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2016.01.09

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Interview 03 でんぱ組.inc チーフマネージャー 高瀬裕章さん

Interview 03 でんぱ組.inc チーフマネージャー 高瀬裕章さん

秋葉原ディアステージで活動をスタートしたでんぱ組.inc。2015年は代々木体育館2デイズを満員にし、ワールドツアーも実施、結成当初のキャッチフレーズ「萌えキュンソングを世界にお届け」をまさしく実践した年にもなった。ここでは仕掛人の高瀬さんが誌面初登場!

text:柴 那典 photo:外林健太

これからは、どうやってジャンルレスな存在に
なっていくことができるかがポイントだと思います。

まずは自分のなかに武道館までの目標を2年計画で立てました

高瀬さんはどのようなきっかけで今のお仕事を始めたんでしょうか。

それ以前は、12年くらい、とある人気女性アーティストのアシスタントをやっていたんです。なかば付き人のような形で仕事していて、本格的にマネージメントを担当したのは、ディアステージに入ってからなんです。その間にいろんなプロモーションやマーケティングの勉強もしていました。で、そのお仕事を離れたあとに「マネージャーやコンサート制作の担当がいないので手伝ってほしい」といわれてディアステージに誘われました。2010年頃ですね。最初は黒崎真音の担当をしていたんですが、そこでメンバーがまだ5人だった当時のでんぱ組.incがいて。なんだか面白そうだなと思って、少しずつかかわるようになっていったんです。最初は2つの仕事を兼務していて、もうひとつは別の舞台制作をしている会社でもお手伝いしていたんですけれど、1年くらいで完全にディアステージで働くようになりました。

これまで、でんぱ組.incに関しては、もふくちゃん(福嶋麻衣子)がプロデューサーとしてメディアに登場することが多かったと思います。裏方として高瀬さんが登場されるのは初めてのことだと思いますが。

アイドルグループということもあり、いろいろなことを考慮して、自分はあまり前に出ないようにしているんです。もふくちゃんは、7人目のメンバーのような立ち位置で一緒にアイデアを出したり、時には表に出たりと自然な感じでやってくれていました。実際に今もメンバーからのアイデアや意見を尊重しながらやっているので。そのイメージを壊さないためにも、自分が雑誌やテレビなどのメディアにはできるだけ出ないようにしています。ただ、今回の『音楽主義』はマネージメントや音楽業界の方がたくさん見ているし、音楽の仕事に興味がある子、そこで働きたい子が見ているような媒体なので、そこに対してディアステージが会社としてやっていることをしっかりと伝えたいと思ったんです。

高瀬さんがでんぱ組.incに深くかかわるようになった理由は?

面白いことを考えるんですけど、なかなか形にならなかったのでプロジェクトとしてまとめてほしいといわれて。きっかけになったのは、2012年の2月にあった“第1回アイドル横丁杯!!”というイベントですね。メンバー本人たちと「このタイミングで自分の考えたやり方でもし優勝できたら、今後も責任持ってサポートするから、一緒にがんばろう」と話をして。当時の実力からすると本当にギリギリだったんですけれど、ファンにも受け入れてもらって、メンバーも全力でパフォーマンスしてくれてなんとか勝ち抜くことができた。そこから本格的に自分がかかわるプロジェクトとしてスタートした感じです。まずは、自分のなかで武道館までの目標を2年計画で立てました。ライブハウスのキャパが一回ずつ倍になっていくようなスケジュールを作成して、その前後にリリースを入れ込んで、それを全部埋めていくようなプランにして。事前に全部メンバーと共有して、このタスクをクリアしていかないと次に進めないということを話しました。サプライズしたときもありますが(笑)。かなりつらいスケジュールだったんですけれど、そうすると先が見えるのでメンバーもがんばることができた。幸運なことに、世の中の動きがついてきたのもあって、それが全部達成できたんですね。

オタク層はシビア。でも味方になると、すごく応援してくれる

でんぱ組.incのブレイクの要因はどういうところにあったんでしょうか。

もともと、グループのやっていることはとても面白いんだけれど、ほかの人にはわかりづらいものだったんですね。自分はコアな音楽ファンではないかもしれないし、エンタテインメントに関しても一般層と感覚が近いと思うんです。そういう自分がわかりやすい、面白いと感じるほうがいい、でんぱ組.incの面白い部分は残しながら、いわゆるサブカルチャーのファンだけではなく一般層の方も面白いと思うものに変えていこうと思ったんです。そのあたりから、いろんな分野にファンを増やそうとしていって。ファッションとのコラボで女の子のファンが増えたのも大きいですね。あとはヴィレッジヴァンガードさんやそのほかいろいろな人気のショップやメーカーとのコラボなどで全国展開していただいたのも大きかった。そういうふうに、でんぱ組.incの良さをうまく落とし込んでいった感じです。

2015年のでんぱ組.incの動きは、振り返ってどうでしたか?

2月の代々木体育館がもうだいぶ前に思えるくらい忙しかったですね。メンバーもみんな「今年(2015年)でしたっけ?」みたいにいってました(笑)。そのあとにワールドツアーがあり、夏フェスもあり、もうひとつ“かがやきツアー”というのを新しい取り組みとしてやりました。北陸新幹線が開通して「かがやき」という新しい新幹線が通ったのをきっかけに、キョードー北陸さんと組んで、なかなかツアーでまわらない箇所を対バンツアーでまわった。普段はやっぱり東名阪ツアーが多くなってしまうんですけれど、やってみると移動コストもそれほどかからない。かなり喜んでもらえたので、2016年もロックバンドの方々との対バンツアーはやろうと思っています。2016年は東北新幹線が函館まで伸びるので、函館、青森、盛岡、仙台、大宮、東京で“はやぶさツアー”をやろうと思ってますね。

ここ数年、音楽シーンのなかで女性アイドルが注目されることが多くなっていますが、そのあたりはどう考えてらっしゃいますか?

まずシーン全体の話の前に、自分自身が成長できた大きな要因にディアステージで仕事をしてきたというのがあるんです。アイドルファンやアニソンファン、いわゆるオタク層の人たちはすごくシビア。お客さんとしては扱いづらいところもある。でも、その人たちに敬意を払いながら一緒に盛り上げてもらえるようにすると、味方になってくれて、すごく応援してくれるんですね。そこで、お客さんの気持ちをどう動かすか、どうすれば批判されないかを、とてもていねいに取り組んだ。それが大きな糧になっているんですね。でんぱ組やディアステージの良さはそういう環境にあるんです。アイドル本人もスタッフも、そういうところで日々試行錯誤しながら鍛えられている。いろんな事務所がたくさんあるなかで、うちのように大きくはない会社が戦っていけるのは、そういうところでほかの事務所よりも伸びしろを作れているのが理由になっているんじゃないかと思います。

では、アイドルシーンの2015年を振り返るとどんな感じでしょうか?

ここ数年で、こういったシーンは一般層にも広がっていったと思います。それは僕らの力というよりも、今はオタクであることが当たり前になってきていると思うんですね。自分が10代の頃はオタクはクラスに数人いるくらいの少数派だったのが、今やクラスのほとんどがオタクだったり、もはやオタクのほうがカッコいいくらいになっている。大人の世代の人にもそういう気質が広がっているんだと思います。そもそもオタクというのは、アニメ好きやアイドル好きだけじゃないですからね。ひとつの趣味に没頭してこだわりがある人はすべてオタクであると。そういう志向の人が多くなったことで、世の中の雰囲気が変わってきた感じがします。

音楽にあまり興味がない方々にもどれだけ伝えていくことができるか

2016年のでんぱ組.incの展望はどうでしょう?

地道に今までの活動を続けながら、1人1人の個性を活かしたソロ活動を伸ばしていきたいと思っています。メンバーごとに強力なキャラクター性があるので、グラビアやモデルをやったり、企画展やライブを主催したり、イラストを描いたり、トークイベントをやったり、映画にも出演したりと。それぞれのやりたいことを突き詰めて、それをもう一度グループにフィードバックさせたい。会場の規模も少しずつ大きな場所でやれるようにしたいし、フェスでも大きなステージに立てるように。全部のパイを少しずつ広げていく活動をしていこうと思います。

株式会社ディアステージ取締役 高瀬裕章さん

「今やクラスのほとんどがオタクだったり、もはやオタクのほうがカッコいいくらいになっている。」

ディアステージとしてはどうですか。

ディアステージとしても、いろいろ広げていこうと思っています。妄想キャリブレーションという、位置づけとしては妹分的なグループもいて、2016年にメジャーレーベルに所属することをZepp Tokyoのワンマンで発表しました。STAR☆ANISやAIKATSU☆STARS!というテレビアニメ『アイカツ!』の歌唱を担当しているユニットも所属している。でんぱ組.incとは違うカテゴリーで、目指すジャンルや音楽性やキャラクターの違うグループを育てています。

正直、彼らの新しい感覚って共有できてました?

いや、できてなかったですね。古い考え方かもしれないですけど、バンアパみたいにスタイリッシュに、英詞でガンと行ってほしかったっていうのがあって。でも、それだったらただのコピーバンドで終わってたのかもしれない。そこを自分たちの解釈で突き進んでいったのが今時なのかなと。

アイドルやアニソンのシーン全体も、2016年は多様化と拡大を続けていくイメージでしょうか?

どうでしょう、むしろ今はジャンルとしては過渡期にあるかもしれないですね。シーンが一般層に広がったいっぽうで、アイドルだから、アニソンだから聴かないという人はいまだにいる。そういう意味で危機感はありますね。なので、これからは、どうやってジャンルレスな存在になっていくことができるかがポイントだと思います。いい曲をちゃんと作っているのは大前提として、それをちゃんと広く伝えたい。アイドルファンだけじゃない、オタク層やサブカル層だけじゃないところに伝えていきたいと思っています。おそらく、音楽シーン全体としてもそういう方向を意識してる人たちが多くなっているのではないでしょうか。普段音楽にあまり興味がない方々にもどれだけその良さを伝えていくことができるか。そういう意味でも、『紅白歌合戦』のような国民的な番組に出たいという気持ちはすごくありますね(笑)。

PROFILE

でんぱ組.inc

でんぱ組.inc

秋葉原のディアステージを拠点に、2008年に結成。2015年9月にリリースしたシングル「あした地球がこなごなになっても」が過去最高のオリコン週間2位を獲得。現在は全国30公演のホール&Zeppツアーの真っ最中。