特集記事

2016.09.13

SPECIAL

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ライブハウスの深夜営業が可能に!?

「一般社団法人ライブハウスコミッション」とは?

近藤正司さん

SPECIAL INTERVIEW 近藤正司さん
株式会社スペースシャワーネットワーク取締執行役員音楽ソフト事業本部長、一般社団法人ライブハウス コミッション代表理事

昨年6月の改正風営法の成立(施行は今年6月)により、クラブ同様、ライブハウスも深夜営業の道が開けたが、それを受け、今年4月にライブハウス事業者からなる「一般社団法人ライブハウス コミッション」が設立された。ナイトエンタテインメントを含むライブハウスシーンの活性化を考えるこの団体の代表理事に、設立の経緯と活動内容をお聞きした。

text:吉田幸司

まずは特定遊興飲食店の営業許可のサポート。そして様々な課題をひとつずつ解決していきたい。

改正風営法の勉強会から自然発生的に団体設立へ

ライブハウスコミッション設立までの経緯を教えてください。

ライブハウスコミッションは、ライブハウスの楽しみ方を拡張したいということが一番の根本です。今まで、ライブハウスは深夜の営業ができなかったんですね。事業主として深夜市場の開拓に魅力を感じていたものの、法を遵守するとなると、旧法のなかではそれはできなかったんです。

旧風営法では、深夜営業をするためにはたくさんのハードルがありました。

それが去年、風営法の改正の動きがあるという話が上がって、弁護士たちと勉強を始めたんです。そのなかで自然発生的に、深夜営業に対する次のステップを踏みたいと考えている人たちのために、何か団体があったほうがいいとなった。だったら有志でそういうことをやってみるのもいいんじゃないか、というところでライブハウスコミッション――その当時はまだ名前もなかったんですけど――がスタートしたんです。

去年6月に成立した改正風営法では新たに「特定遊興飲食店」というカテゴリーが設けられ、要件を満たせば深夜営業が法的に認められるようになりました。

その特定遊興飲食店の営業許可を取得するには、まずその対象地域にあるかどうかという場所的要件があります。次に構造的要件。店内総面積の20%を飲食スペースとして確保し、その照度が10ルクス以下にならないようにできるとか、遮蔽物がなく店内を見通せるとか、それぞれのお店がその定められた基準に適した内容にしないといけないんです。ということもあって、それにどう対応していくのがいいのかという議論を、7社の方々が集まって始めたのがライブハウスコミッションの出発ですね。

特定遊興飲食店の許可を取得するための対策を勉強するところから始まったと。

そこで、たとえば第1号で特定遊興を取られたのはリキッドルームさんなんですけど、そのときに実地検分があるんですね。警察の担当の方がやってきて、ここはこうですね、ああですねとか、寸法も全部、実寸で計るんです。そういうことをリキッドルームさんから教えてもらうことで、次に申請を出すときの対策ができる。あそこはこうだった、ここは改善を指摘されたとか、そういう情報を得ていけば、行政にとってもそれはメリットじゃないですか。

お互いにとっていいですよね。

そういう情報を共有して、チェックポイントを明確にして、そこをちゃんと準備していれば、時間的にも物理的にもスムーズになる。実際に申請を出すのは、それぞれのお店なんです。すでにロフトさんやリキッドルームさんみたいに許可を受けたお店もありますけど、まだ申請に至ってないところもたくさんありますので。申請を出してから許可が下りるまでの目安は55営業日、つまり最短で2ヶ月強かかるんですけど、みんながバラバラに動いていると大変じゃないですか。情報を共有できていれば、いろいろなことが楽になる。物理的にも、時間的にも、もしかしたら精神的にも。

深夜営業許可取得のサポートとナイトエンタメの活性化が目的

そしてライブハウスコミッションを今年の4月に設立しました。実際に何をしていただける団体かというと?

まずは特定遊興飲食店の営業許可のサポートですね。これが集まった第一の理由なので。それから、お店単位でそれぞれが個々に抱えている問題点や悩みを話し合うということも。あのときうちらはこうしたとか、そういうことを共有することで、次何かが起こったときにはこうすればいいんじゃないかということを、我々なりに準備することができるんじゃないかと。

ライブハウスとしての危機対策ですね。

それと、深夜営業をするとなると、地域との問題も出てきますよね。ゴミであったり騒音であったり、地域の方からすると、集まってくる人たちの混乱が起きるんじゃないかとか。活性化すればするほどそういうことが起こるかもしれない。そのときにどうするかということを、団体としても考えていく。それは別にクレームに対応するというだけじゃなく、みなさんが一緒になってナイトビジネスを活性化するにはどうしたらいいのかということもありますし。

負の部分だけじゃなく、より良くするためのことも一緒に考えていくと。

たとえば、集まってくる人たちはお腹も空くじゃないですか。そういうときに、何らかの出入り自由な状態にすれば、近くのバーや飲食店に行くだろうし。

地域の活性化にもつながりますよね。

それから、すぐにできるとは思ってませんけど、深夜の交通インフラの話がやっぱり出てきています。それを行政であったり、東京都であったり、もしかしたら私鉄やバス会社の方に相談したりということもしていきたいと。住居地域と商業地域をちゃんと結ぶことができないと、朝までずっといなきゃいけなくなるじゃないですか。

そこに行ったら朝まで帰れないとなると、ナイトエンタテインメントの敷居がぐっと高くなってしまいます。

そうなんです。それはすぐに答えが得られるものではないにしても、その課題を解決するために、次の一歩を示すことができるかもしれない。各店舗だけだとなかなか難しいですよね。それを団体としてできれば、行政に対しても、電鉄バス会社に対しても相談をすることができる、あるいは考えてもらうことができるんじゃないかと。

近藤正司さん

情報を独占するのではなく、共有することで、それぞれがランクアップしていくのが理想ですね。

各店舗単体では難しいことも団体であれば可能性が広がる

確かに。

あとは2020年の東京オリンピックに向けてのインバウンド対策。中国人観光客の爆買いも今ちょっと落ち着いて、じゃあ次の手立ては何かというと、やはりエンタテインメントじゃないかと言われています。たとえば渋谷だと、外国人観光客は昼間にやってきて、ハチ公前やスクランブル交差点で写真を撮ったら別の場所に行き、宿泊は渋谷ではしない。それは夜楽しむ場所があまりないからと言われてますけど。だったら2020年を目指して、クラブはもちろん、ライブハウスとして何かできないのかと。それから、ダンスミュージックにかぎらず、日本の音楽を聴いてもらうためにはどうしたらいいのか。なかなか海外から日本にやってきて、バンド名だけずらっと書いてあってもわからないじゃないですか。だったら、それを聴いてもらうには事前にどんなことをやればいいのかとか。

広報的なことですね。

これはインバウンドにかぎらずですけど。すごく情報過多で選択肢は増えているものの、その情報の選択ができない。なので、どんな人にはこれがいい、こんな人にはこれがいい、ということを的確にアドバイスできるようなことをしないといけない。

コンシェルジュ的な。

そういうことをライブハウスコミッションでは今後考えていきたいというのが思いとしてはあります。

やるべきことは膨大ですね。

考え始めればいっぱいあります。そういうこともお店単位で考えていたら、考えて終わるというか、とてもできないで終わってしまう。団体であれば、プライオリティをつけながら、様々な課題をひとつずつ解決していけることもあるんじゃないかと。

音楽シーンそのものを活性化させるためにも

つまり、ライブハウスコミッションはナイトエンタテインメントを含めたライブハウス文化の活性化を考える団体だと。

にしたいなと思っています。ライブハウスシーンを活性化させるためには深夜というひとつの時間の利用もある。それも単に深夜という時間が増えるだけじゃなく、深夜には深夜の楽しみ方がある。アーティストにとっても、深夜だからこそできることもあるかもしれないし。このDJとこのバンドのコラボレーションで夜中にやればもっと楽しい企画ができるんじゃないのかとか、アーティストとアーティストの新しい出会いがあるんじゃないのかとか。そういうふうに、音楽シーンそのものを活性化させるためのひとつの手段として利用してもらえないかなということもありますし。

突き詰めると、ライブハウスの魅力とはずばり何でしょう?

やはり、アーティストに一番近い場所であるということでしょうね。アーティストに一番近くて、お客さんに一番近い。ライブハウスの概念みたいなものはそれぞれ違うと思いますけど。ただ、共通点はどこかにあるので、ライブハウスコミッションは、そこの部分でもっと良くなるためにはどうしたらいいかを考える。お店はお店としてそれぞれの個性を発揮して切磋琢磨していただく。だからライバルでもあるけれども、ライバルとして個性を磨く部分と、仲間として一緒に解決する部分というのを持ったほうが、よりいっそう切磋琢磨できるんじゃないかと。ライブハウスコミッションはそういう場所でもありたいなと思っています。情報を独占するのではなく、共有してどんどん出すことで、それぞれがランクアップしていくようになるのが理想ですね。

深夜営業が可能な「特定遊興飲食店」とは?

【定義】ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食させる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前6時後翌日午前零時前の時間において営むもの以外のもの (風俗営業に該当するものを除く。)


わかりやすく言うと、深夜0時から午前5時の間に、客にダンスなどの遊興をさせ、お酒を提供できる店ということだ。
そして、その営業をするためには、都道府県公安委員会の許可を得ないといけない。
そのために必要な要件には、各都道府県の条例で示される指定地域にあること(たとえば繁華街であるとか、住民が多くないなど)、客室の床面積が一室33平方メートル以上であること、見通しを妨げる遮蔽物がないこと、営業所のうち飲食スペース(客室面積の20%)の照度が10ルクス以下にならないようにできること、などがある。

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