ライブハウス店長インタビュー

vol.40 梅田シャングリラ キイリョウタさん

vol.40 梅田シャングリラ キイリョウタさん

2016年末に店舗2Fに宿泊施設をオープンした梅田シャングリラ。遠方からやってくるツアーバンドにも、ライブだけに専念してくつろいでいってほしいというおもてなしの心にあふれている。同ライブハウスの「総支配人」に話をうかがった。

text:金本夕貴(TRYOUT) photo:TRYOUT

アーティスト負担を減らして、ライブに専念できる環境を作ること。
シーンの活性化と発展に、少しでも加勢できればと。

ジャンルにとらわれずボーダーレスな音楽を

シャングリラがオープンした2005年から当時の店長とお知り合いだったそうですが、キイさんが店長になられたきっかけは?

最初はバンドマンとしてシャングリラに出入りしていて、そのとき実は別のライブハウスの店長をしていました。それから数年後にオーナーが亡くなって箱を閉めることになり、そのときにシャングリラの店長に誘っていただいたんです。ただ、入社して1ヶ月後くらいに店長から「俺、やめちゃうんだよね」って報告されてびっくりしました(笑)。

突然の大役で大変だったのでは?

1?2年は休みなく働き詰めで、めっちゃ大変でした(笑)。前の箱よりキャパが大きいし、出演者もインディからメジャーと幅広く、スタッフとも面識がなかったので慣れないことの連続で…。今はブッキング担当、デスク、対外営業と業務担当を分けて行っていますが、当時は人手も足りなかったので、1人ですべての作業をしていました。たとえば以前の箱だとパーティ用にイベント貸しするケースがあったのでスケジュールが埋まることもありましたが、シャングリラはそういうケースがあまりなく、ブッキングには特に苦労しました。スケジュールを埋めないといけないのに毎日バンドにふられることがデフォルトで…。メンタルのダメージは大きかったですが、ただ、決まったときはうれしかったですね。そのほか、若手バンドの育成、イベントの企画実施、ツアーバンドのケアを行うのも大切な役割です。すべての業務を一通り自分で行ったことも、大きな経験値になったと感じています。

シャングリラが大切にしている世界観や音楽性について教えてください。

ロックやパンクオンリーなど、特定のジャンルだけに特化した箱は少なくありません。ただ、僕自身がヒップホップやレゲエ、ポップスなど様々な音楽に携わってきたこともあり、シャングリラはジャンルにとらわれずボーダーレスな音楽を楽しむことができます。だからアイドルやヴィジュアル系までいろんな人がステージに立つし、お客さんの層も様々で面白いです。

非日常感を味わえる大人の桃源郷をイメージした世界観

内装なども特徴的ですよね。

コンセプトは“百花繚乱”。色とりどりの鮮やかな音楽がカテゴリーを越えて咲き乱れる…そんな今までにない特別な空間を演出したいという思いが詰まっています。建物の装飾にもその思いを込めており、夜になると存在感を主張するネオンサインが光る外観、赤のドレープカーテンが下ろされたムーディなステージ、きらびやかに輝く豪華絢爛なシャンデリアなど、官能的でエロティックな非日常感を味わえる大人の桃源郷をイメージした世界観が特徴です。これは弊社LD&K代表の大谷の店舗コンセプトでもあり、その他飲食店舗でもムードを大切にした店作りがなされています。そのためシャングリラはほかのライブハウスにくらべて学生バンドの出演が少ないです。キャパシティが大きいこともありますが、大人の雰囲気が漂っていることも理由のひとつにあると思います。気軽に行ける空気感ももちろん重要ですが“いつか大人になったら自分もあのステージに立ちたい”と思ってもらえるような、若者にとっての憧れの存在でありたいとも考えています。

店長になった7年の間で、関西の音楽シーンになにか変化などは感じられましたか?

ここ3?4年でキュウソネコカミをはじめ、KANA-BOON、夜の本気ダンス、感覚ピエロなどの若手バンドが全国区で活躍し、関西のロックシーンが盛り上がってきているのを感じています。キュウソネコカミやKANA-BOONは、シャングリラおなじみのDJイベント“onion night!”にも昔から出演してくれていましたし、顔なじみのバンドが話題になり売れていくときの興奮は、言葉では言い表せないほど感動します。

泊まれる場所がないため交流が少なくなっていた

昨年12月23日に“泊まれるライブハウス”をコンセプトにした、全国で初めてのライブハウス一体型のホステル「MAMBO Inn」をオープンされましたが、その経緯は?

訪日観光客の影響で大阪の宿泊施設の予約が取れず価格が高騰しており、その余波で若手のバンドマンやアーティストの活動に影響を与えています。そんな状況を危惧して、シャングリラを運営するLD&Kの代表である大谷が企画したのがきっかけです。せっかく東京のバンドがツアーで大阪に来てくれたとしても、泊まれる場所がないため打ち上げもせずに日帰りせざるを得ず、結果東京と大阪のアーティスト同士の交流が少なくなっていました。また、同時期に心が痛むような夜行バスの事故が増えたこともあり、計画を発案してからは1年足らずというスピードで実現しました。あまり活用していなかった2Fのイベントスペースをリノベーションすることとなり、音楽に特化したクラウドファンティング「we fan」で内装工事費1千万円のうち150万円ぶんの出資を募ったところ、企画に賛同してくれた音楽仲間や応援してくださったファンの方々のおかげで、最終的には目標額を上回る170万円を集めることができました。

オープンしたあとの手応えや、今後の目標などはありますか?

アーティストの負担を減らして、ライブに専念できる環境を作ること。そして、そんな彼らが作り出す音楽が、大勢の人に触れてもらえる機会を作ること。地道な活動ではありますが、音楽シーンのさらなる活性化と発展に、少しでも加勢できればと考えています。また、こういった施設を用意したことで、今までよりもいっそう遠方のバンドを呼びやすくなりました。あ、ちなみに僕の肩書きが総支配人なのは、宿泊施設の掃除やベッドメイクもしているからです(笑)。また、1人当たり3,500?5,500円とリーズナブルな価格に設定し、女性専用部屋も備えたことで、徐々にですが口コミで噂を聞いた方が来てくれることもあり、バンドマン以外の利用者も増えつつあります。

同じ志を持つライブハウスやバンドと一緒に盛り上げたい

今後の関西音楽シーンについて、また、シャングリラの展望を教えてください。

箱があるだけでは音楽業界は動きません。だからこそ関西のバンドと一緒に、音楽シーンを盛り上げるためのアイデアをたくさん出し合い、ハードルを下げずにもっと楽しいことや面白いことに挑戦していきたいですね。シャングリラが大阪の音楽シーンを変える、というのは少しおこがましいですが、同じ志を持つライブハウスやバンドと一緒に盛り上げていければと思います。たとえば心斎橋のライブハウスPangeaのレーベルに所属する愛はズボーンも、うちでよくライブやイベントをしてくれています。目標やキャパシティに応じて、いろんな場所で活躍できる環境が整っているのは、アーティストにとっても音楽業界全体としても良いことだと感じています。今注目しているバンドは、密会と耳鳴りです。ラッシュボールやミナミホイールにも出演しており、徐々に集客率を上げている若手の注目株です。これからも関西を中心に、音楽業界の発展のためいろんなことにチャレンジしていこうと思います。

梅田シャングリラ

梅田シャングリラ

大阪市北区大淀南1-1-14
06-6343-8601

2005年に大阪梅田にオープンしたライブハウス。キャパシティは約350名。シャンデリアや赤を基調にした絢爛な空間が広がっている。2Fでは宿泊施設MAMBO Innも運営している。

宿泊施設概要

MAMBO Inn

06-6343-8602
チェックイン:15:00?22:00/チェックアウト:11:00

クラウドファンディングを経て、2016年末にシャングリラの2階にオープン。定員4名の部屋が3室あり(1室は女性専用)、1人あたり3,500〜5,500円(税別)で宿泊できる。共用のシャワー、トイレも完備。

無料サービス(共用スペースにて)
ポット、冷蔵庫、電子レンジ、トースター、ドライヤー、タオル、館内Wi-Fi完備
有料サービス(受付時間内のみ)
洗濯機1回¥200(屋上に物干し台あり)


MAMBO Inn01

冷暖房完備の部屋には木製の2段ベッドが2台。共用スペースではドライヤーやレンジ、Wi-Fiも利用できる。

MAMBO Inn02

レンガ調の壁にラタン素材の家具が並ぶ広々とした共用スペース。Wi-Fiも完備しており作業もはかどる。

MAMBO Inn03

ぬくもりのある洗面周り。女性専用部屋には室内にシャワーと洗面台が設置されている。

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