特集記事

2017.09.15

SPECIAL

特集記事

徹底追及第8弾!!

「チケット高額転売問題」について考える

これまでの総括

これまで本誌でも7回にわたって取り上げてきた「チケット高額転売問題」だが、ここ最近、不正転売による逮捕が相次いでいること、不正転売防止の意見広告が第65回朝日広告賞で「準流通・エンターテインメント部門賞」を受賞したことで、その認知は音楽業界だけでなく、一般層にも広まった。そこで今回は改めて、高額転売がなぜ問題なのか、それに対してどんな対策をしてきたのかなど、ここまでの経緯をまとめてみた。

text:柴 那典

突き詰めると、音楽文化の継承に大きな損失をもたらすことになってしまう。

相次ぐ不正転売による逮捕

 音楽業界の枠組みを超え、社会問題として大きな関心を呼び続けているチケット高額転売問題。本誌ではたびたびこのテーマを追及してきたが、今回は改めてこれまでの経緯と現状を振り返りたい。
 まずは、ここ最近、不正な転売で利益を上げている業者や個人が摘発され逮捕に至る事件の報道が相次いでいる。
 今年5月にはEXILEのコンサートチケットを転売目的で大量に購入したとして、警視庁が東京都在住の男性を都迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕。6月には嵐や関ジャニ∞のファンクラブ向けのサイトでコンサートチケットを他人になりすまし転売目的で不正に購入したとして、京都府警が陸上自衛隊の関東補給処用賀支処の防衛技官を電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕。同じく6月にはサカナクションの電子チケットを転売目的で購入したとして、兵庫県警サイバー犯罪対策課が和歌山県在住の無職男性を逮捕。さらには、埼玉県在住の通信販売業の男性がコンサートのチケットなどを転売して得たおよそ1億1,600万円の所得を隠していたとして、関東信越国税局から告発された。いずれの事件においても、逮捕された人物はチケットキャンプなどのチケット転売サイトを利用してチケットを高額で転売していたことがわかっている。

高額転売がなぜ問題なのか

 チケットの不正な高額転売が問題視されるきっかけとなったのは、昨年夏。2016年8月23日、「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」と、チケット高額転売取引の防止を訴える初の意見広告が新聞各紙朝刊に掲載された。日本音楽制作者連盟、日本音楽事業者協会、コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会の4団体によるもので、116組の国内アーティストと24の国内音楽フェス・イベントの賛同者として名を連ねた。
 チケットの転売がここまで問題視されるに至ったのは、チケットキャンプなどの転売サイトが登場し、テレビCMを打つなどして一般層に知名度を広げてきたことがある。いっぽうで、ネットダフ屋と言われる個人や組織は、転売者はボット(ネット上でチケットを大量に購入するプログラム)などの不正な手段を利用してチケットを大量に確保、これを転売サイトに高額で売り出すことで大きな利益を上げていた。
「突き詰めると、音楽文化の継承に大きな損失をもたらすことになってしまうんです」
 野村達矢氏(一般社団法人 日本音楽制作者連盟常務理事、株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション常務取締役執行役員)は、『音楽主義』75号の記事でこう語っていた。当初「#転売NO」というキャッチフレーズが大きく広まったが、もちろん、ライブやコンサートにやむを得ない事情で行けなくなったユーザーにとってリセールのニーズはある。問題はそのこと自体ではなく、ネットダフ屋による投機的なチケット買い占めと転売だ。これらが横行すると、本当にライブに行きたい音楽ファンの手にチケットが渡らず、アーティストやプロダクション側にとってもコンサートビジネスの基盤となるチケット収入に大きな打撃となる。そのことが問題の発端にあった。
 ちなみに、2017年7月には、この「チケット高額転売反対」の意見広告が、第65回朝日広告賞で「準流通・エンターテインメント部門賞」を受賞した。65年の歴史を持つ同広告賞において業界団体の意見広告が受賞対象になるのは珍しく、社会に大きな影響を与えたことが評価の対象となったと言える。

2016年8月23日に新聞朝刊に掲載された意見広告。大きな反響を呼び、意見広告としては異例の、朝日広告賞「準流通・エンターテインメント部門賞」を受賞した。

2016年8月23日に新聞朝刊に掲載された意見広告。大きな反響を呼び、意見広告としては異例の、朝日広告賞「準流通・エンターテインメント部門賞」を受賞した。

不正転売への対策

 啓蒙活動だけでなく、不正転売への対策も各方面で進んでいる。『音楽主義』79号では電子チケットによる取り組みを紹介。「スマホのアプリだけで動作して、スマホの画面にスタンプを押すと入場できるようなシステムを開発しました」とEMTG株式会社の佐藤元氏は語った。電子チケットのアプリには情報を更新する機能やプッシュ通知の機能もあり、グッズの販売時間や終演後のメッセージも伝えられるなど、チケットをメディア化することで新たなファンサービスに紐付けることも可能だという。
 また、コンサートにおける著作権使用料の規定も変わり始めている。以前はJASRACによって一番高い値段と安い値段の平均値を基準としてライブにおける著作権使用料が算定されていたが、はじめから高額チケットが設定されている場合は加重平均が採用されるなど、柔軟な対応が進んでいる。『音楽主義』80号の記事では「チケットにグッズが付いていたりとか、今までになかったようなチケット形態が出てきているので、新しい時代に合わせた著作権の運用について話し合っていきたいと常に考えています」と中西健夫氏(一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会会長、株式会社ディスクガレージ代表取締役社長)は語っていた。
 また、6月1日には公式チケットトレードリセール「チケトレ」のサイトが正式オープンした。やむを得ない事情で会場に行けなくなったファンが利用できる、適正価格でチケットを売買できるサービスだ。昨年夏の意見広告には「ヤフオクやチケットキャンプに代わるリセールサイトを用意すべきではないか」というユーザーの反響も多く、そういった声に対応するためのオフィシャルなプラットフォームだ。このサイトを用いれば会場に行けなくなったユーザーは定価でチケットを譲り渡すことができる。前述の野村氏は本誌『音楽主義』80号の記事で「まずは定価リセールから始めて、ユーザーの方々の声を聞きながら運営していくことになると思います」と語る。

法整備に向けての動き

 法整備に向けた動きも進みつつある。2017年4月21日には「ライブ・エンタテインメント議員連盟」(会長:石破茂衆議院議員)によるチケット高額転売の防止に向けた現状報告会が行われ、音楽業界関係者に加え、アーティスト代表としてサカナクションの山口一郎氏が出席した。6月1日には「チケット高額転売問題に関するプロジェクトチーム」(座長:山下貴司衆議院議員)が発足。チケットの高額転売を取り締まる法律の立法化へ向けた動きが進んでいる。『音楽主義』83号の記事で山下貴司議員はこう語っていた。
 「ダフ屋を取り締まっているのは国の法律ではなく、都道府県ごとの迷惑防止条例で、日本の47都道府県のうち41はあるんですけれども、条例がない地方自治体もあるんです。さらに迷惑防止条例は基本的に公共の場所での迷惑行為を禁止するもので、リアルではないインターネット空間は公共の場所と認められていない。つまり、取り締まれない場合が多いんです。(中略)にもかかわらず転売行為が当たり前のように行われていて、場合によっては10倍、20倍の価格で売られている。しかも、100人ほどいると思われる主要な転売者は、ボットなどを使用して、自分には必要のないチケットを確保して、売りさばくことを目的としています。これは新たな法律が必要だという認識が議員の間でも急速に広がっています」
 欧米ではボットを使用したチケットの不正な大量購入を禁止する法規制が施行される国が多くなっている。その導入に加え、高額転売を防止するためには、インターネット上のダフ屋行為を取り締まる何らかの法的規制が必要となっていくだろう。

今年4月21日には「ライブ・エンタテインメント議員連盟」の報告会も行われ、チケット高額転売問題への対策について議論。法整備に向け議員らも動き出している。

今年4月21日には「ライブ・エンタテインメント議員連盟」の報告会も行われ、チケット高額転売問題への対策について議論。法整備に向け議員らも動き出している。

次なるフェーズへ

 このように、チケット高額転売問題への対策は各方面で進んでいる。さらにそのフェーズは、チケット価格のあり方、チケット流通のあり方を時代に合わせてアップデートすることも含めた、より大きなフェーズへと至っている。『音楽主義』83号の記事で野村氏はこう語っている。
 「もともとのチケット価格に幅を持たせることも我々は考えていかなくてはいけないと思います。これまでは会場のどの席のチケットも、なるべく平等な価格で販売することを大切にしてきましたが、席によって価格にある程度の差をつけたり、付加価値があるチケットを考案することも、ユーザーのニーズに応えることになるんじゃないでしょうか」
 昨年夏の共同声明から賛同アーティストは徐々に増え、現時点で196組のアーティスト、33のフェス・イベントが賛同している。また、チケットの高額転売は、エンタテインメント業界にとどまらず、スポーツなど幅広い分野で社会問題化している。世間の関心も高く、今後も対策にさらなる進展が見られそうだ。

チケットのリセールは音楽業界公認の公式チケットトレードリセール「チケトレ」で!

チケットのリセールは音楽業界公認の公式チケットトレードリセール「チケトレ」で!

楽しみにしていたコンサートに急用などでやむなく行けなくなってしまった人(チケットを売りたい人)と、そのコンサートのチケットを買いたい人をつなぐサービス「チケトレ」。音楽業界公認なので、法外な値段のチケットや偽造チケットを手にしたり、詐欺被害にあう心配はなく、買う側も売る側も安心して利用できるのがうれしい。

「チケトレ」のポイント

(1)人気チケットも券面価格で取引

(2)公的書類による本人確認で安心取引

(3)音楽業界公認だから入場も安心

タグ: