名物プロデューサー列伝

2016.01.09

INTERVIEW

名物プロデューサー列伝

スペースシャワーネットワーク取締役 執行役員 近藤正司さん

vol.65 スペースシャワーネットワーク取締役 執行役員 近藤正司さん

昨年末の紅白に初出演したゲスの極み乙女。が所属するのは、2012年よりマネージメントを始めたスペースシャワーミュージック。その母体でもあるスペースシャワーネットワーク設立の立役者が近藤取締役だ。同局の立ち上げエピソードから同社のマネージメントに対する取り組み方についてまでお聞きした。

text:吉田幸司 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

今やアーティストが中心にいて、
スペースシャワーTVもひとつの出口になった。

スペースシャワーTV開局

ゲスの極み乙女。の紅白初出演が発表されました(取材は2015年12月)。今の率直なお気持ちをお聞かせください。

率直にいえば、やっぱりすごくうれしいです。去年もなんとなく候補にあがっていたらしく、スケジュールも押さえて心待ちにしていたという経緯もあるんで。だから今年ははじめからあんまり大きな期待をしないでおこうと心に決めてたんですよ(笑)。

(笑)。そのゲスの極み乙女。はスペースシャワーミュージックに所属しているわけですが、そもそもスペースシャワーTVを作られたのは近藤さんだそうですね。

作ったというより、いい出しっぺというのが正しいですね。もともと僕、大阪のテレビ番組制作会社で仕事してまして。1988年頃、たまたま東京出張があったんですけど、そこでたまたま全員出払って、僕が1人で留守番する形になったところに、回線リセールの会社の人がやってきたんです。飛び込み営業で。そしてパンフレットを出して、日本にも衛星時代がやってきますと、通信衛星を介して全国のケーブルテレビ局をネットワークすることができるんですと。制作会社でもいわば電波を持つことができるんですよと。ということをいわれまして。で、もともと僕のいた制作会社は、社長が放送局を目指してたんですね。で、社長にこんなのがありますよって、回線リセールのパンフレットを見せて、いわれたことをそのまま伝えて。そうしたら、お前担当しろっていわれた。映画の専門局だったり、いろんなことを考えましたよ。ですけど、よくよく考えたら、そうだ、学生時代にあんなに大好きだった音楽を忘れてたなと。あ、音楽だと。そして海の向こうにはMTVがあるじゃないかと。MTVが1981年にスタートしていたので。1981年って、ちょうど僕が就職した年なんですよ。

それもめぐり合わせですね。

テレビの制作の仕事についているなか、特にMTVの存在っていうのはすごく大きくて。すごいなと、いわば指をくわえてながめてたんですね。ところがこの話がふってきて、これはチャンスなんじゃないかと。しかし自分には何の手だてもない…と考えて、あ、中井猛さん(同社相談役/現ヒップランドミュージック会長)がいるぞと。

同志社大学の先輩だそうですね。

かつ、大阪の渡辺プロダクションにいらした。その中井さんにすぐに相談しようと思い、梅田のポテトキッドという業界のたまり場で中井さんをつかまえたんです。だけどそのときは飲んでますから(笑)。そうしたら次の日の朝に電話がかかってきて、昨日いってた人工衛星がどうたらこうたらっていう話をもう一回聞かせろと。いや、通信衛星なんですけどって(笑)。それでもう一度説明させてもらって、で、当時の僕の会社の社長を中井さんと引き合わせて、そこから話が進んでいって、中井さんは協力するよってことになったんです。

そこから1年ほどで放送局を立ち上げてしまった。とてもエキサイティングな話ですね。

放送局というか、海賊放送局って思ってましたけどね(笑)。多チャンネル時代を迎えるにあたって、衛星を使った新しい、まあ「放送局のようなもの」を作ろうと。

しかも偶然といえば偶然から始まった。

偶然です。そのとき僕が出張してなかったら、出張先に誰かほかの人がいたら、僕は受け取るわけがなかったので。だから何でもそうなんでしょうけど、「if」の連続みたいなもので、あれよあれよと。

スペースシャワーネットワーク取締役 執行役員 近藤正司さん

「音楽業界のいろんな強みを持ってる人たちとシェイクハンドできたらいいなと思ってます」

マネージメントを開始

そこから今度、マネージメントを始めるに至ったきっかけは何だったんですか?

きっかけとしては、スペーシャワーがまずバウンディ、当時の3Dシステムを子会社にするんですよ。同じ頃にブルース・インターアクションズも子会社化した。で、その2つをくっつけて音楽事業本部というのを作るんですね。僕はそれの担当になった。でも、それぞれ出自が違うので、なかなか混ざり合わないんですよ。そこにさらにスペースシャワーっていうこれまた出自の違う会社が加わって。3つの会社がひとつの部門になったものの、それぞれがバラバラにあるみたいな感じがあるなかに僕が入って、どうしようかと。でも、いったら、両方ともCDを根幹としてるんですよね。ブルース・インターアクションズはレーベルという形で、バウンディは流通という形で、根幹にあるのは両方ともCDビジネスだった。で、CDの根っこには何があるのっていったら、アーティストだと。じゃあこのど真ん中になってるところをやったほうがいいんじゃないかと。そういうのが背景ですね。

なるほど。

まずはでも、どっちかっていうとレーベル中心でやってたんです。3つの会社が一緒になったところで、そこの比較的若い世代の人たちが新しくレーベルを立ち上げたい、さらにはそのレーベルで扱うアーティストをやりたいっていって、持ってきたのがindigo la End(ゲスの極み乙女。の川谷絵音の別バンド)だったんです。で、レーベルとしてindigo la Endをやりつつ、専属マネージメントにしようと、自然とそうなっていったんですけど、3社が一緒になって意識的にマネージメントを始めた一番最初はそれですね。

スペースシャワーミュージックにはレーベルもあるしディストリビューションもあるし、テレビメディアもある。真の360度みたいなところがありますよね。

ですね。マネージメントから360度に広げていったんじゃなくて、気がついたらもとから360度みたいなことをやっていたんですよ。360度を我々は気にしてなかったというか。そういう意味では、どっちかっていうとテレビが中心にあったんですね。スペースシャワーTVがイベントもやってます、グッズも作ってます、こんなこともやってます、あんなこともやってます、みたいなことだったのが、よくよく考えたらその中心にあるのはもともとアーティストだった。で、今やスペースシャワーTVが中心ではなくて、アーティストが中心にいて、スペースシャワーTVもひとつの出口になった。まだ発展途上で、僕らなりのセオリーというか、自分らなりの強みをちゃんと発揮できるまでには至ってませんけど。

今後の行き先

では、今後目指しているところは?

やはりindigo、ゲスに続く新しいアーティストをいかに獲得し、一緒に育っていけるかなというのが強いですね。あとは、もっと音楽プロデューサーが作るフェスとかイベントとか、我々が今度はスペースシャワー全体として一緒にやっていけないかなと思ってます。いったら、我々はあちこちにいろんな顔を持ってますので、それぞれのプロデューサーが考えていることを応援したり、一緒にできたりしたら面白いと思うんですよね。

そこは、いってみれば従来のマネージメントとは出自が違う、スペースシャワーならではの強みですからね。

そう、それができるのがスペースシャワーですよと。ほかのマネージャーの人とも一緒にやりたいし、ほかのレコードメーカーの人とも一緒にやりたいし。自分たちのなかだけで完結してやりましょうじゃなくて、自分たちはこれだけいろんな出口を持ってます、こういうふうな強みも少しはあります、これをみなさん、もっともっと活用してください、我々からも何か提案させてくださいみたいなことで。で、音楽業界のいろんな強みを持ってる人たちとシェイクハンドできたらいいなと思ってます。それがひいては、なんか音楽業界って最近面白そうじゃん、こんなことも始まったみたいだよっていうふうになると、スペースシャワーがこういうことをやっている理由もわかってもらえるのかなって。

うがった見方をすると「テレビ局がマネージメントまで手を出しやがった」ってなりがちですけど、そうじゃなく、完全にもうマネージメントの味方なんですよね。

そう。だから、いろんな人たちと手を組みたい。今までスペースシャワーTVとして、マネージメントの人ともレコードメーカーの人とも、いろんな形で関係性を持ってきた。それが今、レーベルを始めました、マネージメントを始めましたっていうことで、バシッと切るのではなく、むしろその関係をさらに強くして、あるいは立場を同じくするところで、大変さとか痛みも共有できたらなと思ってます。なので、もっともっと活用してもらえたらと。プロデューサーとしてやりたいことはそういうことですね。

PROFILE

スペースシャワーネットワーク取締役 執行役員 近藤正司さん

近藤正司

1958年、大阪生まれ。1981年に同志社大学を卒業後、テレビ番組制作会社エキスプレスに入社。1989年(平成元年)にスペースシャワーに出向、1996年に転籍。2000年に取締役、2003年に執行役員に就任。2014年より音楽ソフト事業本部本部長も兼任し、ライブハウス渋谷WWWにも携わっている。スペースシャワーミュージックにはアルカラ、indigo la End、ゲスの極み乙女。、GRAPEVINEらが所属している。

タグ: