#122 SHE’S担当 鉄谷六輔さん株式会社スピードスター・ミュージック
27才の頃に当時勤めていた一般企業を離れ、学生の頃から憧れていた音楽業界に飛び込み、ゼロからのスタートを切った鉄谷さん。バンドを担当したことで人と人のつながりの大切さに気づき、アーティストやリスナーと同じ目線に立って、自分なりのマネージメントを模索している。
text:高橋 葵 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)
そこに存在しているのは“人”でしかないですし、その向こうにもやっぱり“人”がいるので。
今しかないなと思った翌日に会社に電話して「やめます」と
SHE’Sご担当になってまだ8ヶ月ほどだそうですね。
はい。前から現場には行ってたんですけど、正式に担当になったのは去年の11月くらいからです。そもそもスピードスター・ミュージックに入ったのが1年前なんですよ。
その前は何をされていたんですか?
SMAで4年半くらい働いていました。契約終了になるタイミングで、次どうしようかなと思っていたところに「人を探してるんだけど来ない?」とお誘いをいただいたのがきっかけで、スピードスター・ミュージックに入ったんです。
なるほど。さらにさかのぼり、音楽関係の仕事をしようと思ったのはいつですか?
憧れは学生のときからあったんですけど、この業界に入ったのは27才のときなんです。大学を卒業してから3年間は一般の企業でサラリーマンをやっていて。3年働いたタイミングで人と話しているときに、「今、大学3、4年生のいわゆる就活時代に戻るとしたら、どういうところを受けたいと思う?」みたいな話題になって、やっぱりもう一回トライしてみようかなと。
転職は一大決心だったのでは?
でも、あまりにもそのタイミングが自分のなかでしっくりきすぎていて、今しかないなと思ったんです。「あれ、やっぱりあきらめてないんだな」って気づいて、翌日に会社に電話して「やめます」と(笑)。
ええー!
その当時は転勤が多くて、岐阜県の高山にいたので、まずは東京に戻ってくるところからでした。でも逆に一回リセットしないと動けないなっていう気持ちが強かったので、ふんぎりがつきやすかったというか。それで、Musicman-NETに載っている求人情報を見て、上から順に片っ端から履歴書を送るみたいなことをしていたら、たまたまSMAに入らせてもらったんです。
メンバーをどれだけちゃんと一致団結させてあげられるか
以前の会社でもマネージメントのお仕事をされていたそうですが、SHE’Sのマネージメントで気をつけていることはありますか?
バンド内での関係性と言うんですかね? たとえばリリース直前のプロモーション期間って稼働が多くなるんですが、詞曲を作っているボーカルの井上竜馬が単体で動く時間がどうしても多くなってしまって。メンバーが自分たちだけで活動していた頃は、当然4人で常にコミュニケーションをとりながら前に進めてきたものが、スタッフが多くなったり、稼働量が増えたり、4人が常に一緒にいるわけじゃないってなったりすることで、メンバー間の距離がちょっと離れてしまうんじゃないかな?って感じたりもするんですよ。
バンドが大きくなるほどに、たしかにそういった場面は増えそうですね。
だからメンバーを、どれだけちゃんと一致団結させてあげられるかっていうのは意識していますね。バンドの意志が固まっていれば、仮に意見が僕と逆を向いていたとしても“話し合い”になるんですよね。だから、バンドがバラバラだったり、我関せずな人がいたりすると、もったいないなって思っちゃうんですよ。結局ステージに上がるのは4人セットなので。
スタッフとして横にいても気持ちが感化されていく
SHE’Sのライブに関して意外だったのは、ホール公演がまだだったことなんですよね。9月から始まるツアーが初ホールということで。ピアノ=ホールというイメージがありました。
その印象は強いと思います。ホールに対する意外性があまり感じられないバンドではあるなと思うんですよね。でも、せっかくホールでやるからには、ちゃんとストリングスも入れたいなと。ストリングスの入っている曲がたくさんあるので、それを再現するっていうのは本人たちが前々からずっとやりたがっていたところではあったので。今回はそれの初披露ですね。先々、さらに大きいサイズの会場でも同じことをやっていけるようになったらいいなっていう目標もあります。
新たなチャレンジなわけですね。
本人たちが今すごく、“チャレンジする”“前に向かって、より攻めていく”っていうことに意識を向けていて、スタッフとして横にいても気持ちが感化されていくところだったりもするんです。座席ありのライブがありつつも、ライブハウスや野外フェスで、体を使って音楽を楽しみにきているお客さんともちゃんと対峙してほしいですし。たとえばaikoさんがホール公演を“Love Like Pop”、ライブハウス公演を“Love Like Rock”と銘打っているように、SHE’Sとしても差別化したら面白いかも、と思っていたりもするんですよ。最終的には彼らの楽曲であり、声でありというところが、まっすぐに伝わるという形を作りたいと思っているので、いろいろとやっていきたいですね。
中身の部分をいかにどっしり作り上げてあげるか
マネージメントという仕事の醍醐味はどういったところでしょうか?
一番大きいのは、アーティストと一番近いところで話をできる、見られるっていうところですね。悩み、不安、葛藤の部分もありますし、喜びの瞬間っていうものもありますし。その両方を同じタイム感で共有できるっていうのが一番の醍醐味だと思います。でも、本当に自分次第な仕事で、責任感は大事になりますよね。モノを売っているわけではないじゃないですか。そこに存在しているのは本当に“人”でしかないですし、その向こうにもやっぱり“人”がいるので。自分自身もちゃんと人間でいないと、何もその先には届いていかないだろうなっていう。アーティストにも同じことを求めつつ、自分自身でもそれを常に意識しなくてはと思いますね。
アーティストやリスナーと同じ目線に立って。
僕自身、27才のタイミングで音楽業界に入りましたけど、20才で専門学校を卒業して音楽業界に入った人は、業界歴でいったらそのときに6年、7年って経っているわけじゃないですか? 僕はそのときにゼロからスタートしているので、倍速でやってもたどり着かない部分、知らない部分、まだ経験できていない部分っていうのが、自分のなかでいまだにちょっとコンプレックスで。
その気持ちはわかります。
自分自身がマネージャーとしてできることって、アーティストにメッキを貼るようなことになってしまうんじゃないかな?とも思って。でもそのメッキってリスナーにバレるんですよね。遠目に見たらキラキラしていたはずなのに、となるのが一番怖い。それなので、メッキを貼るんじゃなくて、中身の部分をいかにどっしり作り上げてあげるかっていうほうが、今の自分にやれること、やるべきことかなと思うんです。それがアーティストと同じ目線だったり、リスナー目線だったりにたどり着いてるんじゃないかなと思います。
最後に、マネージメントに必要なスキルはどんなことだと思いますか?
もう“人間たらし力”ですね。
人間たらし力(笑)。人の懐に入っていくような。
どれだけ“人と話をすることを楽しめるか”でしかないと思います。だから別に勉強ができる、できないは関係ないと思いますし。人として、時間、約束を守りましょうみたいなことは大前提ですけど、それは別に音楽業界関係なしの話なので。どれだけ人たらしでいられるか。それにつきるかなと思います。
![]() |
スケジュールは手帳とPCのオンラインカレンダーで管理している。ケーブルやルーター、モバイルバッテリーなど、PC、スマホ周りのアイテムは常に持ち歩いているそう。名刺入れは渡す用と受け取り用の2つ所持している。 |
|
---|---|---|
![]() |
1. USBケーブル |
9. iPhone |