名物プロデューサー列伝

2017.11.17

INTERVIEW

名物プロデューサー列伝

株式会社シテイル サウンドディレクター/ヴィレッジヴァンガード下北沢店バイヤー 金田謙太郎さん

vol.73 株式会社シテイル サウンドディレクター/ヴィレッジヴァンガード下北沢店バイヤー 金田謙太郎さん

今回のこのコーナーには、ヴィレヴァン下北店の名物バイヤーとして、Perfumeや水カンをフックアップさせたり、カバーブームを起こしたり、数々のヒットを仕掛けてきた金田さんが登場。現在はゲーム会社にもかかわりゲーム音楽をプロデュースしている金田さんに、“これまで”と“今”を聞いた。

text:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) photo:青木早霞(PROGRESS-M)

無名な人から順番にフックアップしたかったんです。 
僕は、ただ“音楽”を売りたいだけなんですよ。

カバーブームの仕掛人

音楽を売ることの難しさを感じる今の時代。金田さんはヴィレッジヴァンガードで数々のカバーコンピという実績を上げ、Perfumeや水曜日のカンパネラ、ぼくのりりっくのぼうよみなどのヒットのきっかけにかかわり、ゲームとともに音楽を伝える新展開など、新マーケットを切り開こうとチャレンジされてきたショップ店員発のプロデューサーだと認識しています。

そんな導入をしていただけるとうれしいです。でも、自分のことをプロデューサーだと思ったことはないので。

もともとは雑誌『ele-king』の編集者だったんですよね?

そうですね。大学を中退して、丁稚奉公させていただきました。でもすぐにディスクユニオンのDP1というテクノ専門店へ移りました。テクノが面白い時期でした。

そこからヴィレッジヴァンガード下北沢店へはどうやって?

当時、下北沢店で働いていた磯部涼というライターがいて。磯部から「楽だし楽しいよ!」と言われて入りました。その数ヶ月後、磯部がやめるんですけど(苦笑)。

当時の下北沢店はどんな雰囲気でした?

夏木マリさんが売れてました。小西康陽さんを源流とする、レアグルーヴカルチャーという感じです。

そこから、だんだんと金田さんセレクトが始まった?

当時、海外に小回りの利く卸しに「海外のこれ、手に入らないか?」って相談し始めたんです。DJミックスですね。

そういったミックスCD文化から『アニジャズ ジブリ』など、ヒットコンピの企画へと結びついたんですか?

完全にカバーコンピはDJカルチャーでしたね。レアグルーヴもカバーカルチャーですから。あと、YMCKのアルバムが下北沢から大ヒットしたんです。1店舗で5千枚は売れたんじゃないですかね。

それって、ヴィレッジヴァンガード下北沢店が生んだ最大のカバーヒット、Sotte Bosseの前?

前後してますね。実は源流があって。土岐麻子さんが『〜土岐麻子ジャズを歌う〜』というシリーズを出していて、今で言うシティポップ感覚にあふれたカバーアルバムでした。すごい売りましたね。

ヴィレヴァンでのヒット事例

“ヴィレヴァンっぽい”というジャンル感って生まれたじゃないですか? サブカルっぽいけどわかりやすいみたいな。ヴィレッジヴァンガードのお客さんってマニアックではなく、実は普通の子たちが多いですよね?

サブカル主義じゃないんです。普通に楽しんでいる子たちなんですよ。

そのセンスがSotte Bosseとして、J-POPのボサノヴァカバーというスタイルに着地したと。

1枚目だけで35万枚売れましたから。

それも、まったくスルーされそうになっていた作品を、事前資料で発見されたところからなんですよね?

まず、サンプルは全部聴くっていうのをやってました。そのなかに資料用CDがあったんです。「これ絶対売れるでしょ!」と思って大量に仕入れただけです。

と、同時に中田ヤスタカさんのユニットCAPSULEやPerfumeのブレイクへもかかわられてますよね?

CAPSULEはずっとヴィレッジヴァンガードで売れてました。それこそ小西(康陽)さんを源流とするHMV渋谷ノリ。でも、Perfumeはシーンで無視されていて。理由は、アイドルだからと。でも、僕はPerfumeの楽曲のほうが好きでした。だから推したんです。

中田さんって当時、音楽をインテリア的に扱う思想を持っていて、ある種ヴィレヴァンっぽいというか、金田さんの考え方ともつながってましたよね。

音楽に過剰にコンテクストを背負わせない、中田さんの姿勢に共感してました。音楽性は常にしっかりしてましたから。

Perfumeの展開で特に工夫されたことというと?

怒られちゃいますけど、ジャケットを隠しました。アイドルだからって理由で聴かれないのがもったいないなと。ポップに大きく「ジャケット見るな!」と書きました。

あと、プロデューサー展開でいえば、企画盤のプロデュースをたくさんされてましたよね。どのへんにこだわりがあったんでしょうか?

とにかく無名な人から順番にフックアップしたかったんです。ヒップホップのビートジャックと一緒です。ディスコのビートを海外のラッパーがジャックして「俺のほうがカッコいい解釈でアップするぜ!」っていうあれと一緒です。

株式会社シテイル サウンドディレクター/ヴィレッジヴァンガード下北沢店バイヤー 金田謙太郎さん

それこそ、ゲームの世界観へ 好きな音楽をぶち込んだら、 もっとリスナーが 増えるんじゃないかなって。

水曜日のカンパネラ

音楽業界的には、金田さんは怖い人というイメージもありましたが、音楽業界をどういうふうに見られていましたか?

これ、書いてもらえるまで何度も言うんですけど。ヴィレッジヴァンガードが知られてない頃に、あるメジャーレーベルに「サンプル盤ください」って電話したんですよ。そしたら「そちらはCDショップではないですよね?」って切られたんです。ずっと根に持ってますから(苦笑)。

きちんと対応するって、次のマーケットを育てることになると思うので大事なことですよね。それこそ水曜日のカンパネラは、まったく注目されていないファーストアルバム『クロールと逆上がり』の頃から大展開されるなど注目されていましたよね?

ファーストアルバムは、今もヴィレッジヴァンガード下北沢店でしか実店舗では置いてないんです。

売り場を限定する施策って、今っぽいマーケティング手法だと思います。水曜日のカンパネラのカバーEP『安眠豆腐』は金田さんプロデュースなんですよね?

ディレクターの福永さん(Dir.F)に提案しました。コムアイさんが『ひらけ!ポンキッキ』の「カンフーレディー」をカバーしたら面白いだろうなって。

それも、今やプレミアがついてますもんね。あと、下北店限定でアルバムにインスト盤CDをつけたりしてませんでした?

あれはもう、ケンモチヒデフミくんのトラックが良すぎて。最初はずっとインスト盤を推してたんですよ。

そんな水カンが今や。

今や、世界的な存在になってタイラー・ザ・クリエイターのフェスに日本人で唯一呼ばれちゃったっていう。

“音楽”を売りたい

ですよね。あと、金田さんはヴィレッジヴァンガードと兼任してゲーム会社で働かれているそうですね?

Cygamesさんにある株式会社シテイルというゲーム会社で、サウンドプロデューサーとして仕事してます。BGMや効果音などを担当してますね。

いろんなアーティストにサウンドをオファーされているんですか?

そうですね。新規のタイトルを担当しているんですけど、様々な現役ミュージシャンがゲーム音楽を提供してくれています。

それこそプロデュースワークですよね?

そうですね、そっちになったという感じですね。

なぜまたゲームなんですか?

Miliというアーティストなど、音ゲー(リズムゲーム)から生まれるアンダーグラウンドヒットが、実は日本のクラブカルチャーを延命させる存在だと思ったんですよ。『Deemo』とかね。

最近のトラックメーカーって、音ゲー好きで始まった方が多いですよね?

ゲームミュージックって、リピートするから刷り込みが半端ないんですよ。

ちなみに、ゲームプロジェクトでいえば、製作中という『音卓の騎士』という「ゲームとの連動を目指した音楽プロジェクト」はプロデューサーの立ち位置ですよね?

そうですね。単純にインスト作品を売りたかったんです。それこそ、ゲームの世界観へ好きな音楽をぶち込んだら、もっとリスナーが増えるんじゃないかなって。

種まきから始められているんですね。ほら、やっぱり金田さんはプロデューサーでしたよね?

僕は、ただ“音楽”を売りたいだけなんですよ。

PROFILE

株式会社シテイル サウンドディレクター/ヴィレッジヴァンガード下北沢店バイヤー 金田謙太郎さん

金田謙太郎

1974年生まれ、東京都出身。『ele-king』編集部、ディスクユニオンを経て、ヴィレッジヴァンガードに入社。現在はヴィレッジヴァンガード下北沢店でバイヤーをしながら、ゲーム会社の株式会社シテイルにも所属しサウンドディレクターを務め、インストゥルメンタルプロジェクトにかかわっている。株式会社キャンプファイヤーでキュレーターも。

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