ライブハウス店長インタビュー

vol.33 渋谷La.mama 河野太輔さん

vol.33 渋谷La.mama 河野太輔さん

33年の歴史あるハコを約8年前に引き継いだ河野さん。新人バンドのサポートや、ハコ発信の企画、アクの強いバンドのブッキングなど、ラママが考える「面白いこと」を追及している。数々の伝説を生んできた同店の基本姿勢をうかがった。

text:野中ミサキ photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

売れるか売れないかも、年齢も問わず、何かを形にしたいっていう想いを持って 来てくれた人を応援したいっていう気持ちだけでやってます。

「ここ面白そうだな」って勘で入ったら、その勘が当たってた

前号にご登場いただいた高円寺HIGHとは、特別なつながりがあるとのことですが。

実は、事情があってうちでできなくなったジェット機の公演をオープン前の高円寺HIGHでやらせてもらったことがあるんです。2007年の12月末だったんですけど、どこも空いてなくて。どうしようか…っていうときに、高円寺にライブハウスが新しくできるらしいっていうのを耳にして、相談したら空けてくださって。とても感謝してますね。

その当時の河野さんの肩書きは?

店長…になったくらいですかね。社長から「やってみれば?」っていわれて「いいっすよ」くらいの感じで、いつの間にか店長になってました。最初はPAとか照明がやりたくて入ったんですよ。活動してたバンドが解散して何か別の形で音楽に携わる仕事がしたいと考えていたときに「ここ面白そうだな」って思って勘で受けて入ったら、その勘が当たってたっていう感じです。自分が今まで知らなかったような音楽がラママにはあったんですよね。

店長を務めるにあたり変化したことは?

実際にやること自体は変わらないんだけど、肩書きがついてみると外からの見られ方が変わっちゃうので、そういったところでプレッシャーを感じる面はありましたね。ここ自体の歴史も長いし、いろんな世代の方が出演されるので。でも、店長になって早々に大きめなトラブルが起こったり地震が起こったりしたので、もうちょっとしたことでは驚かなくなりました(笑)。それもこれも全部、今後に活かせると思うんで経験できて良かったなと。

この場所自体に運というか
パワーがあるとしか思えない

渋谷ラママといえば、これまでに名だたるアーティストを輩出してきた老舗ですが、その点について河野さんはどう感じていらっしゃいますか?

うーん…何というか、出演者だけでなくスタッフも独立して活躍してる人がいっぱいいて、この場所自体に運というかパワーがあるとしか思えないんですよね。ここって昔から新しいことをどんどん取り入れていくっていうスタイルで、ジャンルもごちゃ混ぜなんですけど、それを特に意識せず自然にやっていて。新しいことが入ってきたときに、「面白そうだからやってみようか」っていう方向に向くんですよね、スタッフ全員が。そのやり方が染みついちゃってるんです。そうしているうちに、やれることがどんどん増えていって今の形になったのかなと。

なるほど。

最近もミーティングで「もっと運営面でお金を生み出すやり方はあるけど、それをやっちゃうとラママじゃないよね」っていう話になって。僕自身、やりたいことでお金をかせがないとここで働いている意味がないと思うし、うちの代表もそう思ってる人なので。今ってどちらかというとイベント主催者にハコを借すのが主流ですけど、うちは自分たちでやったほうが面白いことができるっていう気持ちがあるんで、自社で組んでる企画が多いんです。やりたいことを曲げずに、そのなかでお金をはじき出す方法を導きだしていった結果、スタイルができあがったのかなとは思っています。

そのスタンスで33年続けてこられたのは、素晴らしいことですね。

そう。だから運があるとしかいいようがないんです(笑)。

vol.33 渋谷La.mama 河野太輔さん

音楽性とかどうこうより何がやりたいのかを重視

設備面についてもおうかがいしたいと思います。扇形のフロアが特徴的ですが、音響面などにも影響がありそうですね。

ここの造り自体、うまい人はすごくカッコ良く見えるし実力がないとすごくカッコ悪く見えちゃうんですよね。音響的にも聴きムラがあって場所によって聴こえ方が違ってくるし、スピーカーを通さない生の音もわりとそのまま聴こえるんです。それって、どちらかというと良くないことだと思うんですけど、それがあるからこそPAもライブをやる人も考えるし、そういったことを加味しながら音を作る必要があるからこそ自然とうまくなっていくんじゃないかなとは思いますね。ちなみに、開店初期頃から使ってるスピーカーがあるんですよ。音響に詳しい人にいわせれば、化石みたいなものらしいんですけど、化石じゃねえぞと(笑)。

小手先では通用しない空間ですね。

だからこそ、ここから輩出されたアーティストはライブパフォーマンスのクオリティが本当に高い人たちばかりだと思います。

その熱を吸収しているからなのか、いい意味ですごく空気が重たいし、アーティストの念のようなものすら感じます。

こういうとおこがましいんですけど、新人育成もテーマとして掲げていて、一番力を入れているところも実際そこですね。店自体に歴史があるっていうこともあって敷居が高く見られがちなんですけど、こちら側は全然そんなことなくて。右も左もわからないところから大きなステージへ行くまでの過程にラママがあると思うので、売れるか売れないかも、10才か60才かとか年齢も問わず、何かを形にしたいっていう想いを持って来てくれた人を応援したいっていう気持ちだけでやってます。音楽性とかどうこうより、何がやりたいのかっていうのを重視しているんです。最近は、売れたい気持ちはあるけど何がしたいのかわからないっていう人が多くなってきている印象があって。ここが自分がやりたいことと向き合う場所になればいいなあとは思ってますね。

愛を感じますね。

お客さんももちろん大事なんですけど、どちらかというとアーティストのほうを向いているライブハウスですね、ラママは。

誰でもスタートは一緒だし
夢を見させてあげたい

ラママといえば、もうひとつ。1986年から渡辺正行さんプロデュースで開催されている“新人コント大会”についてもお聞きしたいのですが、こちらに関して河野さんはどういった視点で見てらっしゃるのでしょう?

音楽やってる人も芸人さんも、音楽を聴きに来るお客さんもコントを観に来るお客さんも、みんな同じだなっていうのは感じますね。人気がないところから売れていった芸人さんをたくさん見てますけど、やっぱりライブが盛り上がる人は必ずテレビに出てるなっていう印象があります。そこは音楽とは少し違うところだとは思いますけど、どちらもライブのうまさだったりキャラクター性が基本だなと。芸人さんともいろいろ話すし、そこで受けた影響を音楽のほうにも伝染させたりっていうこともできてます。いろんなジャンルの人と話ができるようになったのは、ラママのおかげですね。

では最後に、河野さんが描く今後のビジョンを教えてもらえますか?

これからラママのスタンスを違う規模でやっていければいいなと思っていて、実際3月に渋谷界隈でサーキットイベントを企画しているんです。欲をいえば地方にも行きたいです。あとは、35周年でフェスをやりたいなあとか、漠然と考えていたりもして。実現したいからあえていっておきます(笑)。今、ようやく自分がやりたいことができるようになってきたっていうのもあって、普段ここでがんばっている人たちを大きな会場で、ビッグアーティストと呼ばれている人たちと同じステージに立たせてあげたいなっていう気持ちがあるんですよね。誰でもスタートは一緒だし、がんばればこういうところに行けるっていう夢を見させてあげたいというか。それができるのは、ここまで長くやってきたライブハウスだからこそだと思ってます。

渋谷La.mama

渋谷La.mama

渋谷区道玄坂1-15-3 プリメーラ道玄坂B1
03-3464-0801

1982年オープン。これまでに出演したアーティストのサインが書かれた壁、長年使われてきたスピーカーなど、歴史を感じさせる独特の雰囲気が漂う。演劇やコントの会場としても利用されている。

立川BABEL

次回は、デザインやPV撮影もサポート 立川BABELを直撃!

2008年8月にオープンした立川BABELは、キャパシティ400名以上のホール、広いステージが魅力。ガールズバンド赤い公園を輩出したハコでもあるが、そんな立川の音楽シーンと運営について店長に話をうかがう。

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