音楽にまつわる「ちょっといい話」

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第28回 カセットテープの人気の秘密[CASSETTE STORE DAY JAPAN]

今回のゲスト

今回のゲスト

松葉泰明さん(左)

(株式会社ワイズコネクション代表取締役社長)
1973年生まれ。2000年に、イベントや番組プロデュースなどを手掛けるワイズコネクションを設立。太陽光発電によるロックフェス“THE SOLAR BUDOKAN”主催も。

今井 良さん(右)

(株式会社Vinyl Star International代表取締役)
1961年生まれ。アナログレコード、カセットテープに特化した製造、レーベル運営業務を行い、カセットストアデイ日本事務局を運営するVinyl Star Internationalを2016年に設立。

ここ数年、カセットテープが再び盛り上がりを見せている。カセットテープとは、磁気テープに情報を記録するデバイスだ。CDやレコード盤のように作品リリースすることはもちろん、CD-Rのように空のブランクテープに自由に録音をすることができるため、選曲やトークを吹き込むなど自分を表現できるメディアとして80年代に人気なアイテムだった。ある種、ブログやSNSのような役割としてネットカルチャーへと通じるツールだったのかもしれない。
そんなカセットテープを21世紀に再び盛り上げようという試みで発足した“カセットストアデイ”をご存知だろうか? そもそも、カセットテープの生産が始まったのは1966年。1979年にウォークマンが発売されて世界的に大ヒット、最盛期の1988年には7,600万本のカセットテープが生産されたそうだ。カセットテープは生産コストが安いうえ、作り手が意図した曲順で聴いてくれるというメリットも持っている。データにはない独特のデザイン性を持ち、触れられるモノであるポイントにも注目したい。

英国のインディレーベルが共同で“カセットストアデイ”を開始

カセットテープは“デジタルの次の新しいメディア”として、グッズとしての付加価値を持つ可能性を秘めている。そこで、カセットストアデイ日本代表事務局の松葉泰明氏、今井良氏に話を聞いてみた。

“カセットストアデイ”はイギリスから始まったのですか?

松葉2013年に、英国の国営放送BBCのDJジェン・ロングのKissabilityをはじめとする英国のインディレーベルが共同創業者としてスタートしました。日本は、もともと今井が“レコードストアデイジャパン”にも関与していて、“カセットストアデイ”がUKであって、日本でやる組織を探しているという話を聞いたんですね。

今井UKから2016年の6月にOKと連絡が来たんですよ。でも実は運営会社であるVinyl Star Internationalを登記したのは7月なんです。バタバタだけど10月に勢いで始めたのが今年度でした。

松葉カセットブームを加速するには、牽引する旗振り役が大事だと思ったんです。“カセットストアデイ”のイベントではサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんや、僕が業務提携マネージメントしているシアターブルックの佐藤タイジ、そしてカセットDJとしてNONA REEVESの西寺郷太さんにも参加していただきました。

今井もともと、サニーデイ・サービスのカセットでリリースされたアルバム『透明DANCE TO YOU』はうちに発注をしてもらって作らせていただきました。Vinyl Star Internationalは、レーベル業務と製造業務の両方をやっています。

ラジカセを2台並べてDJしたら音がめっちゃ良かったですよ

カセットテープ文化は音楽業界以外、ファッションシーンからも人気があるのが面白い。当時の盛り上がりを知らない20代がカセットというアナログなガジェットに新鮮さを感じたのも、今の人気の理由のひとつのようだ。

カセットテープは、カセット専門店である中目黒ワルツなどで盛況となり、テレビや雑誌メディアでも取り上げられ盛り上がってきていますよね。そもそもの復活のきっかけは何だったと思いますか?

松葉アナログレコードの盛り上がりは世界的兆候なんです。先んじてアメリカやヨーロッパで起きましたが、レコードのあとにカセットの流れが来るのは必然だと思っていました。デジタル対応にダウンロードコードを付けて販売できることも背中を押していると思います。データだったらYouTubeで無料で観られるじゃないですか? それが、カセットテープだったらモノであるというグッズ価値として若い世代に新鮮に映ったのでしょう。売り手としても、小ロットから作れるし、アナログ盤よりコンパクトなので売りやすさもあります。

カセット自体のプラスチック素材のカラー展開が豊富というのもアイテムとして楽しいですよね。

今井50種類くらいあるんですよ。アルバムタイトルなど、カセット表面に直接プリントもできますし。それに、今は音も24ビットで収録できるんですよ。

カセットテープは音がこもるというイメージもありましたが、実はきちんとレコーディングした作品は音が良いし、テープの特性としてあたたかみを感じられたり、作品によってはローファイ感をうまく表現できる使い勝手の良いアイテムなんですよね。

松葉“カセットストアデイ”のイベント時に、カセットDJをNONA REEVESの西寺郷太くんでやったんですよ。彼が持っているコレクションのなかからマイケル・ジャクソンやプリンスなど得意ジャンルの選曲で、ラジカセを2台並べてDJミキサーをはさんでDJしたんですね。ライブハウスのちゃんとしたPAを通したら音がめっちゃ良かったですよ。カセットだからこもっているなんてことはなく、ちゃんとパキーンと音が伝わってきました。会場には若い女子も結構いて、カセット文化に触れてないような子たちも興味津々でしたね。

先日、ファッション誌『NYLON JAPAN』の編集長がカセット文化について語ってたんです。実はカセットにはファッションアイテム的な魅力がありますよね?

松葉そうなんです。ファッションと音楽を結びつける役目としてカセットテープは強いと思っています。たとえば、プレイヤーを持っていない若いリスナー向けに、ポータブルプレーヤー付きで販売したら面白いですよね。今ってUSBアウトで音源をMP3化できるプレーヤーもあるんですよ。

今井各所とコラボレーションして、音源とプレーヤーのセット販売を広めていきたいと思っています。

松葉鍵はそこなんです。プレーヤーが普及するかどうか。

今井それこそウォークマンを生み出したソニーさんにも話には行ったんですけど、もう金型がないみたいなんです。作っていたチームも解散しちゃったらしいんですよ。

ラジカセは家電量販店でもニーズが上がっているそうです

かつて人気を誇った、カセットテーププレーヤー。カセットをカルチャーとして発展させるには、ソフトだけではなく、プレーヤーの販売と普及が急務だろう。チームが解散したとはいえ、80年代当時人気だったデザイン性の高いウォークマンなどの復刻も期待したいところだ。たとえば、2016年冬に任天堂によって「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」が再構築され大ヒットしたように、懐かしさは世代を超えて大事なマーケティング需要になり得るはずだ。

そんななか、若い世代からのリクエストもあって昨今、クラウドファンディングを通じてカッコいいラジカセが欲しいという動きが活性化してますよね。

今井松崎順一さんというカセット博士と呼ばれている方がいるんですよ。彼らのチームが「Makuake」というクラウドファンディングでデザイン性にすぐれたラジカセの販売を企画されています。カセットストアデイジャパン事務局としてもハードを絶対に広げたいと思っています。実はラジカセは家電量販店でも売り場が広がっていたり、ニーズが上がっているそうなんです。ラジオ人気の再熱もありますよね。

松葉現状ソフトが先行してるんですよ。ハードメーカーが一番追いついてないんです。ハードを作る某メーカーさんにもアプローチしたんですけど、まだ様子見な感じでした。カセットテープを販売するメーカー、マクセルさんなんかは、カセットテープUDシリーズを復刻販売したら、売り切れるぐらい大盛況なんですけどね。

今井マクセルさん自体も予想できなかったみたいで6万本が販売前に量販店で取り合いになったそうです。HMVやタワレコ、ディスクユニオンにはまわってないんですよ。そんな状況なんです。

それこそアナログだったら、デザイン性の高いスピーカー付きレコードプレーヤーが1万円以下で販売されて売れた事例もあります。中古ラジカセ市場も盛り上がっているそうですね。

今井動いてますね。どんどんプレミアム化が激しくなっています。12月には池袋パルコで、ラジカセ展が行われたんですよ。

やはり注目な市場ということですね。それはそうと“カセットストアデイジャパン”は、2017年もやられるのですか?

松葉もちろんやります。僕らの役目は啓蒙活動としてカセット文化を広めることです。継続的にイベントやキャンペーンを行っていきます。ぜひ、興味があるアーティストやプロダクション、メーカーの方は声をかけてほしいです。

音楽を聴けるガジェット的魅力はもちろん、ファッション方面とのコラボが可能なグッズとしての魅力にも注目したいカセットテープ。願わくば、ハードメーカーによるおしゃれなラジカセやポータブルプレーヤーの再発、そして音楽業界による魅力的なソフト増産に期待したい2017年だ。

text:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

CASSETTE STORE DAY JAPAN

CASSETTE STORE DAY JAPAN

カセットテープ文化の普及のために、2013年にイギリスで始まった“カセットストアデイ”。昨年は10月8日にイギリス、アメリカ、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなど、そして日本でも全国のレコードショップでオフィシャル開催され、限定カセットもリリースされた。また、前日の7日には渋谷ミルキーウェイでスペシャルイベントも行われ、シアターブルックの佐藤タイジやサニーデイ・サービスの曽我部恵一と田中貴らのライブ、トークのほか、NONA REEVESの西寺郷太によるカセットDJパフォーマンスも注目を集めた。

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