#124 sumika担当 林 恭太郎さん株式会社エッグマン
sumikaの結成時から舵取り役としてメンバーとともに航海を続けている林さんは、サラリーマン時代を経て、やはり音楽の仕事がしたい!と音楽業界へ飛び込んだという。sumikaと歩み始めて4年半。たくさんの人とかかわるからこそ、フラットな立場でいることを心掛けているそうだ。
text:高橋 葵 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)
しんどい時期があっても、それを超える達成感が絶対にあるので。本当に中毒ですね(笑)。
メンバーが0から1にした1をいかに10にして、100にできるか
林さんがsumikaのマネージメントについたきっかけを教えてください。
もともと僕は、eggmanではない別のライブハウスにいたんです。でも、そのときからバンドのマネージメントみたいなことをやっていたんですよ。僕のブッキングで出たバンドがいいライブをしていて、「何か手伝えることがあったら手伝うよ」みたいな話から、ガッツリ手伝うようになって。ただ、当時は会社を通してはできなかったので(笑)、ライブハウスのスタッフをやりながら、完全にフリーランスのマネージャーとしてやっていたんですよね。で、それを平行線でやっていくうちに、そのバンドのベースがsumikaのサポートをやることになって。そのベースから僕はキョウちゃんって呼ばれてるんですけど(笑)、「キョウちゃん、今度新しいサポートやるから観にきてよ」と言われ、出会ったのがsumikaだったんです。
横のつながりで出会ったんですね。
そうなんですよ。その後sumikaもフリーランスで手伝うようになって。そのうちにeggmanに入らない?みたいな話があって、僕は今年の3月に入社したんです。だから、新入社員なんですよ。sumikaとのつきあいは結成当初くらいからなんですけど。
当初のマネージメントの方向性はどのようなものでしたか?
今もそれは変わらないんですけど、0から1にすることはメンバーにしかできないので、その1をいかに10にして、100にできるかな?ということを、当時から考えていました。
意識して取り組んでいたことは具体的にありますか?
たとえば「こういうアー写が撮りたい」っていうのを具現化するのもそうですね。ライブもそうなんですけど、僕らにはできないことがいっぱいあるので。音響も照明も、楽器のテックだったりも、いろんな人が必要になるので、それらをできる人たちを探す、っていうことが僕の仕事かなと。チームを増やしていくというか、いいパーティを作る。
彼ら自身が考えて進むべき。僕は良い方向に支えていく
人を大切にしているという部分は、MVのほうでも表われているのかなと思いまして。ファンの方がエキストラとして参加している楽曲もありますよね?
そうなんですよ。そういう“自分たちを応援してくれている人”を大事にしたい、誰かと一緒にもの作りをしたいっていうのは、メンバーのなかにあるので。僕らも僕らでがんばるから、あなたたちも一緒にがんばろう、みたいな。やったことがないかもしれないけど一緒にやろうよ!っていうのが彼らの狙いというか、やりたいことなんです。「MAGIC」のときも、エキストラの方みんなで待ち時間もずっと練習してくれていて。大変なぶん、「できたね!」っていう感動もありますよね。
結成したばかりのころからついていらっしゃるということで、プロデューサー的な面もあったりするのでしょうか?
いや、僕はあんまりそういうのは得意じゃないというか。どちらかと言うと、舵取りのほうをしてきたかな?と思います。メンバーがグイグイ進んでいくなかで、間違った方向には進ませたくないじゃないですか? メンバーが前を走っていると、周りが見えなくなることもあるので、いい方向に導いてあげる、というほうが大きいかなと。走っている道が正しければ、そこの道を照らしてあげるし、間違っていれば引き戻してあげる。そのほうがメンバーものびのびできますし。何よりも彼らの人生なので、彼ら自身が考えて進むべきだと僕は思うんです。良い方向に支えていくというイメージですね。
ボーカルの片岡が声が出なくなった時期があって…
これまでの活動のなかで一番印象に残っている出来事というと何ですか?
あれは一昨年かな? ボーカルの片岡が声が出なくなった時期があって。ライブを2、3連ちゃんして家に帰ったあとに、「声が出ない」っていう連絡があったんです。で、最初は「声を枯らしちゃったのかな? じゃあ休もうか?」という話をして。1本ライブをキャンセルして、2本キャンセルして…結果、約7ヶ月間休んだんです。でも、原因が長年にわたる体の歪みだってことがわかって、片岡から「キョウちゃん、声が出るようになったよ」っていう電話をもらったときは――何にも代えがたいあの感情は何て言ったらいいんでしょうね(笑)。安堵感というか、また音楽できるんだ、良かったなって純粋に思ったし。その電話から2ヶ月後くらいに、eggmanで復活ワンマンをやって。あのライブは、一生忘れられないなっていう。彼らと音楽の仕事ができて本当にうれしいなって、改めて思えた瞬間でした。
バンドの存続にもかかわる出来事でしたよね。
でも、ほかのメンバーは片岡が声が出なくても、「一緒にバンドやろうよ」「ギターは弾けるでしょ?」ってMCでも言っていて。「まあ、ギターも弾きたくなかったら、農家でも一緒にやりましょうよ」って(笑)。やっぱり“人”に恵まれているなっていうことをすごく感じた7ヶ月間でしたね。
林さんが思うマネージャーとしての、必要な能力やスキルは何でしょう?
一番はバランス感覚かな?っていう気はしています。先ほどの舵取りをしているつもりだっていう話もそうなんですが、人それぞれ考えていることが違うので、マネージャーはフラットな状態でいないと、全部を見失ってしまうなっていう。だから、僕もいろんなことを広く勉強するようにしていて。いろんなことを理解できる状態の自分を作っておいて、フラットに物事を見てバランスを取るということは一番意識しています。それが結果的に、いろんな切り口から物事を見られることにもつながると思いますね。
何事も拒まずいったん飛び込む。失敗したらやり直せばいいんで
音楽業界で働きたいという方々に向けて、林さんのこれまでの経験も踏まえてのアドバイスはありますか?
学生時代から、いろんな人としゃべったほうがいいなって思いますね。それこそ、いろんな人の“正義”がそこにはあるから。それを知っていて動くのと、知らずに動くのとではやっぱり違うし、自分のなかにまったくないアイデアをその人が持っていたりするので。人と話すと人の感情や空気感を読み取るのも徐々にできるようになると思います。難しいっちゃ難しいんですけど、誰にでもできる一歩だし、マネージャー業界で人としゃべるのが苦手っていう人はあまりいないなと思うので。僕もライブハウスに入って、それこそメンバーとしゃべらず、深い話をしていなかったら、今ここにいないと思うし、今もまだブッキングをやっていると思うんです。だから、何事も拒まずいったん飛び込んでみるっていうのも、すごく素敵なことだなぁと思います。失敗したらやり直せばいいと思うんで(笑)。
バンドも挑戦の繰り返しですもんね。
本当にそうだと思います。挑戦をやめたら、たぶん止まっちゃうというか。ここでいいやって満足したら、そこまでだと思うし、それは僕らも一緒かなぁと。何の仕事でもそうですけどね。しんどい時期があっても、それを超える達成感が絶対にあるので。成功しようが失敗しようが、そこまでやり終えたっていう達成感が絶対にくる。だから、本当に中毒ですね(笑)。やめられないです。不思議な仕事ですよね。
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手帳は携帯せず、スケジュールはPC上で管理している。細々したものはおしゃれなイラストが描かれたバンドグッズのポーチに分けて収納。ツアーにも対応したアイテムも取りそろえられており、歯磨きセットなどを入れた宿泊用ポーチも。 |
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