑防止条例で規制されているが、ネット空間は「公共の場」に含まれず、それゆえ摘発の対象外となっていた。結果として、ボット等のプログラムを駆使してチケットを買い占め、それをインターネット上で高額で転売することで1ヶ月に数千万円を売り上げる者もいた。
 そういったチケットの不正転売を防ぐ切り札として導入が進んできたのが、電子チケット。二次元コードをスマートフォンのアプリ上に表示し、コンサートの入場券とすることができる仕組みだ。スマートフォンを利用して本人認証がされるため、簡単に第三者に譲り渡すことができる従来の紙チケットにくらべて、転売を防止する効果がある。
 今回の事件は、会場近くで購入者にスマートフォンを貸し出すという手口で電子チケットの転売防止策をかいくぐったもの。結果としてその行為は発覚し、男は転売目的であることを隠してチケットを購入したことによる詐欺容疑で兵庫県警に逮捕されている。報道によると、男は3年間で約6,000万円を売り上げていたという。神戸地裁の裁判官は、その行為を「常習的で、職業的な犯行」としている。

チケット高額転売が司法の場で明確に「犯行」と表現

 今回の判決が持つ意味は何か。チケット高額転売が司法の場で明確に「犯行」という言葉で表現されたことにある。
 昨年、このチケット高額転売問題がクローズアップされた際、経済学者など一部の論者から「経済学的には問題ない」「価値のあるものに相応の値段が反映されるのは市場原理の原則」といったロジックで転売行為を擁護する主張が見られた。
 しかし、チケットキャンプなどの転売サイトで当選発表の直後から定価の数倍もの値段でチケットが転売されているような状況は、明らかに「市場原理の原則」からは外れるものだと言えるだろう。問題は、悪質かつ計画的な一部の「転売屋」が、不正な手段でチケットを買い占めることにある。それによって市場が歪められ、ファンの適正な機会が奪われることであるからだ。
 おそらく、今回の判決により不正な高額転売の摘発は全国に広がっていくはずだ。電子チケットのさらなる普及、公式チケットトレードリセールサービス「チケトレ」の拡充と利便性の強化、チケット価格の弾力化など、音楽業界側に求められる施策もまだ多い。ただ、問題の解決に向けて一歩進んだことは間違いないと言えるだろう。

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