音楽にまつわる「ちょっといい話」

音楽にまつわる「ちょっといい話」

第24回 ライブハウスが教室の高校が開校![下北沢音楽塾]

今回のゲスト

今回のゲスト

河野素彦さん

1959年生まれ。下北沢音楽塾塾長。ライブウェルミュージック代表。CBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)、ライジングパブリッシャーズ、ポニーキャニオンミュージック取締役を経て、2011年にライブウェルミュージックを設立。東京、鹿児島、熊本を拠点にしたボーカル&ダンスレッスンスクール運営のほか、スマートフォンによる音楽ディストリビューション開発にも着手している。

“音楽の街”下北沢に、また新たなランドマークが誕生する。「下北沢音楽塾」。塾という名称こそついているが、ここはれっきとした高校だ。しかも、教室はライブハウスの440。「当校は、カルチャー発信の地下北沢、超現役のプロミュージシャン、そして最も重要であるステージを具えた理想の環境を提供するまったく新しいカタチの高等学校、音楽専門学校です。アーティスト、シンガーを目指す方、スタッフを目指す方、ネットを使って自分のアイデアを国内外に発信したい方、それぞれの夢を下北沢音楽塾で実現させましょう」(同校HP「下北沢音楽塾とは」より抜すい)来たる4月開校の同校について、河野塾長に詳しく話を聞いた。

一番のコンセプトは“きみらがやりたいことのサポート”です

まずは、もともとレコード会社畑にいた河野さんが高校を始めることになった経緯、そしてその授業内容について教えていただいた。

下北沢音楽塾の開校の経緯から教えてください。

僕は以前ソニーミュージックのSD、ポニーキャニオンミュージックの開発プロジェクトにいたんですが、やめたあとも、新人開発がやっぱり一番面白いなっていう思いがずっとあったんですね。それでスカウトをやってたんですけども、城南海ちゃんのスカウトをしたときに鹿児島にいろいろなコネクションができて、鹿児島でスクールをやりながら新人発掘していたんです。それを知り合いのメーカーとかプロダクションにプレゼンしてたんですけど、そこで神村学園高等部(鹿児島県の学校法人)の校長さんと知り合うことになって。東京で、普通科高校なんだけど自由に音楽の勉強ができるような学校ができないかと相談されたんです。とはいえ僕、畑違いもいいところなんで、いやちょっとどうでしょうって話だったんですけど、とりあえずソニーSD時代の同僚で飲み友達の(笑)立川(アクアミュージックプロダクツ代表取締役)に相談したんですよ。そうしたら、立川もちょうど何か新しいことをやりたかったのか、僕が思ったよりも腰を入れてくれて(笑)。

立川さんが共鳴するのに、モチベーション的なタイミングも良かったんですね。

たぶんそうだと思います。で、440を教えてくれたり、あとラジオ局さんを紹介してくれたり。立川が着地の部分でいろいろ場馴らしをしてくれたことでメニューがそろったんで、じゃあこれでどんなことができるかっていうところでいろいろ考えて。やっぱりCDが売れなくなってきてるじゃないですか。うちの九州の生徒とか、CDの開け方がわからなかったりするんですよ、シュリンクがかかってると。「ってことは、きみは歌を目指してるのにCDを買ったことがないんだね」って聞いたら、「はい!」ってキリッと言われたんで(笑)。「じゃあきみ、オーディションに受かってCD出しても売れないよ、どうしたらいいと思う?」って話してるときに、「自分でできるようになりたいです、インターネットがあるし」って、使えもしないのに勝手なこと言ってるんで(笑)。

ははは。

それで、「じゃあ自分で発信できるような、たとえばある人は自分でパフォーマンスしたり、ある人はネット動画の番組を作ったり、自分たちが普段スマホやPCで接しているエンタメのこっち側に来られる子になるんだったら、きみたちもリアリティを持てるんじゃない?」っていう話をしたら、「あ、それだったら!」ってなって。じゃあコンセプトはそれでいきましょうと。というふうに、完全な思いつきから始まったんです(笑)。

音楽学校といえ、プロミュージシャンを育てる学校というわけでもないんですね。

一番のコンセプトは“きみらがやりたいことのサポート”です。番組を作りたい子は番組、ダンスやりたい子はダンス、楽器をやりたい子は楽器。いろんなことをやりたい子たちに、まずは音楽部分でできる環境と、そのスペシャリストとの接点を提供して、きみたちのやりたいことをやりなさいっていう。

音楽は好きなんだけど、将来何をやっていいかわからない、という人もウェルカムですね。

そうですね。いろいろ見てもらって、自分のやりたいのはこれだっていうのが見つかるかもしれないし。とにかく、レコード会社のオーディションに受かるとかどこかに就職するとかじゃなくて、まず自分でできるようになりましょうっていうところが第一です。で、本当にカッコいいことをやっていれば、向こうから来てくれるから大丈夫だよって。きみたちは一番楽しいことを考えなさい、っていうふうにできたらなと思うんですね。

実際の授業ではどんなことを?

今、時間割を作ってるんですけど(取材は2月上旬)、ほとんど番組制作実習です。いきなり膨大なことをやってもあれなんで、最初はたとえば下北沢ライブ情報とかグルメとか雑貨屋情報みたいな感じで、短いプログラムをいくつか作って、それをYouTubeで出していくっていうことで考えています。

ライブハウスの空き時間と学校の時間帯がびったり合った

ギターやドラムなど楽器のスキルを一通り教えたり、インターネット動画制作のスキルを教えたりしながら、自分のやりたいものを見つけ、そこからミュージシャンになるのもよし、ダンサーになるのもよし、ディレクターやプロデューサー、マネージャーになるのもよし、とにかく、音楽をベースにしながらも自由に学べるというそのスタンスがとても興味深い。そして、学校名からもわかるように、舞台は下北沢。しかも、教室がライブハウスの440だというところも興味深い。

下北沢がベースというのもポイントですよね。

たまたまですけど、僕、玉川学園出身なんですよ。小田急線の。下北沢は僕としてもホームタウンなので、自分のノスタルジーの部分もあって(笑)。それと、ライブハウス、音楽コンテンツ、たとえば1日で演奏されている曲数でいったら、だんとつ日本一のエリアだと思うんで。だから、それこそ地場と一緒にやったほうがいいと思うんですよ。応援もしてほしいし。「僕らが次世代の若者の日本の中心を下北沢にします!」みたいな若い奴らがガーッとやりながら番組作ったりして、それを、下北沢の街のみなさんが「お前らがんばれよ!」みたいな。そういうのもいいと思うんですよね。

教室が440になったのはどういう経緯だったんです?

立川が見つけてきたんです。まあ、僕はひとつもがんばってないんですけど(笑)。

教室が会議室のような場所ではなくライブハウスというのは、言ってみればコロンブスの卵ですよね。まさに“現場”なわけですから。

はい。だって、朝から午後3時までこれだけの資産が日本中で死んでるわけですから。ライブハウスの空き時間と学校の時間帯がびったり合うんですよね。

440側にもメリットがあった。

ヨガとか、フリースペースとして使えるんじゃないかなって考えてたところだったらしいんですよ。そこにちょうど話を持っていったみたいです。

そこでもタイミングが合ったんですね。

だから、僕らはただのラッキー集団ってことで(笑)。

うちは遊ぶところだから、勉強はほかでやってくれって(笑)

そうして、この4月に開校する下北沢音楽塾。単位制普通科高校なので、卒業すればもちろん大学入試の資格も得られるし、通信制のスタイルなので不登校の人にも環境がやさしい。

若者たちに伝えておきたいことを。

まったく素人の業界に入るんで、僕もめちゃめちゃビビってて(笑)。で、いろいろヒアリングしたんです。そうしたら、学校は勉強するところじゃないんですって、今。今は進学しようと思ったら必ず塾に行かないとダメで、子供たちは勉強するところは塾だと思っていると。これは子供たちに聞いてもそう言ってました。で、自分たちの経験上、遊ばないと絶対ダメじゃないですか(笑)。だから、うちで遊びなさいっていう。うちは勉強メインじゃないから、うちは遊ぶところだから、勉強はほかでやってくれっていう(笑)。

ははは。それで高校卒業資格も取れる。

取れます。そのまま大学受験できます。実質体系としては、卒業証書は普通科です。で、スキームは通信のものを使うんです。だからそこは自由に、たとえば授業時間に街に取材に行ってきたりとか、ネタ探しに行ってきたりとか、ライブに実習に行ったりとかもできる。とにかく遊んでちょうだいっていう。

応募はインターネットからでき、不登校の子たちも大歓迎だという。「高校の不登校ってすごい多いらしいんです。何万人もいるんですって。やりたいことがあるんだけど学校に行けない人、快活なんだけど見失ってしまった人。そういう人にも、こういうことに興味があるのであればぜひ来てもらいたいですね」。音楽を介して人生を豊かにする。下北沢音楽塾は、きっとそんなことを教えてくれる学校になってくれるに違いない。

text:吉田幸司

下北沢音楽塾

下北沢音楽塾

下北沢のライブハウス440を教室に、4月に開校する単位制普通科高等学校。履修科目は教務担当者と個別に相談し決定。レポート、スクーリング(面接指導)、テスト(単位認定試験)の3つに合格し、特別活動に参加することで単位認定。74単位の修得、3年以上の在籍、30時間以上の特別活動により卒業認定。卒業すると全日制と同じ卒業証書が授与される。入学時期は4月、10月の年2回。なお、専門学校形態の「音楽ビジネスアカデミー」も併設。資料請求や、お問い合わせ等は下記まで。

東京都世田谷区代沢5-29-15 SYビル1F
050-3479-200

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