ライブハウス店長インタビュー

vol.36 F.A.D YOKOHAMA 廣畑有希雄さん

vol.36 F.A.D YOKOHAMA 廣畑有希雄さん

今年の6月にオープン20周年を迎えたF.A.D。メロコアシーンや地元アーティストを支えつつも、「来る者拒まず、去る者追わず」なスタンスで営業を続けている。常に客観的な立ち位置で見守っている廣畑店長にハコの在り方をうかがった。

text:野中ミサキ photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

こだわりを言うなら「ワルい感じ」。ロックってもともと不良のものだし、
ガキの頃に行ってたライブハウスって、みんなそうだったから。

ライブハウスの店長っていう仕事しかしたことがない

まずは、廣畑さんのご経歴をさかのぼってお聞きしたいのですが。

最初に言っておきますけど、自分は音楽業界人だなんて気持ちはまったくないんで。ただのバンド好きの喫茶店のおじさんっていう感じですよ(笑)。

…では、喫茶店のおじさんになるまでの経緯をお願いします(笑)。

僕、ライブハウスでしか働いたことないんですよ。一番最初は、30年くらい前に学校の先輩の紹介で下北沢屋根裏に入って、よくわかんないけど最初から店長で。屋根裏で2年くらい働いたあとに新宿と高円寺の系列店に移ったんですが、やめてフラフラしてたんです。そしたらまた、先輩が今の店を紹介してくれて。その時点では、まだF.A.Dではなくて登竜門っていう店だったんですけど、少しして運営会社が変わって、F.A.Dという名前になりました。だから、この場所の中身はずっとライブハウスなんですよ。

F.A.Dとしては20年ですが、ハコの歴史自体はもっと長いんですね。

ハコ自体は25年以上かな。

F.A.Dに入店なさったときの肩書きは何だったんですか?

店長です。というか、ライブハウスの店長っていう仕事しかしたことがないんですよ、僕(笑)。かといって、性に合ってたのかっていうとそれはわかんなくて、ガキの頃からの遊び場がライブハウスだったから、仕事っていう感じではやってなかったかもしれないですね。雇われだから責任ないし(笑)。まあ、こんな感じの店になったのだって勝手にだし、ポリシーなんてものも特にないし。外から見ると面白おかしく生きてるように見えるじゃないですか? でも、僕らにとってはそれが日常だから。人から見てすごいと思うようなことでも、僕らにとっては何の変哲もないことだったりするわけで。

何でもウェルカムにしておく必要がある

立地とキャパシティもF.A.Dを語るうえで欠かせない要素のひとつだと思うのですが、運営面での影響はありますか?

うーん。中華街の裏だからどうってことは特にないけど、このキャパだし、いろんなアーティストが出てくれてますよ。ただ、何かに特化するっていうのは難しいです。やっぱり埋まらない日なんかも出てきちゃうわけで。正直、東京ならバンドも人もいっぱいいるから「うちはヴィジュアル系でやっていく」とか、何かに特化して運営することもできると思うけど、やっぱりそれはできない。だから何でもウェルカムにしておく必要があるし、そうしておけば勝手にまわるから(笑)。

オープン当初は主にどんなバンドが出演していたんですか?

20年前だから、メロコア前夜かな。バンドをあげるなら、山嵐とか。彼らも今年で20周年なんですけど、山嵐を組む前のバンドから出てくれていて。そのあたりからラウド系が盛り上がって、パンクとかハードコアとかがメインになって…というか、20年経ってこんなメロコアみたいなことばっかりやってるところって、うちくらいなんじゃないですかね。いつまで経っても変わんないんだよ、ずっと。

ラウドやパンクがメインでありつつ、秦基博さんなど弾き語りのアーティストもよく出演なさっていましたよね?

秦くんはもともと友達のバンドのお客さんとして出入りしてたんだけど、なんの影響か自分で歌うようになってね。その当時、ゆずとかが出てきた頃で、週に2か3は弾き語りの人とかも結構出てたんですよ。桜木町の駅なんかにも弾き語りしてる人とかいて。そのへんの連中が集まるようになって、そこに秦くんも出たりしてましたね。

F.A.D YOKOHAMA 廣畑有希雄さん

育てなくても勝手に育つと思ってる

そういった出演者たちに廣畑さんから助言をしたりすることはあるんですか?

ないです。そういうの嫌いなんで。育てなくても勝手に育つと思ってるし、さっきも言ったけど自分が音楽業界の一端を担っているつもりもまったくないから。それに僕、人見知りだからバンドと話せなくて。ダメ出しを求めるバンドって、いるじゃないですか? 聞かれれば答えるし話しかけてくれればいけるけど、自分からはいけないんです(笑)。

まさかのシャイボーイですか(笑)。パフォーマンスは普段、どこで観ていらっしゃるんですか?

入口にあるモニターですね。これ、相当珍しがられるんですけど、チケットもぎりを僕がやってるんですよ。理由は特にないんだけど、腕組んでじっとしてるのも嫌だし。で、うちって音がすごいデカいんですよ。それがウリでもあるんですけど、なかで聴くと何やってるかわかんないから、ドア2枚隔てたくらいがちょうどいいっていう(笑)。そうやって観ていて思うことももちろんあるけど、ああしろこうしろとは言いたくないんですよ。誰かに言われたことを実践したから売れるなんていうのは、僕は違うと思うんで。自分たちが出したい音を出して売れればいいし、売れなければ求められてないっていうだけの話で。自分たちのやりたいようにやってどうにかなれば、それが一番いいんじゃないのっていう。

好きですよ、この仕事。やってて良かったなって

先ほど話にも出ましたが、F.A.Dの音響の特徴は、とにかく音がデカいと。

そうですね。僕はもう耳がキツいから、ちょうどいい感じで聴きたいんですけど。まあでも、音がデカいほうが、楽しいじゃないですか。

そういった運営面でのポリシー的なものがほかにもあれば教えてください。

特にないですけど…こだわりをしいて言うなら「ワルい感じ」ですかね。ロックってもともと不良のものだし、僕がガキの頃に行ってたライブハウスって、みんなそうだったから。っていう、ひとつの縦社会に組み込まれていた形をライブハウスでやってるというか。

系譜を継いでいると。

まあ、そういうことですかね。今って、みんないい子になっちゃってるじゃないですか。僕がこの仕事を始めた頃は、悪い人がゴロゴロいたから、とりあえずナメられちゃいけないなっていう気持ちもあったわけで。そういうなかでずっとやってきたから、今さら変えられないしね。出てけって言われるまで、このまま続けるしかないですよ(笑)。

そういうところも含めてF.A.Dは廣畑さんの考えが反映された分身のようなもので、それが20年続いているっていうのが言葉にせずとも答えなのではないかな、とも思います。

そりゃ20年もやってれば、いいことも悪いこともいろいろありますよ。何があったのかって聞かれるとおぼえてないけど(笑)。まあでも、好きですよ、この仕事。やってて良かったなって、いつも思ってます。20年間、毎日ね。

F.A.D YOKOHAMA

F.A.D YOKOHAMA

神奈川県横浜市中区山下町168-1 レイトンハウス1F
045-663-3842

ホールはスタンディングで380名収容可能。バンドから弾き語りまでジャンルを問わず受け入れている。ロビーやドリンクカウンター、トイレは様々なバンドのポスターやステッカーで埋めつくされ、にぎやかな印象。

八王子Match Vox

次回は、地域密着型のハコ 八王子Match Voxを直撃!

駅から徒歩約5分の場所にある、キャパ250名のMatch Voxは、マキシマム ザ ホルモンやグッドモーニングアメリカらが出演することでも有名。店長に地元の音楽シーンと運営スタンスをうかがう。

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