ライブハウス店長インタビュー

vol.34 立川BABEL 星野純一さん

vol.34 立川BABEL 星野純一さん

本名をもじった「ジュリエッタ」の愛称で親しまれている星野さん。店長に就任してから、まず取り組んだのは店舗内の掃除だったという。アーティストのMVやフライヤー制作などの業務も行っているが、あくまで“フォロー”の立ち位置を貫いている。

text:野中ミサキ photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

僕が店長になったタイミングで、まずは掃除だなと。
長くいても不快にならないような場所にしたいなあと思って。

女子トイレに音姫とか除菌シートを設置してみたり

BABELのオープンは2008年の8月ですが、星野さんがこちらに入店されたのは?

僕が入ったのは、3年前の1月ですかね。もともと高円寺GEARで働いてたんですけど火事でダメになっちゃって。それからサラリーマンをやっていたんですが、GEARのときからお世話になってる先輩で、今BABELのブッキングマネージャーをやっている西谷が「うちに来ない?」って声をかけてくれたので、脱サラしてここに来たんです。最初はブッキングスタッフとして入ったんですけど、その時点では店長不在で、会社の代表が運営をやっていたんですね。それで、その年の12月に店長になりました。

脱サラしてライブハウスの店長というのは、なかなかパンチがありますね。

ははは。まあ、やるからには店長になるつもりだったので。僕が店長になったタイミングでスタッフがほぼ入れ替わって、新生BABELと言ってもいいくらい体制が変わったんです。そこで、まずは掃除だなと。GEARのときから思ってたんですけど、ライブハウスって汚いじゃないですか。こんなところに人が来たいと思うのか?って。それでいろんな人に意見を聞いて、女子トイレには音姫(水の音などが流れる擬音装置)とか除菌シートがあったほうがいいらしいっていうことで設置してみたり。

ライブハウスに音姫!?

とにかく、長くいても不快にならないような場所にしたいなあと思って。ほかには、赤い公園がうちでやってた当時、彼女たちはトイレで着替えてたんです。それを知って「更衣室を作ろう」ってことになって、個室トイレ付きの更衣室を新設しました。

「お客さんやバンドのほうを向く」という言葉はよく耳にしますが、ここまで具体的な向き方をしているのは珍しいのではないかと。

これは自分がサラリーマンのときもそういう考えでやってたし、うちの代表もよく言うんですけど、「イメージだけで物事をやっちゃダメだ」と。物事は需要があるからこそやる意味があるわけで、リサーチとイメージは違うっていう。そういう感じで、店長になってからはいろいろやってみましたね。

学生バンドが活発な街ってイメージも薄れてきています

都心から離れているけれど、田舎というにはあまりに発展している“立川”の音楽シーンとはどういったものでしょうか?

BABELでは立川を地方都市と呼んでいて。このキャパっていうのもあってツアーバンドもよく来てくれるんですけど、立川自体は学生が多い街なんですよ。高校生のバンドなんかもわりといて。でも今って、高校でバンド活動ができちゃうみたいだし、ライブハウスに出たりっていうのを先生が好ましく思ってないらしく「SNSに今日のライブをアップされると、ライブやったことが学校にバレちゃうからやめてくれ」とか言う子もいたりして。そういうのもあって、学生バンドが活発な街っていうイメージも最近では薄れてきてはいますね。それに、都心で活動しているバンドほどガツガツしてないというか、自分にはバンドしかないんだ!っていう感じはあまりないんですよね。それは、実家で暮らしている子が多いからだったりするかもしれませんし。そういう意味でも、のほほんとしてますね。

BABELのスケジュールを見ると、かなりの頻度で店企画が打たれていますが、それは運営ポリシーの表れなのでしょうか?

そうですね。いわゆるただのブッキングイベントだとパリッとしないから、ちゃんと名前をつけて、最初はこのイベント、その次はこれ…というふうに階段を作って、ステップアップしていくようなイメージで継続的にやっていこうと。それって本来はライブハウスの“規模”で測っていたことだと思うんです。最初はキャパ80、次は100…っていうのをイベントでやってみたって感じですね。

イベント出演の基準などは?

特に設けているわけではないけど、がんばっているところを評価してあげたいというか。やる気のある奴のケツは叩きたいですね。

立川BABEL 星野純一さん

自発的なもののほうが絶対強いから僕ができることはあくまでフォロー

それは、いわゆるバンドを育てているという感覚ですか?

うーん、カッコいいバンドには成功してほしいなとは思ってますけど、こっちのエゴで「きみたち絶対カッコいいから」って押し通しても、「いや、僕は医者になりたいんですよ」って言われたら「そんな!」なんて引き止められないし(笑)。「自主企画をやってみろ」ということも言わないですね。自発的なもののほうが絶対強いから。だから僕ができることは、あくまでフォローで。それに僕、店長としての威厳がないみたいなんで(笑)。あだ名がジュリエッタなんですけど、お前年下だろっ!?って子に「ジュリさ〜ん」とか呼ばれたり。友人であり店長でありっていう絶妙な距離間を保てるのが、心地いいし理想ですね。

バンドとのかかわり方のひとつに星野店長のメルマガがありますが、これも需要を感じて始められたのでしょうか?

そうですね。もともとは、“俺この話知らなかったんだけど、みんな知ってる?”くらいのノリで始めたんですけど、いろいろ反響をいただいて。バンドと話すタイミングって受け付けとか清算のときぐらいしかなかったりするんで、そこで話せないことを伝えられればいいなと思ってやってますね。ネタがつきないようにいろんなところへ行って人の話を聞いたりしているんですけど、今後はメジャーアーティストにどうやってメジャーになったのかっていう話を聞いて、発信していくっていうことをやろうかなと思っています。

筋を通せ、失敗してもいいけど、ちゃんとあやまれないと、って

運営やメルマガと並行してデザインやMV制作も行っていらっしゃいますね。

前提としては、“商売としてしっかりやる”っていうところで、ライブハウスの運営だけではまかなえないところを埋めるべくやっているっていうのがあります。でもそもそもは、ライブはカッコいいのに宣伝がヘタクソだったり、いつまでたってもロゴができないバンドとかいるじゃないですか。だったら俺、できるしやるよっていう感じで始めました。別にバンドに対して商業的にやれっていうわけでもないんですけど、たとえばTシャツを作りたいのに解像度がどうとかっていうのがわからなくてあきらめるっていうのはもったいないですからね。

相談窓口的な。

助けたい部分は助けたいんで、それ以外の相談にも乗りますし。昨日も、深夜に「何時までいますか?」って連絡があったりとか。かけ込み寺っていうわけでもないんですけど、話を聞いて解決するものなら聞いてあげたいとは思っていて。メールとか電話だと伝わらないから会いに来たいんだろうなと思うし。

信頼されている証拠ですね。

それは感じるし、うれしいですね。ただ、話は聞くけど、厳しいことを言うときもある。筋を通せという話はよくしています。失敗してもいいけど、ちゃんとあやまれないと。土下座することがカッコいいこともあるんだよっていう。うん、カッコ良くいてほしいんですよ。

では最後に、BABELの今後のビジョンを教えてください。

BABELは同規模、同業種のなかでもっとも良質なサービスと顧客満足度を目指すライブハウスである…っていうのが最大の目標ですね。うちは、代表と僕の企業的な考え方が運営に反映されてるんですけど、行動指針と戦略的目的っていうのがあって。じゃあ、顧客って誰だっていうと、それは観に来てくれるお客さんだったり出演バンドだったり、時代によって変化するものですよね。“満足”ってどうすれば得られるのかっていうと、それがたとえば音姫だったりするわけです。そこを達成するためには話し合いや情報交換が不可欠で、そういう意味でもスタッフを大事にしたいと思っていて。そういうところを具体的に詰めていってこそだと思ってます。

立川BABEL

立川BABEL

東京都立川市錦町1-3-18 B1
042-595-9020

立川市内最大のキャパシティ400人以上のホールにはDJ機材も完備しており、深夜イベントも可能。広々としたロビーや楽屋など、客と演者のことを考え作られた空間が広がっている。

目黒鹿鳴館

次回は、ロックバンドの登竜門 目黒鹿鳴館を直撃!

1980年にオープンの目黒鹿鳴館は、ジャパニーズメタル、ヴィジュアル系の先駆者を次々と輩出。2012年にはホール内の椅子を取り外しリニューアルした。ベテラン、若手、アイドルまで、連日熱が渦巻く鹿鳴館の「今」に迫る。

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