ライブハウス店長インタビュー

vol.37 八王子Match Vox、RIPS 奥 泰正さん

vol.37 八王子Match Vox、RIPS 奥 泰正さん

町ぐるみでサーキット型ロックフェスを開催したり、専門学校でギタークリニックを行ったりと、ライブハウスという枠を越えてマルチに活動している奥店長。地元を愛し、八王子で誕生したバンドの後押しをしている、良いアニキぶんだ。

text:野中ミサキ photo:内海裕之

最終的には八王子で音楽活動が完結できるようにしたいんです。
八王子屋さんになろうと思ってます(笑)。

バイトで入って、15年くらいずっとヘルプのままっす(笑)

奥さんは2004年の立ち上げ時からマッチボックスにいらっしゃるそうですが、そもそも携わることになったきっかけは?

もともと、今同じビルにあるリンキーディンクスタジオはビートランドっていうライブハウスだったんです。当時そこで働いていた先輩が、ちょうど自分のバンドが忙しくなってきた頃で「1ヶ月くらい代わりにバイト入ってくれない?」って言われたのがきっかけですね。当時僕は高校3年生だったんですけど、履歴書も出してないし面接も受けてないんで、15年くらいずっとヘルプのままっす(笑)。最初はドリンクとか受付をやってたんですけど、ブッキングをやってくれって言われてやり始めて。途中、今のマッチボックスの場所が空いたのでここに移って今に至ると。

では、“店長”という肩書きはいつ頃ついたんですか?

3年くらい前ですかね。今は、マッチボックスと同じビルにあるリップスの店長も兼任しています。リップスのほうがせまくて汚い典型的なライブハウスっていう感じのハコなんで、出てくれるバンドには、お客さんがたくさん入っているように見せたいならリップスを、お客さんを入れる自信があるならマッチボックスをすすめるようにしてますね。それぞれの現場にはそれぞれのスタッフがいるんで、そういうところでも自ずと色分けはできていると思います。

先輩のおかげで八王子の名前が広まった

マッチボックス、リップスといえば、数々のバンドがホームと公言していますが、特に切っても切り離せないのはマキシマム ザ ホルモンではないでしょうか。

マッチボックスというより、八王子っていうものを全国に広めてくれたのはホルモンだし、今「八王子にシーンがある」と言われているのは、あの人たちのおかげです。TOTALFATやBIGMAMA、グッドモーニングアメリカっていう後輩にあたるバンドたちも、地方に行くと「八王子から来ました」って言ってくれてて。そういうことだと思うんです。先輩のおかげで八王子っていう名前がすでに広まっているわけだし、八王子っていうことの良さみたいなものが生まれたというか。

最近の八王子シーンには、どういった傾向が見られますか?

あえてこういう言葉を使いますけど、バカが減りましたね。夢見てる子が少なくなったなあと。これだけCDが売れないとか音楽業界は不況だって聞かされれば、そりゃ夢なんて見られないですよ。そのぶんバカが見つけやすくはなるんですけど、本当に少なくて。今で言えば、ハルカミライとINKYMAPっていうバンドがいるんですけど、そいつらは灰汁のように浮いてきましたね(笑)。

日々の運営的な面ではどうでしょう?

どこもそうでしょうけど、平日のスケジュールを埋めるっていうのが課題でもあって。八王子って学園都市で高校も大学もたくさんあるんで、平日は学生のバンドがメインなんです。でも、高校卒業して大学行って就職して…っていう子も多くなりました。そのへんの変化は如実に感じています。昔だったら「就職なんか考えないでバンドやれよ!」って言ってましたけど、別にそれが悪いとは思わないし、今は「就職活動しながらでもいいからバンド続けてくれよ」って言いたくなりますね。商売的にどうこうっていうより、できればやめないでほしいんです。楽しいじゃないですか、バンドって。

八王子Match Vox、RIPS 奥 泰正さん

地元のバンドがどこに行ってもビビらないようになってほしい

ご自身も現役バンドマンということですが、出演バンドへのアドバイスなどは?

そこは結構しっかりします。ほかでやったときに「八王子は礼儀がなってねえ」とか思われたくないんで、あいさつとかにはうるさいし、打ち上げも激しいです。そのせいでうちには出たくないっていうバンドもいると思います…(笑)。でもそれも、地元のバンドがどこに行ってもビビらないようになってほしいっていう気持ちです。ただ、それぞれのペースとか目標に見合うことを言うようにはしてますね。高尾山を目指してる奴にエベレストの装備と覚悟を説いても理解できないし、逆もしかりで。その山登りが楽しいと思えるようなアドバイスを心掛けてます。

今年3月に奥さん主導でサーキット型フェス“HACHIOJI ROCK DREAM(通称ハチドリ)”が開催されましたが、どのような経緯で開催に至ったのでしょう?

もともと僕を知っててくれた市の観光課の方から「八王子のロックバンドは観光資源だと思いませんか? ぜひそういうイベントをやりましょうよ」と連絡をもらったのがきっかけです。八王子って、FUNKY MO NKEY BABYSが観光大使をやっていたり、グッドモーニングアメリカやニューロティカがPR特使をやってたり、もともと行政と音楽の関係が近いんですよ。

ハチドリには、どういったコンセプトや思いが込められているのでしょうか?

町おこしなので、普段から八王子にいる地域の人たちにも参加してもらわないと意味がないってことで、本当にいろんなお店に協力してもらいました。すごくせまいスペースでもライブをやらせてもらったり、居酒屋の店長さんにもライブしてもらったり。もちろん八王子にあるほかのライブハウスにも1店1店訪ねて、こういうことをやりたいっていうのを話したらわかってくれる先輩ばっかりで。あとは、ステップアップして八王子を出たバンドが帰ってきたときに楽しいことがある場を作りたいなと。今までそういう場がなかったので。来年の開催も決まったし、できるかぎり続けていければいいなと思ってます。

八王子にいてもできるというのが重要で

そういった意識や取り組みによって、今後も八王子から面白いバンドが輩出されていくことに期待したいです。では最後に、将来の目標などがあれば聞かせてください。

マッチボックスは建物自体が古くて物理的にあと何年もつかわからないとは思うんですけど、シーンのことで言えば、最終的には八王子で音楽活動が完結できるようにしたいんです。2014年から『八王子NOW』っていうオムニバスアルバムを作ってるんですけど、自分たちの名前が載ったCDがショップに置かれるのはモチベーションになるし、それが八王子にいてもできるというのが重要で。収録バンドのなかから3バンドずつくらいに分かれて全国のライブハウスへツアーに出してるんですけど、ツアーから帰ってきたら明らかに仲間としての意識が強くなってるんですよね。そういういい空気感がもっと必要だと思うんです。

奥さん自身、八王子が大好きなんですね。

はい、八王子屋さんになろうと思ってます(笑)。自分はどういう形でも音楽と寄り添って生きていくって決めたんで、何かしらの形で八王子の音楽を鳴らしながら生きていけたらって思ってます。

F.A.D YOKOHAMA

八王子Match Vox

東京都八王子市三崎町2-7ヨーロービルB1
042-627-7787

ホールはスタンディングで250名収容可能。フロア後方には段差があり、ステージが見やすくなっている。下手側にはドリンクカウンターと休憩スペースも。横幅の広いステージも特徴だ。

新宿SAMURAI

次回は、歌舞伎町に新オープン 新宿SAMURAIを直撃!

2016年6月11日、前ライブハウスの跡地に新たに誕生した新宿SAMURAI。マネージメント事務所が主体となって運営しているというが、その具体的な方針とハコの特徴を店長にうかがう。

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