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2016.01.09

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Interview 02 キュウソネコカミ マネージャー 中野晶夫さん

Interview 02 キュウソネコカミ マネージャー 中野晶夫さん

結成当初は動員数1人という時代もあったそうだが、急速にその規模を拡大し続け、今年は幕張メッセとインテックス大阪でそれぞれ2デイズライブを開催するまでに。生粋の叩き上げライブバンドの2015〜2016年の戦略を、中野マネージャーが明かしてくれた。

text:長谷川幸信 photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

何をやるのかわからない、その“そうきたか”や
“やっぱりね”という感覚を大事にしています。

お客さんを楽しませたいという姿勢が功を奏した気がします

2014年にメジャー進出したキュウソネコカミにとって、2015年は新たなフィールドでの勝負の1年間だったと思うんです。今だからこそ明かせる“窮鼠猫を噛む”計画みたいなものはありました?

無計画ということではないんですが、全体的なイメージとして、ちょっとうまくいきすぎかなというのがありまして(笑)。破天荒のように見えて、意外と真面目なのがキュウソネコカミの性格なんです。実はもう少し時間をかけて活動規模を広げようと考えていたんですけど、実際には2015年はフェスも14本呼んでいただきまして。各イベンターさん主催のフェスだけじゃなくて、氣志團先輩であったり、SiM先輩であったり、T.M.Revolutionの西川さんであったり、アーティストの方によるイベントにも出させていただいたんです。それが思いのほか、一般のお客さんに知られる機会にもなったと思います。

ライブハウスシーンではコアな存在のバンドとして知られていましたが、一般層には名前は知っていても観たことないバンドだったかもしれないですね。

そうです。キュウソネコカミは立ち位置的にカウンターパンチャーなんですよ。王道ではないイレギュラーなバンドが、ここまで一般の方に浸透していったのはちょっと意外でもあったんですね。

自分たちの想像する以上の反響の大きさに、中野さんも含めてバンド自身、戸惑い的なものも?

お客さんの思いであったり、お客さんにどう楽しんでもらえるかってことに注力するバンドなんです。だから戸惑いというよりは、ライブを観られないお客さんがたくさんいるってことに関して、やっぱり気をつかいますね。自由主義経済のなかではチケットが取れないのはある意味仕方ないことではあるんですが、是か非でいったら是ではない。お客さんが観られない状況が続くのは、できるかぎり避けたいです。

でも2015年だけでも相当数のライブを実現させましたよね?

そうなんですが、2014年のほうが多いんですね。2014年は100本で、2015年は98本。本数はあまり変わらないですかね(笑)。

フェスも含めると2015年のほうがライブ数は多いじゃないですか。今のライブシーンを肌で感じたと思うんですが?

お客さんが、いわゆるエンタテインメント感を求める傾向が強くなっているかなと感じましたね。音楽に対してお金を費やしてくれるお客さんの母数がどんどん少なくなっていると同時に、何にお金を出すか、敵がいっぱいいる状況じゃないですか? 本来は音楽にお金をまわしていた人たちが、携帯などほかに使うぶんが多くなって、音楽にそんなに使えないという状況だと思うんです。それでもライブに来たいというのは、そこにしかないものを求めているからだと思うんですね。キュウソネコカミの場合は、音源をそのまま演奏するというバンドではなく、会場に来てくれるお客さんに楽しんでもらって、さらにその楽しませたいというスタンスも見えるバンドだと思うんです。そうした姿勢と時代の流れが功を奏したのかなという気がします。

ステージの小道具なども含めて、突飛なアイデアが飛び出した1年ですか(笑)?

出てくるといえば出てくるんですが、ギリギリまで出てこないんですよ。その日やそのときに起こった出来事でも変わるんです。たとえば昨日テレビで映画をやってたからネコバスを作ってくれないか、と当日にいわれたり(笑)。イレギュラーかつケースバイケースのアイデアがさらに増えましたね。その手作り感もお客さんは面白がってくれているのかなって気もしています。いわゆる学園祭の延長みたいな。何をやるのかわからない、コイツらはくだらないことしているなっていう、その“なるほど、そうきたか”や“やっぱりね”という感覚をメンバーも大事にしています。これは個人の理論ですけど、市場のふくらみ方がギュッと1ヶ所に固まっていると思うんです。音楽市場のマスとしてどれぐらいのお客さんがそこにいるのか。その山のとらえ方ですね。そこもキーになっていると思います。

ワクワク感をずっと持ち続けてもらうのがポイント

キュウソネコカミの場合、口コミの力も大きいんじゃないかと思います。

SNS世代のバンドなんですよ。ホームページの閲覧数よりも圧倒的にTwitterなんです。それに対する反応速度も速いんですよ。そういう意味で瞬発力やインパクトがより重要視されているのかなって。それにメンバーはエゴサーチが趣味なので、分析が彼ら自身、嫌いではない(笑)。第一線で活躍されている方ほど、意外とエゴサーチをやっているんですよ。そういうマーケティングみたいなものも、Twitterを通してやらせていただいているというのもあるかもしれませんね。

エンタテインメント性の奥に何を求められているのか、それをアーティスト自身が知る知らないでは、エンタテインメントの質が変わってくると思います。

メンバーの年齢とかもあると思うんですけど、お客さんが求めているものとあまり乖離していないのが幸いなところなのかなと思います。あとライブハウスを主戦場にしているので、お客さんからは決して離れていない…物理的にうちのボーカルはライブ中にお客さんのほうへ行きますけど(笑)。そういった意味でも距離感がないんですけど、SNSが発達したぶん、昔にくらべてお客さんとの距離は圧倒的に近くなっていると思います。そこで今までライブを観たことのなかったお客さんに、どう伝えるかって部分を重視してます。だから記憶に残るライブをやるように意識してますし、行ったことのない地域のライブハウスにも出かけていくようにしています。

当たり前かもしれませんが、ライブをすごく大事にしてますよね。

そうです。2016年は幕張メッセとインテックス大阪でやらせていただくんですが、今、デカ箱戦争みたいになっているのが怖いなってメンバーもいってて。ここは彼らのケチなところなんですが、もうからないライブをやるのが嫌(笑)。費用の面で1デイではもうからないのは当たり前だったりするんですが、それはおかしいっていう感覚が彼らにはあって。もっともな話なんですが。あとバンドにとってプラスなのかマイナスなのかってことも考えているメンバーなんです。だから、あくまでもデカ箱はお祭り的に何年かに一度行って、基本的には地方のなかなかライブに来られない人に会いに行く。そういったスタンスは捨てないようにしたい、といってますね。

でも経済感覚を持ちながら、活動や運営をしないと難しい時代かもしれないです。

今はCDも昔ほど売れる状況でもないので、どこからどういうふうにお金が流れているかを肌感覚で持っていないと、長く音楽を続けていくことができないんじゃないかと思いますね。レーベルやマネージメント側ももちろんそうなんですけど。そしてお金を払ってくれる人が最大限に満足してくれるエンタテインメントを形にする。ワクワク感をお客さんにずっと持ち続けてもらうというのが、ポイントなのかなと思っていますね。

株式会社スピードスター・ミュージック 中野晶夫さん

「ホームページよりも圧倒的にTwitterなんです。瞬発力やインパクトがより重要視されている。」

後ろのお客さんにも楽しんでもらうのが大きな会場での課題

2016年、大きな会場でのライブも決まっていますが、ほかにバンドとして大きなテーマや実現したいことはありますか?

ないですね(笑)。メンバー自身、大きな会場のライブをお客さんとして何度か観に行って、今までやっているスタイルでデカい箱で見せられる限界も感じているんで、後ろのお客さんにも楽しんでもらえるというのを考えてますね。それはエンタテインメントとして当たり前かもしれないんですが、来てくれた人にできるかぎり多く楽しんでもらえるようにというのは、基本というか理想なので。それが大きな会場になったときの課題だと思っています。

そのライブを実現させたとき、バンドがどう変化するかも楽しみにしていますか?

そうですね。個人的にはホールもできて、ライブハウスでもやれるような、会場を選ばないバンドというのが理想なんです。今は座席付きの会場が苦手でもあるので、ホールでの戦い方というのをお互いに少しずつ勉強していけたらなと思いますね。

最後に、中野さんにとって2015年の最大のニュースは?

氣志團先輩とやらせてもらったのが衝撃でしたね。“氣志團万博”の前にZepp Toky oでやらせていただいたのは、メンバーにとっても刺激になりました。普通はうちが先攻で、先輩である氣志團が後攻じゃないですか? ところが氣志團サイドから「(氣志團を)先攻でお願いします」といわれて。先輩にそういわれたら受けるしかないじゃないですか。本番では学ラン姿の氣志團が出てきてインストが始まったんですけど、2曲目になったら「待てー!」とキュウソネコカミのコスプレをした團長たちが出てきて。最初の学ラン姿は影武者の人たちだったんです。しかも本番では氣志團の曲もやりつつ、キュウソネコカミの曲も2曲ぐらい完コピですよ。後輩バンドを本気で叩きつぶしにくるのは、やっぱすごいなと。そこまでやってこそ初めて対バンと呼べるんだな、と改めて感じましたね。“氣志團万博”で噛みつこうと思ったんですが、ちょっと甘噛みだったんで、次に相まみえることがあればギャフンといわせたいと思っています(笑)。

PROFILE

キュウソネコカミ

キュウソネコカミ

2009年に兵庫県で結成。2014年にメジャーデビュー。1月28日からワンマンツアーがスタート。3月12〜13日にはインテックス大阪5号館で、3月19〜20日には幕張メッセイベントホールで、それぞれ2デイズライブを行う。