特集記事

2016.07.12

SPECIAL

特集記事

TOKYO CALLING 菅原隆文さん

interview TOKYO CALLING 菅原隆文さん
LD&K 取締役
音楽事業部長

東京発の新たなサーキットライブイベント“TOKYO CALLING”が今秋スタートする。9月17〜19日の3日間、下北沢、渋谷、新宿の3ヶ所30のライブハウスに約300アーティストが集う。その主旨に加え、サーキットが音楽シーンに果たす役割についても聞いた。

text:柴 那典 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

新しいアーティストが全部見られる。
シーンのハブになればいいと思うんです。

新人バンドにとってサーキットイベントはとてもありがたい

“TOKYO CALLING”の企画はどのようにして始まったんでしょうか?

僕はマネージメントの人間なので、最初にサーキットイベントにかかわるようになったのはアーティストの育成をするようになってからなんです。特に新人バンドにとってサーキットイベントはとてもありがたい。まず関西には“MINAMI WHEEL”(以下“ミナホ”)を筆頭にいいイベントがたくさんある。仙台には“MEGA☆ROCKS”、金沢には“DIVING ROCK”、新潟には“RAINBOW ROCK”、香川には“SANUKI ROCK COLOSSEUM”、広島には“MUSIC CUBE”、熊本には“HAPPY JACK”がある。初めて地方にライブしに行こうとすると、どんなにがんばってもお客さんは10人〜20人なんですよね。それがサーキットであれば1,000人や2,000人に観てもらう可能性ができる。こんなに効率的なことはないわけです。

まずはそういう発想があった。

でも僕1人でやろうと思ったわけではないです。大阪の“見放題”、名古屋の“でらロック”、福岡の“TENJIN ONTAQ”という全国屈指のサーキットフェスを運営している3人と集まって、4人で一緒にやろうというところからのスタートでした。地方のノウハウを持っている人、思いを持っている人が集まって、いろんな仲間を増やしていこうという始まりだったんです。

インディアーティストの社交場的な要素も強い

菅原さん自身はどんなキャリアを経てきたんでしょうか。

僕はもともと新卒でテイチクに入社して、MCAパナソニックミュージックに異動して、その後早期退職してLD&Kに入りました。そこからロボショップマニア、シンバルズ、つじあやの、ガガガSPと担当して、その後にアーティストの発掘と育成業務を始めたんです。かりゆし58も担当していたんですけれど、その育成はどちらかというとメディアに頼っていた。でも、ドラマチックアラスカとか打首獄門同好会を担当するようになって、メディア戦略よりもライブ戦略のほうが重要になってきた。その変化がここ数年のことですね。

プロダクション側から見たサーキットイベントのメリットは?

とにかくお客さんがたくさんいるということ。あとはいろんなバンドと一緒にできる。たがいに仲良くなったら、そこから一緒にツアーを組んだりできる。インディアーティストの社交場的な要素も強いと思います。

サーキットであれば1,000人や
2,000人に観てもらう可能性ができる。

下北沢と渋谷と新宿がひとつになれば日本一になる

これだけ全国にサーキットイベントがあるのに東京にないのは不思議ですね。

東京にもたくさんあるんです。“ETERNAL ROCK CITY.”とか、“MUSIC MONSTERS”とか、“Shimokitazawa SOUND CRUISING”とか“下北沢にて”とか。でも、“ミナホ”のように関西を代表するような大規模なものはなくて。「なんでないんだろう?」と考えたら、やっぱり下北沢、新宿、渋谷でライブハウスのシーンが分かれてしまってるんですね。それに対して、大阪のミナミはライブハウスがひとつのエリアにたくさんある。「まとまってる感」がダントツなんです。だから今はミナミが日本一の音楽都市になっている。とはいえ、下北沢と渋谷と新宿がひとつになれば、どう考えても日本一になる。その3ヶ所を結びつけることができればいいんじゃないかというのが、最初のアイデアです。

今、ロックシーンにおいては関西勢の勢いが強いですよね。

本当にそうですね。それに関しては、“ミナホ”を主催しているFM802さんの功績が本当に大きいと思います。関西のバンドシーンは“ミナホ”と“見放題”と、いくつかのサーキットイベントを観ればだいたい動向がわかるんです。みんなが「今はこのバンドがきてる」っていうのを共通認識として持っている。それがひとつのシーンとしての厚みにつながっている。

“ミナホ”が関西のバンドシーンを活性化させたと言えるわけですね。

やっぱり18年やっている歴史の重みはすごいですよね。それに、FM802さんがすごいのは、“ミナホ”だけじゃなくて、年間を通してアーティストの出る場所があるんです。4月には“REQUESTAGE”があって5月には“Rockin' Radio!”がある。夏には“MEET THE WORLD BEAT”という大きなフェスがあって、年末には“RADIO CRAZY”がある。ニューカマーが出る“GLICO LIVE NEXT”というイベントも年間を通じてやっている。それに、僕の考えでは、関西のシーンにはピラミッド構造があるんですよ。

ピラミッド構造というと?

一番上の頂点には数万人規模の大型フェスがあって。その下に、FM局、テレビ局、イベントプロモーター、個人イベンター、ライブハウスと、それぞれの運営するイベントやフェスが有機的にからみ合って、バンドの成長をサポートするシステムができている。小さなステージから徐々に階段を上がっていくようなイメージが共有されている。イベンター、媒体、ライブハウス、アーティスト、お客さんの全員が渾然一体となったシーンができているんです。

KANA-BOONはまさに“ミナホ”のなかで勝ち上がっていったバンドですね。

そう。そのストーリーも素晴らしい。KANA-BOONはあっという間に入場規制の行列ができましたね。そこで爆発的な人気になって、メインの会場のトリをやって、卒業した。そうやって動員が増えることがバンドの人気のバロメーターになっている。

面倒くさいことこそニーズがあるならやったほうがいい

ラジオ局ということでいえば“TOKYO CALLING”はTOKYO FMが主催になっていることが大きいですね。

やっぱりラジオが中心になってほしいんですよね。そこでTOKYO FMの森田(『SCHOOL OF LOCK!』総合プロデューサー)さんに話したら快諾していただいて。そこからEggsを紹介してもらって、一緒にやることになりました。

『SCHOOL OF LOCK!』や“閃光ライオット”“未確認フェスティバル”をやってきたTOKYO FMというラジオ局のカラーとも合っていますよね。

まさにそうなんです。そことの関連を考えてもいろんなコラボの仕方をできると思った。そうしたら番組も作ってくれて。さすがだと思いました。

“TOKYO CALLING”を運営するうえで注意していることはありますか?

アーティストのためになるものにしたい、というのがそもそもの目的なので、そこからブレないようにしたいですね。もちろん全員が売れるわけではないですけれど、いろんなアーティストにとって夢をかなえられる場所になればいいと思います。あとは可能なかぎりフラットな運営をすることですね。僕はLD&Kの人間だけれど、“TOKYO CALLING”に関してはLD&Kのエゴは捨てないといけないし、いっさい持っていない。だって、本当に大変な仕事なんですよ(笑)。300アーティストの素材を集めるのも、タイムテーブルを組んだり、ひとつひとつのバンドと連絡を取るのも、全部やるのは相当きつい。でも、人が面倒くさがってやりたがらないことこそ、そこにニーズがあるならやったほうがいい。だから、まずは3年続けたいですね。トライアンドエラーを繰り返しながら5年、10年続くものにしたい。30ヶ所のライブ会場も先日あいさつまわりをしたんですが、僕が思っていた以上にサーキットイベントを楽しみにしているのが伝わってきた。ライブハウスのために何ができるかも考えています。みなさんのお力をお借りして形にしていきたいと思います。

5年後、10年後に目指しているビジョンは?

シーンのハブになればいいと思うんです。“TOKYO CALLING”で新しいアーティストが全部観られる。そういうものになることを目指しています。だからリアルな場所としてサーキットイベントがあるし、ラジオでそれを展開するし、Eggsと組んでWEBで見せていくこともできる。それに、いろんなメディアやイベントが乗ってきてほしいんですよね。“見放題”と“でらロック”と“TENJIN ONTAQ”が運営に入っているから、“TOKYO CALLING”経由で地方にも行きやすくなる。いろんなやり方があると思うんです。それに、4年後には東京オリンピックがある。日本の文化を世界に発信する場ということを担っていけたらいいとも思います。

TOKYO CALLING 2016

Eggs presents TOKYO CALLING 2016

9月17日(土)下北沢(10ヶ所で開催)
9月18日(日)新宿(10ヶ所で開催)
9月19日(月・祝)渋谷(10ヶ所で開催)

タグ: